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OKRを導入したら、ARR300%超の成長と27名の採用を達成できた話
こんにちは、Micoworksの山田と申します。
今回はOKRの運用についてnoteに記したいと思います。
Micoworksでは直近のクオーター(2022年1月~ 3月)で、過去最高の成果を出すことができました。
たとえば、
・ARR 300%超の成長維持
・サービス月次継続率99.5%以上
・CxO候補、マネージャー候補を含む27名の新規採用
・メディアからの取材・記事掲載10回以上
もちろん様々な要因があると感じますが、特に大きかったのは「今年1月から全社の目標管理手法としてOKRを導入したこと」だと考えています。
今後とも再現性のあるOKR運用を行っていくために、今回の成功要因を整理しておきたいと思います。
※免責事項
私たちはまだOKRを運用し始めたばかりのヨチヨチ歩き状態です。 経営のプロの方々からすると「解釈間違ってるで」と感想を抱かれる点が多々あると予想しています。 間違いはぜひ指摘いただきたいのですが、子どもの運動会を見守る親のように温かい目で見守っていただけますと幸いです。
OKR導入前の状況
これまで弊社には「事業計画と各人のアクションが紐付ききっていない」という課題が存在していました。
そして、「全員で頑張っているけれど、果たして最速のグロースを実現できているのか?」と考えるようになっていました。
どうしてそのように感じていたのかを振り返ると、下記の事象が発生していたからでした。
・大元の事業目標をメンバーが認識していない
・事業目標をチームでどのような戦略、戦術で追っていくのかが分からない
・上司と部下の間で、何にフォーカスしながら取り組むのか共通認識がない
具体的には、以下の図で表した乖離がありました。
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事業数値だけでも上記の乖離があったので、「お客様にどんな価値を提供したいのか」「その目標を達成した際にMicoworksはどんな状態になっているのか」「どうやって達成するのか?」といった会社の上位概念に関することを含めるとさらに深刻な認識の食い違いが起こっていたと思います。
一人ひとりのメンバーの推進力は高いのに、向いている方向性が揃わず、会社全体としてグロースできる方向にうまく進めていない、、、。
鎖に繋がれた象のような状態でした。
こうした事象に対して対策を打たなければならないことは自明でした。会社全体の仕組みを変えて是正しなければならないと感じていたところ、弊社投資家であるALL STAR SAAS FUNDのマネージャー神前さんから「OKRを導入してはどうか?」というアドバイスをいただきました。
元々OKRの存在は認識しておりましたが「もしかするとOKRが今の状況を打破してくれるのかもしれない!」と思い真剣にリサーチを行いました。
複数人の話を聞く中で「OKRは最高の発明」と感じるほど素晴らしいと感じ、創業5期目を迎えた2022年1月から運用をスタートしました。
まだOKRの運用を始めてから四半期ほどですが、これまで以上に高い数値目標だったにも関わらず、全社目標は全て100%以上で達成できました。
なにより、OKRの導入によって自身含め時間の使い方が大きく変わりました。
OKRを導入して、会社に起きた変化
多くの方が一度は耳にしたことがあると思いますが、「OKR」とはそもそも何でしょうか。
念のために記載させていただくと、ALL STAR SAAS FUNDの前田ヒロさんの記事には下記の説明文がありました。
「Objective and Key Result(目標と主な結果)」の略で、企業のチームメンバーそれぞれの目標と期待されている結果を明確にし、組織のオペレーションとコミュニケーションを効率化するためのシステムだ。1970年代にIntelがこのシステムを採用して以降GoogleやLinkedInなど数々のシリコンバレー企業がこのシステムを実践している。
そして、実際にMicoworksが設定した1Q全社OKRは、以下の図にまとめています。
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※ARR成長率の詳細は伏せさせてください。
※MGとはマネージャークラスを指しています。
OKR運用後の差分として、このような違いを体感しています。
・そもそも「どんな状態を目指すのか」という具体的な目標が明確になった
・「今本当に重要な達成すべき指標は何か?」を事業数値に限らない視野で定義されるようになった
・目標とする数値自体が「現実的に達成できる」ではなく「知恵を絞って達成しよう」になった
社内での会話が「ARR3X0%成長を目指そう」から「日本の有力スタートアップの1社として認知を獲得しよう」と目線が変わり、メンバーが能動的かつ意欲的に仕事へ取り組めるようになったと感じています。
なぜこの差分が生じたかというと、OKR自体が「達成したいと思えるストレッチの効いた目標設定」を推奨しているためです。
「これを達成するには今のやり方では難しそう......」と感じる目標にすることで、各人が「非連続な成長を実現するための方法=ムーンショット」を考えるようになり、メンバー、会社それぞれにブレイクスルーが訪れるという意味だと解釈しています。
ただし、「ストレッチの効いた目標」とは具体的にどの程度のレベルで設定するのが適切なのか、さじ加減が難しいところです。
個人的には下記の考え方が分かりやすいと思い、OKR設定に取り入れています。
今の全力→70%
Xヶ月後の全力→100%
「今の100%で達成できるかどうか」ではなく、「3ヶ月後の成長した私たちの力を持って、100%全力を注ぐとどうなるんだろう?」と発想を転換しました。
そうすると「今見えているものよりは良い結果が出るはずだよね」という感覚が生まれ、現実性がありながらストレッチの効いた数値設定が自然とできています。
また、全社目標・重要指標が明確になることで各チームが何をすべきかもクリアになりました。
「全社OKRにあるKeyResultを各チームが協力して達成しましょう」という構図になりますので、全チームのKeyResultのいずれかを達成するための目標を掲げることになります。
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この際のポイントは、「単なるKPI」ではなく「どのようにそのObjectiveを達成するのか?」という山の登り方を可視化することではないかと考えています。
例えば、考えやすいセールスのKGI、KPIだと下記のようになると思われます。
KGI:受注金額100万円
KPI:受注単価 10万円、成約率20%
これはこれで達成指標は明確なのですが「受注単価10万円を達成するために何にフォーカスすべきか?」が曖昧でここにバラつきが出てしまうので、蓋を開けると未達のメンバーが出てしまうのではないかと感じています。
セールスだとそれぞれの現状を踏まえ、
・難易度を考慮した案件の振り方
・個人が学習する領域をフォーカスすること
・マネジメントサイドが商談の状態を正しく把握し、問題が見えた際にスピーディーに対応すること
などが大事ですが、そこの握りがマネージャーのスキル依存になることが目標とアクションのつなぎ込みが甘くなる大きな要因ではないでしょうか。
その点、OKRだと下記の設定方法ができると考えています。
※NAとはネクストアクションの略称
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個人OKRの例を記載していますが、上記の例ですと「目標達成のために具体的に何にフォーカスするのか」が明確です。
フォーカスの方向性が上司から見て妥当であれば、今後3ヶ月、Aさんが集中的に取り組む領域は共通認識が取れており、大幅な軌道修正によるロスタイムが生まれるリスクを低減できます。
また、上司の個人OKRには「メンバーの育成」「チームの成約率向上」に関する事項をKeyResultsに設定することで、部下の個人OKRと同じベクトルで動くインセンティブを発生させることができます。
これらをクオーターが始まる前に設定し、経営⇨マネージャー⇨リーダー⇨個人と共通認識を取れていればマイクロマネジメントは不要になり、マネージャーやリーダーが抱きがちな「今、メンバーが何をやっているか不安」という感覚を生じにくくできます。
再現性高く成果を出すためのOKR設定ポイント
OKR設定に「絶対にこうしないといけない」という方法論はないと思っています。だからこそマネジメントサイドの腕の見せどころであり、設定のやり方次第では大きく結果が変わってくるとも感じています。
今回設定して感じた、再現性高く成果を出すためのOKR設計のポイントを以下に記します。
【前提として必要なこと】
・Objectiveは野心的で本人が「本気でその状態を達成したい」と意欲が溢れるワーディングにする
・KeyResultは「誰がみても同じ解釈しかできないもの」で設定する
Objectiveはあくまで達成したい状態であり、正解はありません。だからこそチームや本人が最も達成したいと思える像を設定すべきです。マネジメントサイドの想いよりもメンバーの想いを優先すべきと考えています。
一方、KeyResultはObjectiveが達成されている明確な状態定義です。そのため、ここに解釈余地を残すと、向かう方向が異なり、ロスタイムが発生してしまいます。
※アーリーフェーズや職種によっては「定性的な」KeyResultを設定する場面が少なくありませんが、その場合は「具体的な期限」や「数値」を設けて表現するなど、できるだけ客観性を担保するようにしていました。
【頭に入れておくと良いテクニック】
・KeyResultは山の登り方を記載する
「成約率20%を実現する」というKeyResult自体はあって良いと思いますが、「どの顧客層なのか」「どの単価なのか」なのかを明確にすることでメンバーサイドがあれもこれも追ってしまう状態を防ぎ、結果として効率的なアクションを可能にできます。
・一つ上に存在するOKRとの紐づきを意識する
OKRの良さは一つ上のKeyResultと個人のOKRが明確に紐づくことだと考えています。しかし、一つのOKRを考えている際には上と紐づくことを忘れてしまい、紐付きの甘いものを作成しがちです。
・KeyResultは捨てるものを意識して作成する
KeyResultに書いていないことは、極論するとやらなくて良いことです。やった方が良さそうを並べるとKeyResultが無数に発生することになります。「絶対にやらないといけない行動は何か?」と考え設定することで絞りやすくなると考えています。
とはいえ、最も大事だと感じた事項は「マネジメントサイドがどんな山の登り方で目標達成できるのかイメージを事前に持っておくこと」だと感じています。
結局チームを率いる側が自分のチームは何を目指すのか、その目標をどのような戦略で達成するのか、そのためにどのような戦術を個人は取るのか、それぞれのスキルや現状課題は何か、などを解像度高く言語化しているからこそ、前後の紐づきやKeyResultの妥当性をジャッジできるのだと策定しながら痛感しています。
OKRは経営者にとって超オススメ
素人ながらOKR導入の取り組みについて書いていますが、OKRに基づく目標管理
方法は経営者にもオススメしたいです。
課題が山積みのスタートアップ経営者や、リソース不足を日々感じている企業の経営者はとにかく手を動かすことで価値が出ている”っぽく”なりがちだと思います。(私だけかもしれませんが。)
そんな経営者にこそ「会社の成長率を最大化するために、自分が何にフォーカスすべきか」を問い直し、ROIを考えたアクションが必要だと考えています。
CEOも当然全社OKRに紐づく存在であるからこそ、私の場合は下記のOKRを設定していました。
成長最大化のために自分自身がフォーカスする領域を定めたことで、必要以上に現場に介入して費やしていた時間が減り、”CEOだからこそバリューが出ること”に集中的に取り組めたと感じています。
ちなみに2Qは打って変わり「マネージャー候補以上のオンボーディング」や「権限委譲」に関するObjectiveが入ってきています。その結果、現在の稼働時間の30%程度が上記に該当しています。 (1Qはほぼゼロでした)
全社OKR達成率に合わせた賞与の支給
MicoworksではOKR導入とセットで「OKR達成率に応じた賞与の支給」を制度として始めることになりました。半期ごとの達成率に応じた支給となります。
現在、経営サイドはメンバーに対してかなりストレッチの効いた目標に向き合うことをリクエストしている状態です。
そのため、メンバーが目標達成した際には経営サイドがその結果にきちんと報いるのがフェアだと考えています。
若輩者の私が言うのも恐縮ですが、経営サイドとメンバー間がフェアな関係性であることが、良好な組織状態を長続きさせる秘訣だと思っています。
そのため、本制度が3年後、5年後の企業価値最大化のためのドライバーになると信じています。
OKRを運用して感じた課題
最後に、現状課題に感じていること=2Q以降の改善事項をいくつか記載させていただきます。ここまでOKRの良さについて記載してきたものの、100%良さを享受できているわけではありません。(現状はまだ30%程度だと思ってます。)
OKR運用で感じる難しさは下記のような事項です。
・マネジメントチームの事業、領域解像度が粗い
良いOKRの設定には「マネジメントサイドがどのような山の登り方によって達成できるのかのイメージを事前に持っておくこと」が重要と記載しましたが、この点についても解像度がバラバラであることからその山の登り方自体は存在するものの「本当にその登り方がベストなのか?」の検証をしきれずにGOしている節があります。
・キーマンのOKRを全体を俯瞰した上で設定できていない
どんな企業にもキーマンと言われるような人がいると思っています。
そのようなメンバーが最もインパクトの大きな仕事に向き合えているのかを経営チームでも議論しながらOKRを設定しなければ、気づかぬうちにインパクトの小さな課題に囚われるケースが出てきます。
・特定の領域、職種によっては3ヶ月サイクルが難しい
プロダクトチームやコーポレートチームなど職種によっては3ヶ月という時間軸では設定が難しい事項が存在しています。そこに対して同じサイクル・方法で運用しようとするのは手段と目的が逆転するリスクを孕んでいます。
これらが、MicoworksでOKRを運用して感じている主要な課題です。
さいごに
MicoworksではOKRを導入したばかりでまだまだ未熟な状態です。
その状態で「noteとして公開して良いものか?」とも考えましたが、弊社のコアバリューである「OPEN MIND」に則り、公開することとしました。
目標管理で悩んでいるスタートアップ経営者の方々には、Micoworksでの導入実例を照らし合わせながら、ぜひとも一度試してみていただきたいです。
3ヶ月後には運用上の課題をクリアして、より大きな成果達成に向けて精進したいと思います。