スクリーンショット_2020-02-19_22

西宮ストークス観戦記#49 vs信州1・2

中地区首位、そしてB2リーグのトップを争う信州ブレイブウォーリアーズをホームに迎えた西宮にとってのチャレンジマッチ。結果は2連敗に終わりました。点差は9点と10点。3Qまでは接戦を演じ、勝てる可能性を感じさせてはいたものの、4Qは2試合続けて1桁得点に封じられるなど、力負けの感も否めず。この2試合をどう総括すればいいのか、自分の考えを書いてみます。

◉堅い守備とスリーポイント

まずはチームスタッツから信州の特徴をおさらい。

■信州ブレイブウォーリアーズ 2019-20シーズン
ORtg|103.9(2) DRtg| 83.2(1)
得点|78.8(9) 失点|63.2(1)
FG%|28.0/63.1=44.5%
(9) 3FG%|10.8/31.2=34.5%(5) 
※カッコ内はB2内順位

うん、すごいね。最も特筆すべきはディフェンスでしょう。1試合の平均失点は断トツのB2トップで、DRtgも唯一の80点台。フィジカルと運動量を活かしたタイトかつハードな守りで、とにかく点を取られません。ファウルも少ないしね。

一方のオフェンスはFG%だけを見れば案外普通。だったらなんで勝てるのかと言うと、一目瞭然、3Pの多さ。試投数31.2本がぶっち切りの1位なら、成功数10.8本ももちろんぶっち切り。規律正しいスペーシングと素早いボールムーブでやすやすとオープンをつくり出し、外からどんどんシュートを決めてきます。アンソニー・マクヘンリーとウェイン・マーシャル、2人のベテラン外国籍選手がどちらも外に開けるのが大きいね。

すごいのはその徹底ぶりで、FGのほぼ半数がスリーという点。調べてないけど、絶対これも断トツのトップだと思う(たぶんね)。ついでに言うと、平均FG数の63.1本はB2で下から2番目。シュートを打つ数は少なくても、その半分がスリーなら、確率はそこそこでも効率は高いわけだ。大量得点でブローアウトできなくても、強固なディフェンスでリードは渡さない。そんなチャンピオンなのでした。

スクリーンショット 2020-02-19 22.07.03

ちなみに、平均FG数が一番少ないのはどこだと思う? 実は我らが西宮ストークス(63.0本)。つまりこのカードはB2屈指のシュートを打たないチーム同士の対戦なのでした。あるいは守り合いとも言う。

◉戦い方を変えてきた信州

改めて2試合を振り返ると、点差や展開はなんとなく同じように思えるものの、信州のスタッツを見ると明らかな変化がありました。

■信州ブレイブウォーリアーズ GAME1/GAME2
FG|20/55(36.4%)/27/60(45.0%) 
3FG|6/32(18.8%)/ 4/20(20.0%) 
IP(In the Paint)|11/17(64.7%)/18/31(58.1%)

信州のお家芸だったスリーはGAME2では大きくアテンプトが減り、代わりにペイントエリア内でのシュートおよび得点が大幅に増えました。数だけを見ればほぼ反転。これは戦術的なものだけではなくて、GAME1ではウェイン・マーシャル選手がファウルトラブルで23分しか出場していないことも関係しています。ただ、それを差し引いてもGAME1の32本のスリー試投はいつも通りだし、GAME2のペイント内シュートは普段よりもかなり多いわけで、信州の戦い方に変化があったことがわかります。

この点をもうちょっと詳しく見ておきます。

■ウェイン・マーシャル選手のIP
GAME1|4/8(50.0%)/GAME2|10/16(62.5%)/
AVG|5.8/9.2(63.7%)

マーシャルのペイント内得点の比較です。GAME2の方が多いのは単に出場時間の問題ではなく、シーズン平均と比べてもかなり多い。GAME2ではORBが3本ありましたが(GAME1では0本)、それを考慮してもマーシャルのインサイドアタックを強調してきたことがうかがえます。

チームスタッツも確認してみると、信州のペイント内シュートのシーズン平均は15.3/25.8(59.1%)で、 それほど多いわけではありません。得点に換算すると30点くらいだからね。それを踏まえてもやっぱりGAME2の信州はインサイドを意識して攻めてきたように思えるのです。

スクリーンショット 2020-02-19 22.15.10

ところで、ちょっと寄り道をすると、今挙げた信州のペイント内シュート数(25.8本)に3P(31.2本)を足すと57本となり、1試合の平均シュート数の9割以上をペイントとスリーで占めていることになります。NBAでは常識となったスリー&ペイントというやつですね。高確率で決められるシュートと期待値の高いシュートを徹底。つまりは効率命。

◉信州のスリーを封じた西宮

さて、信州がチームの生命線であるスリーポイントを減らしてまでインサイドを攻めてきたのには理由があります。それは西宮のディフェンスです。信州のスクリーンやDHO(ドリブルハンドオフ)に対して、西宮はミスマッチを怖がらず、むしろ積極的にスイッチ(マークマンの交換)をして、オープンをつくらせないようにしていました。これは信州のスリーを封じるための守り方と言っていいでしょう。

■西宮のスイッチングディフェンス case1画像1

画像2

論より証拠。例えばこんな感じです。写真はGAME2の後半から。DHOで西山→栗原とボールが渡りますが、西宮の松崎・谷口はマークを入れ替えていません。スペースもあるので、松崎選手がそのままコーナーの方まで西山選手に付いて行ってもいいのですが、それをせずにあっさりスイッチ。場所を入れ替わらずに済むぶん、寄せを速くすることができます。どちらもスリーの得意な選手のため、少しでもズレができるのを避けたわけです。

画像3

画像4

その次のアクション。マクヘンリーがハイピックを仕掛けたのに対し、バーンズは下がり気味に守って栗原選手をケア。ゴール方向へ向かうマクヘンリーには松崎選手がパスコースを消しつつ、次の瞬間、互いに声をかけ合ってコーナーにいた谷口選手と入れ替わります。

画像5

まあこの後、ポストアップしたマクヘンリーに決められてしまうのですが、単にスイッチするのではなく、ポジションを小まめに入れ替えつつ守っている。ミスマッチは覚悟の上とはいえ、ちょっとでも相手のシュートの確率を下げたいわけで。

■西宮のスイッチングディフェンス case2

画像6

画像7

同じくGAME2の後半から。case1と同様に松崎・谷口がマークを交換するのですが、それがボールのないところで起こっているのが異なる点です。見えづらいけどボール持ってるのはマーシャルね。西山選手が逆サイドへ流れていく動きを見せたのに対して、谷口選手が指をさして、しげる師匠に栗原選手に付くように指示しています。

画像8

画像9

マーシャル→栗原のDHOから、リピックを利用して栗原選手がドライブを仕掛けると、ブラッドさんが追っかける。インサイドへダイブを狙うマーシャルはちゃんと谷口選手が付いています。

画像10

栗原選手はシュートを打たずに、ベースラインからウィングに流れた西山選手にキックアウト。ここですかさず谷さんにバックスクリーンをかける三ツ井選手。すると、今度は谷口選手が素早くチェイスに向かいます。さりげなくブラッドさんとマーシャル番を受け渡してミスマッチを解消しているのもポイント。引き継ぎOK。

画像11

西山選手はスリーを打てず、そのままコーナーへ走りこんできた栗原選手に落とします。ここでも三ツ井選手が追いかけてきた松崎選手にスクリーンをかけている。一人二役。ランニングからの難しいスリーは外れて、ここでは西宮の勝利。ナイスディフェンス。

そう、西宮はよく守っているのです。信州のスピーディーでワイドなボールムーブに対抗するために、出来るだけディフェンスのポジションを入れ替えず、フリーが生まれないように必死に守っていました。ボールの近くではもちろん、ボールのないところでも互いに声を出してマークを確認し合う姿が印象的でした。こうした工夫によって西宮は、信州のスリーの確率を大きくダウンさせることに成功します。シーズン平均とほぼ同じ数だけ打っていたGAME1は6/32(18.8%)、スリーを減らしたGAME2も4/20(20.0%)という結果は、西宮にとっては大成功だったわけです。

スクリーンショット 2020-02-19 22.19.05

こうしたディフェンス面の工夫はこの試合だけのものではありません。今シーズンはずっとやっています。逆説的な話ですが、信州のボールムーブがいいからこそ、西宮のスイッチングディフェンスもまた威力を発揮したとも言えるでしょう。ひょっとしてフィッシャーHCは、信州に勝つためにこのディフェンスプランをシーズン当初から採用したのかな。だとすればすごい。

再び余談になりますが、西宮が下位チームにコロッと負けたりするのは、このディフェンスプランの副作用かも。このシステムは、信州を筆頭にボールを動かしてオフェンスを作り込んでくるチームには有効ですが、もっとシンプルな攻め方をしてくるチームだとあんまり意味がない。外国籍選手に頼ったチームとか、速攻が得意なチームとか。得てしてそういうチームは下位には多いから、そういうことじゃないかな。複雑なシステムだけに、シンプルに攻められると弱い。逆に言えば、強豪チームとの対戦を見据えたプレーオフ仕様とも考えられるけれど。

◉善戦したからこそ際立つ差

そうやってよく守った西宮でしたが、結果は2連敗。その事実に変わりはありません。言い換えれば、対戦相手を攻略するために策を練り、一定の成果をあげたものの、その上で敗れたということ。皮肉なことに、上手くいった部分があったからこそ、逆に差を見せつけられる結果になったとも言えるわけです。…なんか暗い話になってきたぞ。

画像15

ストークスが勝負所の4Qで取ったのは14点。1試合ではなく2試合で、です。ここにすべてが集約されていると言えるでしょう。攻守ともにギアを上げてきた信州に、西宮はなす術がありませんでした。

信州との2試合で浮き彫りになった課題はざっと以下の点でしょうか。

■西宮ストークスの課題
[OFF]
・ポストエントリーの工夫が少ない(=読まれやすい)。
・キックアウトなどポストエントリー後の展開に乏しい。
・スリーの得意な選手が少ない。
[DEF]
・オフェンスリバウンドからの得点を許すことが多い。
・ファウルトラブル時のインサイドの極端な弱体化。
[OTHER]
・ゴール下でのフィニッシュのパターンが少ない。
・身体接触に弱い選手が多い。

他にもあるけど、あんまり書くと辛くなるからこれくらいにしとこう。改めて挙げてはみたものの、特に目新しいものではありません。高さやパワーといったサイズ、スピードやジャンプなどの身体能力、シュートやパスのスキル面。信州のようなトップクラスの強豪が比較対象になると、戦略・戦術(あるいは努力)ではいかんともし難い差を見せつけられることになります。そしてそれは西宮が宿痾のようにずっと引きずっている問題ばかりでもあります。

GAME2の終盤、ブラッドさんがファウルアウトすると、信州のマクヘンリー選手は体格差を活かした無慈悲なドライブからの得点を次々にあげていきました。谷口選手をはじめ、日本人選手が必死になって喰らい付こうとする姿を健気と呼びたい気持ちは理解できますが、だとしてもブラッドに代わるまともなセンターがいないという事実から目を背けることはできません。こうした選手層の薄さもまざまざと見せつけられました。

画像16

ここまで丁寧(当社比)に書いておいてあれだけど、要は、高くてデカいやつや上手いやつがいるチームがやっぱり強いということ。身も蓋もないけれど、シンプルな部分だからこそ最も差が出やすいのもまた事実。ディフェンス面の戦略・戦術では拮抗もしくは上回った西宮でしたが、高さやパワーといったそれらを超越した要素によってねじ伏せられてしまいました。

まさに日本アルプスのような山脈として立ちはだかった信州ブレイブウォーリアーズ。近くづくほどにその高さを実感する相手が信州だというのは、余りにも出来過ぎですが。

◉その先にあるものを思う

正直、この差が今シーズン中に埋まるとは思えません。とはいえ、残り4試合、「これをやらなければ勝てない」という最低ラインくらいは垣間見えたのでは。だからって勝てるわけじゃないけどね。1〜2勝を拾えれば御の字というところでしょう。

では、今シーズンは無理でも、信州のような強豪を倒してB2優勝を目指すにはどうすればいいのか。ただ、それを考え始めると、結局はさっきの根本的な差の部分に辿り着かざるを得ないわけで、それってつまりはタレントの差ということ。タレントの差とはもっと言えば資金力やフランチャイズの差のこと。そういう本当にどうしようもないようなものが根底には横たわっていて、なんとなく憂鬱な気分にさせられるのでした。

全力で戦う西宮の選手の姿に胸をながらも、なお相手との距離を感じずにはいられない試合を観ながら、大袈裟を承知の上で、覚悟が求められているように感じられたのです。

あなたが声を枯らしても選手の背が伸びるわけではないし、必死に拍手をしても速く走れるようにはならない。自分がこんな駄文を書いたところでブラッドのフリースローが劇的に入るようになるわけではないし、ましてやアリーナで場違いな踊りを見せたとしてもトキオのシュートフォームにはまったく影響がない。

でも、ブースターとして応援することで、選手がもっと上手くなりたいと思うモチベーションを少しでも高められるかもしれない。だとすれば、それ以上に何を望むと言うのだ?


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?