グレードのフルオープン化に舵をきった理由
こんにちは、Micoworksの山田です。
まず初めに先日公開した過去の失敗に関する記事に、多くの反響をいただけたことに感謝申し上げます。
前回に続き決して誇れる話ではありませんが、今回は「評価制度の改定とグレードのフルオープン化」をテーマに取り上げたいと思います。
※経営陣の刷新に伴い、直近、評価制度について大きな改定をしております。あくまで過去のMicoworksとしてご認識ください。
はじめに
Micoworksではグレードのフルオープン化を決定し、2022年7月から実施しています。フルオープン化とは、下記の状態を指しています。
・職種別グレードの公開
・全社員のグレード公開
実際には以下のようなイメージで、CEOである私を含めた全員のグレード・期待役割が公開された状態となっています。
評価制度改定の議論において、グレードの詳細についてはもちろん、「グレードをオープンにするのか否か」についても論点となりました。
弊社のマネジメントチームは私以外の全員が大手企業or外資系企業の経験者ということで、様々なパターンのメリット・デメリットを実体験に即してシェアしていただきました。
その結果、弊社はフルオープン化に舵を切る決断を行いました。
しかし、株主によってはこの方針に少し懸念を示し、ご意見をくださる方もいらっしゃったので、なかなか難しいテーマなのだと今も感じています。今回のnoteでは、グレードのフルオープン化になぜ踏み切ったのか、 その経緯を順を追って記したいと思っています。
スタートアップという言葉に甘えていた
弊社ではこれまで「スタートアップ」という言葉に甘え、様々な事柄が未整備でした。
(正確には弊社ではなく、経営者である私が甘えていたのだと思います。)
そして、評価制度はその最たる例だったと認識しています。
これまでの弊社では、
評価という概念なし
⇨グレードという概念の誕生
⇨公開とともに形骸化
というステップを歩んできていました。
この背景には、評価制度を策定したことがある人が不在ということもありましたが、真因は「代表の私自身が評価制度の必要性を強く感じていなかったこと」でした。
もちろん必要だと認識しておりましたが「今すぐ必要だ」という考え方を持っていませんでした。「もう少し大きくなったら」「もう少し安定したら」と思考を先送りさせていました。
評価制度がない、またはうまく機能していないことに違和感を覚えているメンバーはきっと多かったはずです。もしかするとおかしいと思っていても「スタートアップなのでしょうがないか」とどこか大目に見てくれていたのかもしれません。
こうして私自身が甘えていた結果、最近までは胸を張って「評価制度が存在しています」と言える状態ではありませんでした。
そうしているうちに、弊社もいよいよ社員が100名を超えるタイミングに差しかかってきました。会社が大きくなるにつれて、より会社としてあるべき姿に向かわなければならない焦燥感や、評価制度の必要性を痛感する出来事が重なりました。
そこで、改めて「どんな会社にしたいのか?」に紐づいた評価制度の策定を始めました。
多くの方がご存知だと思いますが、制度設計は一朝一夕に出来上がるものではありません。そして、プロダクト同様「完成」という状態が決して来ない、常に磨き続けるものだと感じています。
なぜ評価制度を変えようと思ったのか
「焦りや必要性を感じて動き始めた」と記しましたが、地に足のついた評価制度を策定しようと思った理由をもう少し説明したいと思います。
具体的には、組織内で以下の事象が増えてきたことが要因でした。
(※結構多いです)
これらの事象が起きる度に思案した結果、評価制度を改定することが課題解決に必要不可欠であると判断しました。
その上で、今回の評価制度では
・働く上での心理的安全性の担保
・個人と会社の成長ベクトルの合致
・コアバリューの浸透
を重視した内容に改めました。
・働く上での心理的安全性担保
これは、Micoworksで成果を出すと正当な評価を得られるという意味です。公平に評価される安心感や、「なぜこの評価なのか」という納得感を醸成できるかという目線を取り入れました。
また、メンバー目線だけではなく、マネジメントサイドも安心感を持って対話を行い、説明できる制度になっているのか加味することで、全社員が評価への納得感を持てることを目指しました。
・個人と会社の成長ベクトルの合致
会社の期待を明確にし、個人の成長が会社の成長に繋がるサイクルを生み出すという意味です。
メンバーが増えるごとに、期待が上司のさじ加減になってしまう事態や、そもそも上司側も推奨される仕事の難易度が分からなくなる事象を防ぎ、会社が目指す方向にリンクする個人の成長を求められる制度を目指しました。
・コアバリューの浸透
コアバリューに則ったアクションが評価されるという意味です。
コアバリューの浸透は評価と紐づくからできるというわけではありませんが、明確に紐づけられることで組織が大きくなってもコアバリューに即したアクションを取りやすくなる制度を目指しました。
上司との対話による納得感が必要不可欠
上述した方針に沿って制度設計を行いましたが、制度がある=完璧というわけではありません。
なぜなら、評価において重要なウエイトを占める「本人の納得感」にはどこまでいっても対話が必要だと考えているためです。
特に私たちのようなまだまだアンストラクチャーな部分が多い会社では、全てがルールになっているわけでもなく、ルール通りに動けるわけでもないため、制度だけで全員が100%納得しきることはないのが現実だと思っています。
もちろん部下の納得感を醸成することが評価の主目的ではありませんが、この点が満たされていない限り社員の心理的安全性が担保されず、次の半期のパフォーマンスがストレッチの効いた目標に向かうことなく低下する恐れがあります。
また、パフォーマンスの低下だけではなく会社を見限り転職に至ることがあると、より取り返しのつかない事態になってしまいます。
これは会社として高く評価しているメンバーであっても、コミュニケーションギャップによって起きうる事象だと考えています。
厳しい評価になるときほど「なぜそうなのか?」の納得感を醸成しないと人は不満を持ってしまい、ストレッチの効いた目標に100%邁進できなくなるという考え方に基づいています。
そこで、制度を改定するだけではなく、半期に1回存在していた評価面談を「クオーターごとに暫定評価を共有し認識ギャップを防ぐこと」、「OKRを用いた1on1をウィークリーで実施しフィードバック機会を増やすこと」を意識した運営に変えようと考えました。
なぜグレードのフルオープン化を決断したのか
ここまで綴ってきた想いもあり、評価制度を本当に機能するものに変えようと決意しました。その上で最後に向き合った問いが本題の「グレードをフルオープン化するのか否か」です。
この問いの発端は、初めて評価に対して熟考する中で「なぜ隠さないといけないのか?」が純粋に分からなくなったことにありました。
そこで、社外の方々にもお話を聞いて回りましたが、フルオープンではない多くの理由は「給与について色々言う人が増えるから」という話が一番多い印象を受けました。
※決して全ての会社がそうだというわけではありませんし、私の主観でしかありません。
お話を聞いていて確かにそうなのかもと感じたものの、フルオープンにしなくても潜在的に思われていることではないかとも感じました。
つまり、フルオープン化とは個々人が感じる矛盾を公開するトリガーにもなりうる仕組みであり、評価への納得感、何より経営陣含めたグレードへの公平感が醸成されていない限りは大きな歪みを生じさせる可能性のある方針でした。
そうなると「今まで制度が確立されていないMicoworksでフルオープン化なんて成り立つのか?」という至極真っ当な疑問が出てきます。
そして、コロコロ変えられるわけではないからこそ、いわゆる慎重になるべき話だとも感じていました。
しかし、評価制度とは本来「創りたい組織」を実現することに紐づいた制度であるはずです。つまり、未来起点で考え、その過程で生じる課題を改善し続けるアプローチが3年後、5年後のMicoworksから見ると正であると考えました。
そう考えると「アジアNo.1」を目指している組織であるMicoworksには、アジアNo.1を達成するための評価制度が必要だと感じました。
そして、下記のような集団でありたいとも強く想っていました。
徹底して顧客に向き合う集団
お互いをリスペクトしながら働ける集団
成果に対してさらなるチャレンジと報酬で報いきれる集団
役職関係なく成長に向き合い続ける集団
これらを整理すると「強固な信頼関係」が土台に存在しなければならないことは明白です。そして、「強固な信頼関係」を実現するには評価の透明性も必要不可欠であると考えました。
また、弊社はコアバリューの一つに「OPEN MIND」を掲げています。
カルチャーを徹底して向き合うべき価値観と定義するためにも、後ろめたさによっての意思決定ではなく、カルチャーに経営方針が従うスタンスを示す必要があります。
だからこそ、「評価のフィードバック」「納得感醸成のための対話」から逃げずに向き合い切れる集団でなければならない会社なのは自明でした。
確かにメンバーからの声が出るかもしれませんが、メンバーが声を挙げてくれることはより良い会社になるための過程だと捉え、ありがたいと思って対話し必要な改善をすれば良いだけであるとも感じました。
とはいえ下記のような不安が頭をよぎり、経営会議で上がっていたことは事実です。
・メンバーが評価に不満を持ってしまうかもしれない
→それはグレードの全公開でなくても起こりうる。不満をやり過ごそうとするのが問題であり必要な対話をすべき。
・他メンバーに対して「評価がおかしい」という声が出るかも
→オープン化によって潜在的な違和感を可視化しクリアにした方が組織のパフォーマンスは高まるはず。また、基本的に他者の評価ではなく自らの評価に向き合うべき。
・「OPEN MIND」すぎるのでは?
→「OPEN MIND」は人へのリクエストと受容がセットで成り立つもの。上司部下、会社と社員お互いがフェアに、そしてより良い会社にするために必要な対話はやりきるからこそ強い組織になる。
ここまではフルオープン化を部下目線で記載してきましたが、マネジメントチームにも有用だと考えました。
前提として、ポジションは居座るものではなく勝ち取るものであるはずです。
そして役職が高くなるほど人としてリスペクトされる言動や思考を持った存在でなければなりません。
しかし役職が上がるほど、意識しなければフィードバック機会や緊張感を持って仕事をする機会が減りがちです。
そこで、私含め全員のグレードを公開することで、マネジメントチームに健全な緊張感を持たせることができると考えました。
また、決してそれだけで必要な緊張感が生まれるわけではありませんので、グレードの公開だけではなく、マネジメントチームで360度評価を実施し、良い意味でお互いを高め合える存在になることを目指しています。
確かに横同士や部下目線では分からないマネジメントサイドの仕事は多分にあります。
一方でそもそもマネジメントチームとして不適だと感じる場合には、何かしらの問題を抱えている可能性が高いと考えるのが自然だと思っています。
「スタートアップだから」を卒業しなければ偉大な会社は創れない
評価制度の改定とグレードのフルオープン化に踏み切るまで、私自身、会話する機会が少なくなっていた現場メンバーたちとも1on1を行い色々な話を聞かせてもらいました。
その中で「スタートアップだから」という言い訳をしていては、偉大な会社には成り得ないという当たり前の現実を痛感しました。
正直なところ、過去には「スタートアップだから」という枕詞で自分自身が様々なことを有耶無耶にしたり、後回しにしたりしていました。
そしてそれが成り立つ(ように見える)のは、小さな集団のときだけです。
会社が10人~20人の頃は全員が「未来の当たり前を創りたい」、「とにかく今は仕事に向き合って成長しよう」という気持ちを強く持った無鉄砲なメンバーが集まっていました。
なにより私自身がそのような人間であり、当たり前だと思ってしまっていました。 もしかすると、私が幼い頃から同じような環境で揉まれ続けていたからこそ、Micoworksもそんな集団であり続けたいと必要以上に強く思っていたのかもしれません。
一点補足すると、決してやる気のないメンバーが増えたということではありません。そうではなく、「何がどうなることでキャリアアップできるのか?」「パートナーや子どもの生活を今後も支えていける会社なのか?」という本来誰もが持っているはずの気持ちをシェアしてくれるメンバーが増えているだけの話です。
「頑張ったら給与は増えるから」、「まずは会社が成長しないとね」という話が通用するのは最初のうちだけであり、どこまでいってもこのような会話は経営者=私自身の甘えでしかありませんでした。
※最初のうちでもこのような話はないに越したことはないのだと理解しています。
これだけ粗相している自分について記してきましたが、私たちはアジアNo.1になることを目指しています。想いを口だけではなく結果で示すために、私自身が会社ごっこを卒業する必要がありました。
さいごに
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また、人事に豊富な知見をお持ちの方々からすると物申したい点が多々あるかと存じます。
免責ではありませんが、今回の意思決定は現時点での意思決定であり、1年後には変わっている可能性がゼロではありません。もしかすると未来振り返ると「あの意思決定は正しくなかった」と感じるのかもしません。
しかし、マネジメントチームでアラインし、Micoworksにとってベストであると考えたからこそ必ず良い結果に繋げたいと思っています。
そして何よりたとえ制度が今後変わっていくとしても、アジアNo.1の偉大なプロダクト・会社を創ること、500人、1000人の集団になっても強固な信頼関係のあるチームであることは見失わずこれからも精進していきたいと思います。
まだまだ理想とする未来には遠いのが現実ではありますが、世界中で「WOW THE CUSTOMER」を体現できる会社になっていきたいと思います。
今回改定した評価制度やグレードは、Micoworksの採用資料でも公開しています。ぜひ一度目を通していただけると嬉しいです。