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シャーロッシくんの事例簿その4

 社労士会労働紛争解決センタ-は全国に46ヶ所あり、職場の個別紛争の解決のために、あっせんを行っています。
 センタ-で受理したあっせん件数は平成30年3月には千件を超えました。あっせんがどのように行われ解決に至っているのかを具体的に知りたいとの声にお応えして、実際に社労士会労働紛争センタ-で解決してきた事例をご紹介して行くことになりました。(個人情報保護の観点から内容を一部変更しています。)
 4回目は、降格と解雇により労働条件の不利益変更による賃金及び退職金の減額分を請求し、事業主と争った事例です。

◆あっせんの概要

 申立人(労働者)は被申立人(事業主)の経営する会社で、ある時一方的に主任職から降格され、役職手当と基本給が減額された。その翌月に申立人は私傷病で脳梗塞を患い、長期入院し休業を余儀なくされた。入院中に被申立人が就業規則を持参し①就業規則に基づき主任職を降格させ、それに伴い、役職手当と基本給が減額されたこと②年休の消化後休業期間の6か月が満了して復職できない場合は解雇になること③退職金は減額された基本給で計算し、退職金の計算期間には休業期間は算入されないことを一方的に伝えた。申立人にとっては賃金が減額されると傷病手当金に反映され、受給額が減り、不利益が大きいため到底納得できるものでなかったし、被申立人は傷病手当金の手続きを行っておらず、申立人は受給できていなかった。また申立人は入社から1日2時間の時間外労働を行っていたが、残業代は一度も支払われなかった。そこで申立人は、降給後に支払われた賃金と降給前の賃金との差額、勤続年数に休業期間を含めて降給前の賃金で計算した退職金、未払残業代の合計金額の支払いと、早期に降給前賃金を基にした傷病手当金の手続きをとることを被申立人に求めてあっせんを申し立てた。

◆申立人の主張

・事前の説明もなく、一方的に主任職からの降格を理由に基本給と役職手当を減額した。
・私の入院中に訪れて、降格理由は営業成績不振によるもので、就業規則に基づくもので、それにより役職手当と基本給が減額されたと説明していた。しかし就業規則の内容どころか存在さえ知らず、従業員に周知されていないものであり、無効である。
・現在、脳梗塞のため休業しており無給である。
被申立人に傷病手当金の早急な手続きを希望する。
申請は減額前の賃金で行うべきであり、減額されて
いるなら差額を請求する。
・復職は望まない。6か月後に復職できず解雇となる場合、離職証明書は「会社都合」を希望する。

◆被申立人の主張

・賃金には営業ノルマが設定されており、未達成時には降格もあり得る旨を就業規則に定め、社内通達でも連絡している。
・申立人の営業ノルマの未達は著しく、未達だけでなく売り上げ自体がなく、降格及び降給はやむを得ないと考えている。
・申立人の時間外労働については、日報が未提出でほとんど把握できないが、日報が提出され確認できた3日間については支給する。
・申立人の病気は私傷病のため、離職証明書の取扱いは会社都合とする要求には応じられない。

◆あっせんの内容

・申立人が病気の回復状況と被申立人への不信感から、復職は望んでいないことを確認した。
・あっせん委員は、被申立人に就業規則の内容や周知方法、36協定の締結や過半数労働者代表者選出等について詳しく聞くと、それらの不備を自覚していた。結果、降格、降給は行わず、退職理由は会社都合とすることになった。傷病手当金の手続きは未申請であり受給額には影響は生じていない。
・あっせん委員から申立人に被申立人の意向を伝えると、申立人はこれまでの対応からは考えられない解決内容に、感謝し和解が成立した。

◆あっせんの結果 

以下の内容で和解契約が成立。
・被申立人は本件解決金として、申立人に退職金を含めた金額〇〇円を支払う。
・会社都合での退職を確認する。
・傷病手当金の手続きを速やかに行い、退職後も受給できるようにすることを約束した。
 

あっせんによる解決をご希望の方は!

社労士会労働紛争解決センタ-大阪 
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