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安室奈美恵Finallyツアーに全滅した男が最後にたぐり寄せたラストライブ

「そんなまさか!」

2017年9月20日、日本列島に大きな衝撃が走った。

平成を代表する歌姫 安室奈美恵が2018年で引退することを発表したのだ。

2017年9月16日/17日に故郷の沖縄で25周年凱旋ライブを行って間もないことだった。多くのファンは目の前が 〝すべてBLACK OUT〟 現実を受け止められずにいた。

安室奈美恵のファンといえば、社会現象にもなった「アムラ―」 に代表されるような、茶髪のロングヘアにニーハイブーツを履いた綺麗な女性を思い浮かべるかもしれない。

しかし、男性ファンも少なからずいる。私もその一人だ。(ファンは安室奈美恵のことを安室ちゃんと呼ぶ。だからここから先は安室ちゃんと呼ぶことにする)

引退発表を聞き、私は膝から一気に崩れ落ちた。まさかこの日がやってくるとは。

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〝永遠ていう言葉なんて知らなかったよね〟

彼女の名曲の歌詞が頭の中でリフレインする。次第に目から涙が溢れ出てきた。

CAN YOU CELEBRATE?

この名曲のタイトルと真正面から向き合うのは今回で二度目になる。一度目は1997年に安室ちゃんがSAMとの結婚を発表した時、二度目はまさに今この引退発表の時である。

私を含め多くのファンが目の前の現実を受け入れられずにいる中、安室ちゃんは引退を前に最後のアルバム「Finally」をリリース。

ほどなくして最後のライブ「Final Tour 2018 〜Finally〜」が発表された。

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ついに、ついにこの時がきてしまった。安室ちゃんのライブを観ることができるのはツアー最終公演日2018年6月3日の東京で最後となる。多くのファンがそう思った。

ツアーは国内5大ドーム17公演75万席が用意された(+深セン・香港・台湾公演)。チケットに応募したファンは総勢400万人以上、当選倍率5倍以上となる熾烈なチケット争奪戦が繰り広げられた。特にラストライブと目された6月3日東京公演には新旧ファンが入り乱れ、チケット応募が殺到した。

私はこのFinallyツアーに全国場所を問わず応募した。もちろん6月3日の東京公演にも。

安室ちゃんのライブにはほぼ毎年参加してきた。私はずいぶんと長い間ファンクラブ(fanspace)に入っている。

きっと今回も当選するだろうと思っていた。昔から長く応援しているファンを優先して当選させる仕組みを取り入れてくれているだろうと身勝手な希望的かつ楽観的観測を持っていた。

ところが、ライブ抽選結果の蓋を開けてみると、ことごとく落選。これまで何度となく当選してきたアカウントなのに最後に限ってまさかの全滅だった。ファンクラブ(fan space)抽選でも一般先行でも当たらなかった。

なんだこれは・・・一体何が起きているんだ。

私は長い間安室ちゃんのファンだが、Twitterに投稿したり情報を拾ったりすることはこれまで全くしてこなかった。なぜならこれまで何不自由なく安室ちゃんのライブに毎年行くことができていたからだ。

少しでも情報を知りたいと思いTwitterで安室ちゃん情報を調べはじめた。

すると・・・

「今年で安室ちゃん引退って聞いてライブ応募したら当たった―!」

「安室ちゃんのライブ行ったことなかったけど、最後の記念に行ってきまーす!」

といった当選通知がチラホラ。一方で私と同じように長らくファンで毎年ライブに参加してきたファンの落選通知を多く目にした。

「ニワカ笑うな来た道だ。古参嫌うな行く道だ」

誰もが最初はニワカである。安室ちゃんに魅力を感じファンになってくれる人が増えることはとても嬉しい。普段ならば。

しかし今回ばかりは違う感情が渦巻いた。新規ファンより古参ファンを優先してほしい、と。

その後の定価トレードですら当選しなかった。安室ちゃんの最後のツアーに一度も参加できないなんて・・・

勝手に裏切られた気持ちになり〝荒ぶった〟

 毎日通勤中に聴いていた安室ちゃんの歌を聴きたくなくなっていた。もうライブに参加できないから。

好きな人にフラれた気持ちでいた。もう距離を置きたいと。

今思えばとんだ勘違いである。チケットの抽選結果に新規・古参の優劣なんてなく、完全に自動だったのだろう。誰もが知ってる安室ちゃんの引退と聞けば、一度はライブを観てみたいと思う人が急増するのも仕方がないことだ。

当時は、頭では理解していても心から納得することはできなかった。それくらい安室ちゃんが好きだからだ。

結局、安室ちゃんのFinally国内ツアーには参加できなかった。

そんな時、本当のラストライブは2018年9月15日に沖縄で開催されることが突如発表された。発表されたのは、ツアーの最終公演が終わって2ヶ月以上も過ぎた8月22日。開催まで1ヶ月もなかった。しかも会場に入れるのはわずか3500人。急な発表にも関わらず35万人が応募し、チケットの当選倍率は100倍を超えた。Finallyツアーの倍率5倍なんて比ではない。

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しかしナント! 私は幸運にもこの9月15日沖縄ラストライブのチケットを手にすることができた!

私はラストライブが正式発表されるより前段階で早々に家族分の沖縄行きの飛行機と宿を抑え、周到に準備をしていた。

本当のラストライブは “約束の場所” 沖縄で開催されると確信していた私は 〝SO CRAZY〟 な行動に出た。安室ちゃんの残した【5つの伏線】があったからだ。

〝ここまで どんな 道を歩いて あなたにやっと 辿りついたかを〟 話したいと思う。

私が安室ちゃんのファンになったのは1996年、中学二年生の時である。当時、初めて付き合い始めた彼女との初デートでカラオケに行くことになった。

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〝Body Feels EXIT 体中 熱く深く走る想い〟

彼女が熱唱してくれたのが安室ちゃんの歌だった。完全にやられてしまった。彼女のことがさらに好きになったのはもちろん、安室ちゃんのことが大好きになったのである。

それから彼女とは〝a walk in the park〟したり〝SWEET 19 BLUES〟したり、たまに〝No〟なんか言われたりしながら遂には結婚した。子どもが生まれ今では親子揃って安室ちゃんの大ファンだ。

毎年のようにライブに参加してきた。子どもを一時保育に預けて夫婦で参加することもあったし、子どもと一緒に参加することもあった。

しかし、最後のFinally国内ツアーはまさかの全滅だった。

どうしても、どうしても最後のツアーに参加したかった。

「こうなったら国境を越えよう!」

台湾公演に参加することに決めた。

〝強く願えば なんだってできるさ 境界線 越えることだって〟 

安室ちゃんが教えてくれた言葉だ。

海外公演に参加する気持ちなんて最初は1ミリもなかった。でも参加できて本当に良かった。台湾公演に参加し、安室ちゃんが台湾の人達にいかに愛されているかを肌で感じることができた。ライブの盛り上がり方はこれまで経験したことがないほど熱狂的なものだった。安室ちゃんのお陰で台湾を知れた。

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2018年6月3日、東京公演にて「Final Tour 2018 〜Finally〜」が幕を閉じた。

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私は本当のラストライブの発表がこの日にあるのではないかと勝手に期待していたが、公演では特に何の発表もなかった。

7月が終わっても次なる情報は一切出てこなかった。

近づく9月16日、安室ちゃんの引退の日

このまま引退の日を迎えるのだろうか。


1日1日がとても長く感じられた。それはラストライブを期待する私からすると〝永遠〟 のようにも感じられるほど長かった。


8月9日、ついに公式発表が出た!

しかし、その内容は2018年9月16日に沖縄の宜野湾で「本人出演なし」 の花火ショーを行うというものだった。

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「安室奈美恵本人の出演はございません」

 この一文字に確信が揺らぎそうになった。

しかし私は安室ちゃんの残した【5つの伏線】を信じた。

【5つの伏線】とは何か。

安室ちゃんはライブではMCをしない。でも最後に必ず言う言葉がある。

「また遊びに来てね! バイバーイ!」

これがFinallyツアーでは

「最後は笑顔で、みんな元気でね!バイバーイ!」 に変わった。

「また」 はもうない、「最後」 なのだ。

しかし、安室ちゃんが「また遊びに来てね! バイバーイ!」 と言って「また」 来ていない場所があった。

それが沖縄だ。

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2017年9月16日/17日に行われた25周年沖縄ライブの時に安室ちゃんはこの言葉を放った。このライブのあとほどなくして引退発表をしている。ということは、沖縄ライブの時には引退は心に決めていながらも「また遊びに来てね」と言っていることになる。そしてFinallyツアーには沖縄公演は入っていなかった。これが1つ目の伏線だ。

2つ目は、安室ちゃんがツアー最終の東京公演のMCで「9月16日以降、私がこうしてステージに立つことはありません」と言ったことである。沖縄国民栄誉賞の授与式でも「9月16日までは活動したい」と語った。

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3つ目は、日本トランスオーシャン航空(JTA)が企画したAMURO JETの運行が9月末までと発表されたことだ。何もないのに9月末までAMURO JETが沖縄に飛ぶのはどう考えてもおかしい。

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4つ目は、ファンは過去に安室ちゃんとコラボレーションして欲しいアーティスト投票を行っていたが、その結果が発表されていないことだ。台風で中止になった幻の20周年沖縄ライブでは、多くのアーティストとのコラボが予定されていた。このこともあって、安室ちゃんが他アーティストとのコラボレーションライブを最後に行うのではないかと私は考えた。

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5つ目の決定打は、9月15日と9月16日の宜野湾海浜公園特設会場が不明の団体によって抑えられていたことだ。これは、私と同じように最後のライブが沖縄であるのではないかと考えたファンが問い合わせをして得た回答だった。9月16日には「本人出演なし」 の花火ショ―が開催されることが発表され、もはや不明の団体ではなくなった。



9月15日、何かがあるはずだ!



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2018年8月22日、ラストライブが沖縄コンベンションセンターで開催されることが発表された!

準備は万端だった。

しかし、このラストライブもファンクラブ(fan space)抽選で落選。その後の先行応募でも落選。最後の “HOPE” だった定価トレードでも落選した。Finally国内ツアーの時と全く同じだった。万策尽き果てた...

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こうなったらラストライブのチケットがなくても「家族で沖縄を楽しもう」  ともともと抑えてあった飛行機のチケットで9月14日に沖縄へ旅立つことを決めた。


その前日、9月13日の夕方だった。


ステージサイド席を開放し直前抽選することが発表された!

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家族全員で応募したかったが、2人までしか応募することができなかった。妻が子どもの面倒を見ておくから応募していいよと言ってくれた。ファン歴は妻のほうが長いのに、感謝しかなかった。

〝似たもの同士のあなたと出会えて良かった〟

その日の夜は〝HOPE〟の歌詞が頭から離れなかった。

〝君への想いが高鳴って 限りなきチカラ生まれる 躊躇うならば この世界に そっと祈ろう 夜が明けるように〟

〝求めるならば どこまでも 変わらぬキズナ振りかざそう We are hope〟

翌日の9月14日、自分がラストライブ会場にいる姿を思い浮かべながら沖縄に着いた。
ホテルに向かうゆいレールの中で直前抽選の結果を見るべくメールを開いた。


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「チケットがご用意できました」との通知! 目を疑い何度も見返したが、本当だった。ゆいレールが 〝PARADISE TRAIN〟 に変わった。

2018年9月15日、安室ちゃんの正真正銘のラストライブ。

運良く会場に入れたのは3500人。会場の外には音漏れを聴くために1万人を超えるファンが日本全土、そして台湾から集結していた。会場前にも会場内にも驚くほどの報道陣がカメラとマイクを持ち、待ち構えていて、さながら一大事件のようだ。

最後の 〝Showtime〟 は予想した通り、様々なアーティストとのコラボレーションライブだった。コラボしたのは平井堅、MONGOL800、BEGIN、ジョリン・ツァイ、山下智久、DOUBLEと錚々たる面々だ。すべての伏線が回収された。

安室ちゃんが 〝HOPE〟 を歌い始めて登場した瞬間、涙が溢れ出てきてとまらなかった。安室ちゃんは最高の笑顔で晴れやかに歌っていた。涙をこらえた。最後は笑顔で。

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安室奈美恵の 〝二度とないステージ〟 で私は 〝騒ぎ明かした〟 〝大声で叫んだ みんなで叫んだ 未来を気にせずに〟

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8曲全てが終了すると、安室ちゃんからは「今日この会場に来てくださった皆さん、本当に本当にありがとうございました」 と一言だけの挨拶があった。そして、1人1人のアーティストを壇上に呼びみんなで手を繋いで一礼にて閉幕した。

会場が地響きするほどの鳴り止まぬアンコールが飛んだ。私も思いっきり叫んだ。しかし再び姿を現わすことはなかった。

ラストライブの余韻覚めやらぬ翌日の9月16日、WE LOVE NAMIE HANABI SHOWが行われた。花火ショ―に当選したのは1.5万人。この日も当選しなかったファンが場外に1.5万人以上集まった。宜野湾のトロピカルビーチの大空一面にあがる1万2000発の花火、一つ一つの花火に乗せられる安室ちゃんの音楽に3万人が酔いしれた。

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会場の関係者席では密かに浴衣姿の安室ちゃんも観覧していた。本人からのお別れの挨拶はなく、収録音声のみで「最後は笑顔で!みんな元気でね〜バイバイ〜」と流れた。

その日の夜、安室奈美恵の公式ページに正式な挨拶が掲載され、気持ちいいまでに潔く引退した。安室ちゃんは 〝輝かしい未来へ〟 旅立っていった。

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沖縄での一連の引退イベントを通して強く感じたのは、安室ちゃんのファンへの愛情、音楽へのこだわりと想い、そして地元沖縄への感謝の気持ちだった。

空港に降り立った瞬間から至るところに安室ちゃんのポスターがあり、ゆいレール講内や国際通りのほぼすべてのお土産屋さんで安室ちゃんの音楽が流れていて、琉球新報には安室ちゃんの特大写真が掲載されていた。

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そんな〝HERO〟が引退した日からもうすぐ1年が経とうとしている。

私がいなくなっても、経済効果を含め、沖縄に貢献できるイベントを続けてほしい

安室ちゃんが残した願いは受け継がれ、今年も沖縄県をあげて記念日を盛り上げるべく様々なイベントが企画されている。そして9月16日には聖地宜野湾でまた花火ショーが開催される予定だ。

この場所から未来へ

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安室ちゃんの存在は 〝NEVER END〟 だ。


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