Vol.15 どうして食べてくれないの?
どうして食べてくれないの?
「一口しか食べてないのに『ごちそうさま』と言い、遊びはじめるんです
。」「食べたものを口から出しちゃうから、毎食イライラします…。」子どもの食にまつわる悩みをお聞きすることからスタートする「子どもの食講座」では、食事を準備するたびに、ガッカリやイライラを繰り返されている親御さんのお悩みをお聞きします。
「子どもにいかに食べてもらうのか」という工夫を伝えるのではなく、「その時、子どもには一体何があるのだろうか?」と、子どもの中にある事情を探る時間です。色々ある事情のうち、今回は「子どもが食べない」ということにもっとも影響が大きいことの一つについて、触れていきます。
「いかに食べ物を調達するか」が大人の仕事だった飢餓の時代
人類が誕生した大昔から現代の文化的な生活が始まるまでは、いかに食べ物を調達するか、ということが大人の大切な仕事でした。狩りで獲物をしとめる、山では木の実や山菜をとり、海辺ではあさりなどの貝を集め、魚を取り、命となる食をどう準備するか、これが毎日の仕事でした。
大陸から稲作が伝わり、農作業から安定的に食料を確保できるようになって以降も、干ばつや洪水など自然に左右されて飢饉が訪れるたびに命の危険に直面する、そんな時代が長く続いてきました。食べ物を容易に手にする環境などはどこにも存在していない「飢餓の時代」が、つい最近までの当たり前だったのです。つまり、子どもも大人もいつもおなかがすいていました。(世界的には、9人に1人が飢えていて十分に食べることができない状態にあります。2018年9月国連報告書より)
「いかに食べさせるか」の前に
70~80代の方に「子どもが食べないんだけど、どうしてだと思う?」と尋ねると、「そりゃ、おなかがすいてないからでしょ!」と即答です(笑)。「どうしておなかがへるのかな?…かあちゃん、かあちゃん、おなかとせなかがくっつくぞ。」という歌が子どもの当たり前だったころには、学校から帰ったら「今日は何~?」と台所をのぞき、食卓につけば「わぁ~!」という子どもの歓声と笑顔がそこにありました。つまり、おなかがすいていたなら、「いーらない!」とそっぽを向く子どもなんていないし、子どもが食べないことに悩む、なんていうことが起こるはずもないのです。いかに食べさせようかと躍起になる前に、「おなかがすいているかな?」と子どもの食欲をみてみましょう。
「おなかがすいた」を取り戻せ!
小さい子どもはまだ胃袋がさほど大きくないので、そもそも量的にはあまり食べないことが多いです。あめ玉1個、チョコ1かけ、ジュースをコップに少しが、子どもの食欲をかき消してしまい、「ご飯」を食べなくしちゃうこともしばしば。体をいっぱい動かしておなかペコペコで食卓につけば、うれしい笑顔で「いただきまーす」。まさしく「空腹は最高のごちそう」なのです。
筆者:こどもキッチン 主宰・講師 石井由紀子
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