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嫌われ者でも美味しく食べたい3

これは釣りにおける外道(ターゲットではない魚や好まれない魚)を美味しく食べようという話の3話目だ。これだけ読んでも良いが、
「嫌われ者でも美味しく食べたい」

「嫌われ者でも美味しく食べたい2」
を先に読んでもいいかもしれない。(下線部をタップでnoteへ飛ぶ。)

さて3匹目に紹介する魚はタカノハダイだ。これはかなりマイナーな魚になるため、これを読んでいるほとんどの人は知らないかもしれない。まずはその見た目を見て欲しい。

目、唇、模様、正直ちょっとキモい…

黄褐色の模様があり尾ビレはまだら模様になっている。大きい目は少し飛び出ていて、口が下向きに突き出している。その体長は30センチを軽く超えてくる
。初めて釣り上げた時の感想は「何これ、気持ち悪」だった。磯釣りの代表的な外道だが、臭みがあるとして釣り人からは嫌われている。その磯臭さからションべタレ(小便たれ)という別名がついているほどだが、そんな情報を知ってしまったら食べるしかない。とりあえず鮮度の良い状態で持ち帰った。ちなみに夏場は特に臭いと言われているが、初めて釣ったのは真夏だった。

持ち帰ってまず鱗を取ろうとして驚いた。体表がぬるぬるな上に、これまで捌いたどんな魚より鱗が硬い。普段は包丁やペットボトルのキャップなどで鱗を取っているが、今回は鱗取りを使わないと厳しかった。鱗とぬめりが取れたら、臭みの原因になりそうな内臓を取り出した。その後3枚におろし、とりあえず刺身で食べてみた。

薄ピンクの身、血合も綺麗。まるでタイ?

少し磯の香りはあるものの、気になるほどではなかった。2匹食べてみて両方同じだったため、運が良かったのか、鮮度と処理が良かったのかはわからない。磯の魚を食べ慣れていない人は少し臭いと感じるかもしれないが、下味をつけたり加熱したりすれば感じなくなる程度の臭いだった。次も釣れたら食べよう。旬と言われる冬に食べみたい。と思えるくらいの味だった。

そして去年の大晦日、家のすぐそばの堤防でタカノハダイを釣ることに成功した。しかし、その後すぐに出かける予定があり、次の日から忙しいことがわかっていたため逃がそうと思った。だが魚を掴んだ時に違和感を感じた。明らかに体が分厚い。同じ魚でも体高が高いものや体が分厚いものは、太っていて味が良いことが多い。これはなんとかして食べようと心変わりし、生きたまま家に持ち帰った。

生きているため脳締め(脳を傷つけて動かないようにする)をして、エラに傷をつけて血抜きも行った。血液も臭みの原因になるため大きな魚では行われることが多い。そして鱗や内臓を取り、水分も綺麗に拭き取った。キッチンペーパーやラップで巻き、空気に触れないようにして冷蔵庫にしまった。次の予定までになんとかここまでやることができた。そしてタカノハダイは冷蔵庫の中で年を越し、忙しさが落ち着いて捌くことができたのは1月3日だった。丸3日も放置して大丈夫なのかと思われそうだが、1〜3日ほどおいた方が魚は美味しくなると言われている。熟成と呼ばれる工程だが、その辺りの詳しい話はまたいつか書こうと思う。釣りたての魚なら、正しいやり方で1週間は置いておける。

年越しタカノハダイ。上が背中側。

3枚におろしてみて驚愕した。背中側が脂肪で真っ白になっている。魚はお腹とヒレの周りに脂がのるが、この個体は背ビレ周りの脂がすごかった。これまで自分が釣った魚の中で一番のクオリティだった。テンションが最高潮に達した私は、同窓会まで2時間を切っていたのに寿司を握り始めた。

いやもう高級魚の面構え。

見た目がいいのはわかっていたが、味も最高だった。脂の乗った身はしっかりと旨みもあり、なにより全く臭みがない。これは回らない寿司屋で出てきても違和感が全くない。(ほとんど行ったことないが) こんなに美味しい魚があまり食べられていないのは勿体無いと強く思った。

これまで4、5匹のタカノハダイを食べてみて、臭くて食べられないという個体にはまだ出会っていない。いつかそんな個体に出会うことを密かに楽しみにしている。また、臭い魚でも下味をつけたり、高温の油を使ったりすればかなり臭いが飛ぶ。臭い魚との戦いについては「アメ横の魚は不味いのか?」を読んでもらえればと思う。釣って持ち帰ったり、買ったりしたならば、命に感謝してできるだけ美味しく食べたいものだ。

続く?

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