秋田で一息ついてポンボールで「十息」③
秋田駅から歩ける範囲に秋田県立美術館がある。「安藤忠雄建築っぽいな〜」と思ったらやっぱりそうだった。過去にも書いた安藤忠雄建築、コンクリート打ちっぱなしでも人を引き寄せる温かみのある建物は前にも来たことあるような気持ちになるのも好き。
この美術館のシンボルでもある藤田嗣治の大壁画『秋田の行事』は圧巻と同時に、秋田の良さと誇りがこれでもかってくらいに伝わってくる気がした。地元の営みを絵画で見たことがないから、かつての歴史としてもこんな大きな作品で残っていることが羨ましくもあった。この美術館のカフェでトップ写真のアップルパイとコーヒーで、秋田に来て初めて一息つけた。落ち着く空間を作ってくれた安藤さんに感謝だった。
さて今回のメインイベント、ポンボールイベントの準備に向かう。普段日本酒に合わせない料理がポンボールには合うため、唐揚げ、餃子、パスタなど和食に限らない料理を用意していただいた。そして秋田の酒蔵3蔵が協力してくださり、両関、刈穂、飛良泉の日本酒が並べられていく。私にはありがたい絶景だった。
すべてポンボールにして飲むのはもったいないというか、私の願望は日本酒を飲む人が増えることでポンボールはあくまで入り口なので、飲み比べに最高なこの状況は是非そのままでも飲んでもらいたく、お猪口サイズのプラカップも用意していただいた。
秋田の方々が続々と来てくださり、みんなでポンボールで乾杯してから始まった。それだけでも高揚したけど、酒蔵の方々にポンボールを飲んでもらうのも、日本酒好きそうな皆様に飲んでもらうのも、内心ドキドキしていた。でも「美味しい美味しい」って何杯もおかわりしてくれて、自分なりの濃さでそれぞれのマイポンボールを作って楽しんでくださった。
料理の油やソースをポンボールだとよく流してくれて、また食べたくなるし飲みたくなるしの相乗効果も抜群。中には日本酒まだ飲み慣れていないという方もいて、「ポンボールだったら飲みやすくて良い」と言ってくれたのも嬉しかった。
この日はよんななで制作したポンボールPR映像を皆様に初お披露目させてもらった。ストーリー仕立ての映像をポンボール片手に静かに見つめてくださる皆様、自分の顔を見るのが苦手な私一人だけ体をくねくねさせながら下向いたりして落ち着きがなかった。
見終えて「こんな日常の中に日本酒があるといいなぁ」と言ってくださり、やっと皆様の顔を見れた。秋田市内にある酒屋さんなるみ商店の方が「この映像、ぜひリニューアルオープンする日からうちで流させてください」と言ってくださり、実はオープン日の7月7日から流していただいている。こちらの映像はエンドロール含めて完成したらどこかでお披露目するので少々お待ちを。
3時間のイベントはあっという間に時間が過ぎ去った。迫り来る時間と共に寂しさも押し寄せてくる。それくらい皆様の笑顔をずっと見ていたかった。私がポンボールを始めたのは日本酒で笑顔になってほしい気持ちが強いからなんだって思った。皆様の笑顔が私の笑顔になってるから、ずっと楽しくて終わってほしくなかった。
最後の締めの挨拶を刈穂の伊藤社長がしてくださった。日本酒の可能性が広がるポンボールの良さを熱く話してくださり、「ポンボールを文化にしましょう!それに向けて応援したいし、協力します!ポンボールで世界制覇しましょう!」と言ってくださった。ちょっと、泣きそうになった。酒蔵の方の言葉は説得力あるし、絶大な勇気をくれた。地道であろうがこれを広めていきたい。そして日本酒を飲む人を増やしたい。
私がなぜここまで思うのか。別に「日本酒の良さを知ってほしい!」「日本ならではのお酒だから!」「日本酒飲んで!」を押しつけたいわけじゃなくて、ただただ一息ついてほしいのかも知れない。私も一息つきたい。そんな時に適当に選ぶものを飲んでもその時だけの「一息」で終わる。
でも安藤忠雄建築の空間で自分の心が動いたものを選んで嗜むのが束の間だろうが本当の休息になったように、その意識だけで「一息」が「十息」になるような気がする。それが「充足」になって自分の心と体が満ち足りた状態、その時間があるとないとでは日々のエネルギーが変わってくる。私はこの2、3年で強く実感するようになった。
その休息はそれぞれ好きなものでいいけど、美味しい日本酒があって、でも飲みにくいというイメージで選ばないという光景が私は切ない。じゃあ飲みやすくすればいいと思う。飲んで知ってみないと何も始まらない。そこから日本酒をそのまま飲んでみるでいい。みんな、一息つこう。意識しないとできなかったりするから、意識するようになった。みんな、一息つこう。自分にも言い聞かせる。そんな一息のお供に、自分で選んでみた日本酒と、自分の好きな濃さで割ったポンボールと、食べたいものを選ぶ。そんな時間を作ってみるだけで、深呼吸できて明日からの活力がまた湧いてくる気がする。
秋田で出逢ってくれた皆様、本当にありがとうございました!たくさんの気づきと感激がありました。また行きますね。