私たちは、なぜ扇町公園のケヤキの伐採に反対するのか?(#STOP大阪市の樹木伐採)
なぜ私たちは、大阪市の「公園樹・街路樹の安全対策事業」の見直しを求めているのか。
現時点での、大阪市緑化課と私たちの考え方の違いを簡単に記しておく。
代表的な例として、扇町公園の北側の丘の上に立つケヤキ(B1地区・4番)をみていこう。
このケヤキ、「健全度」に問題があるとして、
今年度中に伐採される予定になっている(12月中にも)。
3年前、大阪市は「安全対策事業」で伐採する木を選ぶようコンサルに委託して報告書を受け取っている(令和3年3月)。
私たちは、この報告書(「令和2年度公園樹木調査及び検討業務 委託報告書」)を、大阪市緑化課から入手した。
報告書を見ると、
樹木医の診断(注1)をもとに、
コンサルは、大阪市緑化課といっしょに作った基準で、
伐採すべきかどうかの判定を下している。
ケヤキの判定は「b」。
伐採の必要性を7段階で判定したうち、軽い方から2番目で、
「剪定または保存」ということ。
コンサルは、樹木の状態に応じて、7段階で判定している。
a:保存 b:剪定または保存 c:剪定または保存(落枝などの危険性)
d:要経過観察 e:要注意樹木
f:伐採(台風などで倒木の危険性) g:伐採(倒木の危険性)
要するに、コンサルは、このケヤキを「伐採」しなければならないとは判断しなかったわけだ。
確かに、樹木医は「大枝に芯達の樹皮欠損が多数あり。被害枝の軽量化は必要」だと”異常”を指摘している。
しかし、その異常を、コンサルは、伐採が必要なほど重大なものではないと判断した。
私たちが鑑定を依頼した樹木医(地域緑花技術普及協会代表理事の細野哲央博士)も、9月に現地調査を行ったうえで、このケヤキを「活力・樹形とも非常に良好」「安全・安心に支障をきたす事情は見当たらない」としている。
さらに、上記のコンサル(及び樹木医)の判定・診断に関してもコメントをもらった。
「異常の程度は軽微ですので、・・・措置は特段に必要としないか、『被害枝の軽量化剪定』を実施すれば十分であると考えられます。(コンサルが)『剪定または保存』と評価しているのは妥当と考えます」。
要するに、
大阪市が依頼したコンサルも、私たちが依頼した樹木医も、どちらも、このケヤキに関して、伐採の必要を認めていない。
これに対して、
大阪市緑化課は、私たちとの面談の席で、
コンサルがいかなる判定(a~g)をしていても、
樹木医の診断で”異常”が指摘されていれば(それが軽いものであっても)、
リスクが少しでもあるので伐採する方針であると明言した。
3年前に樹木医が診断した木は、(ほぼ)全ての木に何らかの”異常”があるので、事実上すべて伐採するということだ。(注2)
樹木医に診てもらうかどうかは、コンサルが判断しているが、これでは、樹木医に診せる意味がない。
大阪市の方針は「疑わしきは”罰する”(=伐採する)」ではないか。
大阪市の方針については、上記の細野氏は異常な事態、合理性がないと断じている。
別の樹木の専門家は「そんなことを言ったら、大阪市では高木を植えることはできない。すべて伐採しなければならなくなる」「予算が足りなくて管理できないから、楽になりたいんだろうなあ」とコメントした。
(2023年11月16日追記)
11月16日、再度、緑化課と交渉の場をもった。
担当者は、「コンサルがいかなる判定(a~g)をしていても、
樹木医の診断で”異常”が指摘されていれば(それが軽いものであっても)、
リスクが少しでもあるので伐採する方針」という上記した説明を変更した。
前回(11月2日)は、事前に準備できないまま面談に臨んだことを変更の理由にあげた。
上記の方針をめぐって、延々意見交換したにもかかわらず、
あっさり説明を変えたことにあぜんとさせられた。
新たな説明では、
「a~eの判定なら、伐採せずに残す木もある」というのだ。
しかし、そうした樹木が何本あるのか具体的に示してくれと求めても、
作業が膨大になると言って拒み続けている。
伐採の判断は、伐採判定と植栽環境などを総合的に判断しているとくり返すばかり(注2)。
要するに、少々説明が変わっても、
「少しでもリスクがある木は伐採する」という方針は変わっていない。
扇町公園のケヤキについても、
現場の公園事務所は伐採理由を「健全度」だけだと言っているのに、
根っこが縁石を持ち上げているなど、あれこれ指摘を始める始末。
さらには、
少子高齢化の時代で、今後は「安全対策事業」のようなかたちの予算が確保できるか分からないので、このままこの事業を進めていきたいという本音ももらした。
だから、"リスクが小さい木は、性急に切らずに様子を見ればいいのではないか”という私たちの提案を聞き入れずに、今切ってしまおうとしているのだろう。
(追記終わり)
樹木のもたらすベネフィットやメリットと、リスクのバランスを考慮せずに、少しでもリスクがあるなら伐採する。
こんな大阪市の方針は、リスクマネージメントを放棄し、市民とのリスクコミュニケーションを放棄していると断じてもいいのではないか。
以上の理由から、
私たちは、「安全対策事業」の見直しを求めて、大阪市緑化課と交渉を続けている。
(2024年1月8日追記)
2023年12月の建設港湾委員会で、大阪市緑化課長は、ケヤキの伐採理由に次のことを加えた。
「樹木(ケヤキ)の植わっている斜面地では、雨水により地表面の土砂が流れ出し、一部、根が露出している状況であり、今後、良好な生育が望めない」
しかし、これについても専門家(細野哲央氏)は、一部露出根があること自体は樹勢には影響しない、程度の差はあれ露出根のある樹木は少なくないと一蹴した。
むしろ公園事務所がするべきことは、人(利用者若しくは管理者)の通行によって芝がはげた場所がエロ―ジョン(土壌流出)を起こしているので、
公園管理としては人の通行を抑制して芝を回復し、エロ―ジョンを防止することが必要と指摘している。
(追記終わり)
(注1)ケヤキの診断書
(注2)
2023年12月2日修正
→コンサルの報告書の本編を入手できたので、判定の内訳を修正します。
2,481本の判定の内訳は、
a:238本、b:281本、c:174本、d:847本、e:186本
f:331本、g:424本
つまり、
コンサルが伐採が必要と判定した樹木は、
f+g=755本、全体の30.5% である。
a:保存(特に問題のない樹木) 9.6%
b:剪定または保存(特に問題はないが、定期的な剪定等が望ましい樹木)
11.3%
c:剪定または保存(落枝による被害の可能性がある樹木) 7.0%
d:要経過観察(現状では問題にならないが、将来的に危険性のある樹木)
34.1%
e:要注意樹木(今後fやgになる可能性の高い樹木) 7.5%
f:伐採(台風などにより倒木の被害の可能性が高い樹木)13.4%
g:伐採(強風などにより倒木の可能性が高い樹木) 17.1%,
a~e判定の樹木は約1700本あるが、このうち約600本が伐採の対象となっていることが、2023年12月の建設港湾委員会で緑化課から明かされた。
▼大阪市の「安全対策事業」の見直しを求めるオンライン署名を行っています。賛同をお願いします!