塵
住宅街の路地を歩く
夜は何故か闇が深い
暗闇に窓から白熱灯のあかり
闇と光の境がくっきり
わかれているなと
感じる
地面に突如
己の陰があらわれて
一瞬びびる
夕飯のにおい
人の笑い声
テレビの音
音楽の音
水の音
家がきしむ音
このたくさんの人間
ひとりひとりに
ひとつひとつの人生
があると思うと
眩暈がしそうになる
そして眩暈と同時に
叶えられない憧れを…
絶望を抱く
だって自分の人生は
ひとつしか選べないから…
憧れ。嫉妬。羨望
エトセトラ。
自分が出来なかったこと
手に入れることが
出来なかったもの
見れなかったもの
見せたかったこと
知りたかったこと
知られたかったこと
与えたかったこと
与えられなかったこと
感じなかった想い
感じさせることが
出来なかった想い
愛せなかったもの
愛してもらえなかったもの
全てを知りたいと思う
そして自分の全てを
知ってほしいと思う
死んで塵になって
風に溶けてしまったら
皆、ひとつになれるんかな?
死んで塵になって
風に溶けてしまったら
宇宙の果てがわかるんかな?
そして
こんな欲張りな自分は
地獄に堕ちるんかな?
そんな風に思う時
退廃のにおいを嗅ぐ
おごるな
よくばるな
己なんか
はじめから塵だったんだっ!
だまって塵にもどれ!
世界を手にしたいと
膨れ上がった
欲望を叶える為には
世界で一番小さな塵になること
マクロとはミクロということ
ミクロとはマクロということ
生きたいとは
死にたいということ
死にたいとは
生きたいということ
塵は何も考えちゃいけない
塵だから
何事も控え目に
何事もほどほどに…
だがなぁ…
塵だって燃えるんだぜ。
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