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ドラフト会議雑感③捕手指名とヤクルトの捕手事情

まさかの指名漏れと独立リーグの躍進

今年のドラフトでは高校NO1捕手の箱山遥人、大学NO1捕手の印出太一、社会人屈指の打撃型捕手・野口泰司といった指名が有力視された捕手の指名漏れが相次いだ。それだけでなく捕手の支配下指名は高校生が龍山暖(西武6位・エナジック)、大学生はゼロ、社会人は石伊雄太(中日4位・日本生命)だけで、今年は高校生・大学生・社会人を合わせても2人と特に少なかった。

その代わりに今年目立ったのが独立リーグからの指名だ。支配下指名では町田隼乙(阪神4位・BC埼玉)、矢野泰二郎(ヤクルト5位・四国IL愛媛)の2人が指名され、育成でも嶋村麟士朗(阪神育成2位・四国IL高知)、大友宗(ソフトバンク育成3位・BC茨城)、松本龍之介(ヤクルト育成4位・関西独立堺)、田島光祐(オリックス育成5位・BC信濃)の4人が指名された。阪神とヤクルトは独立リーグから2人も指名した。去年独立リーグの捕手で指名されたのが中日育成1位の日渡騰輝(BC茨城)だけだったから今年がいかに多かったかがよく分かる。

ヤクルトの捕手事情

今季のヤクルトの捕手は育成2人を含む8人体制でスタートしたが、捕手不足によりシーズン途中に中川を獲得して9人体制となっていた。2023年も7人体制でスタートしたが、捕手不足によりシーズン途中にフェリペを獲得していて、3軍もないのにこの2年で捕手が2人も多く在籍することとなった。

ドラフト前時点のヤクルトの捕手は支配下7人で、去年将来の正捕手候補として高卒の鈴木叶を獲得していたことから筆者は独立リーグから育成での獲得を予想したが、予想どおりの結果となった。さすがに独立リーグから2人も獲得したことには驚いた。2人獲得したことで今季途中から続いた捕手9人体制を来季も維持することが確定した。2022年は支配下捕手が実質5人しかいなかったが、今回のドラフトを経て支配下だけで8人まで増えた。来季は今季と同じ9人体制ではあるが、今季フェリペが捕手としてほぼ機能していなかったから捕手は実質1人増となる。ヘルニア手術をおこなった内山壮真の捕手としての出場が不透明なことから3年連続シーズン途中に捕手を補充することがないように捕手2人を獲得したと推測される。

ヤクルトの独立出身捕手

ヤクルトは今回のドラフトで独立リーグから矢野と松本龍を指名したが、過去に独立リーグから支配下では星野雄大、藤井亮太、育成では小山田貴雄、大村孟、内山太嗣、松井聖、さらにシーズン途中にはフェリペ、中川拓真を獲得してきた。この中で内野手に転向した藤井を除いて1軍の戦力になったと言える捕手はいない。大村はヤクルトの独立出身捕手で唯一支配下登録を果たしたが、1軍通算出場わずか14試合にとどまった。大村、内山太、松井、フェリペの4人は2軍で便利屋起用されて戦力外になったと言わざるを得ない。フェリペはシーズン途中の捕手不足でわざわざ来てもらったにもかかわらず在籍1年半で戦力外、内山太は育成4年目のフェニックスリーグ終了後に戦力外、大村に至っては秋季キャンプの参加メンバーに入っていたにもかかわらず戦力外になるなどヤクルトでは独立出身捕手の扱いはとにかく酷い。そもそも彼らに関しては球団が数合わせではなく戦力と考えていたのかも疑わしい。そして、中川はオリックス在籍3年間でファースト出場がわずか2試合だったのに、シーズン途中加入で4試合もファーストで出場したことから来季以降の便利屋起用が十分に危惧される。

このような球団だから矢野と松本龍の将来について心配になるのは当然だろう。特に松本龍に関しては今季リーグ46試合で37盗塁(失敗2回)も記録していることから外野手としての起用が予想される。実際に橋本星哉は大学までユーティリティプレーヤーではなかったのに、捕手にしては俊足であることから外野も守らされている。支配下指名の矢野は捕手メインでの起用が予想されるが、今季育成から昇格した橋本と、シーズン途中に支配下で獲得した中川が1軍での出場機会を全くもらえなかったことから矢野が1軍の正捕手争いに加われるとは思えない。

そもそも今季の捕手事情で言うと橋本を1軍に緊急昇格させるわけでもないのに支配下ユニフォームも準備せずに支配下登録したのにシーズン最終戦まで1軍昇格させなかったことと、中川を1軍で起用するつもりもないのに育成ではなく支配下契約を結んだことは非常に疑問だ。中川同様にシーズン途中加入したフェリペが育成契約だったから尚更だ。

こうした過去の事情から1軍で起用するとは思えない中川や矢野を支配下で獲得したことが支配下枠を圧迫する一因になっている。矢野は高卒4年目の22歳だが、同い年の捕手はすでに内山壮と中川がいたことからあえて独立リーグから同い年の選手を獲得しなくてもよかっただろう。それに独立リーグから同い年の捕手を獲るのであれば、順位縛りがあったのかもしれないが、箱山や横浜高校の正捕手・椎木卿五といった高校生捕手を指名してほしかった。去年ヤクルトが戦力外にした松井の古巣であるBC信濃の田島を指名しなかったのはせめてもの良心か。

独立リーグ出身で1軍で活躍したと言えるのは今まさに活躍中の山本祐大くらいで、育成出身から正捕手になったのも甲斐拓也しかいないことからも独立と育成出身選手が1軍の戦力になることはかなり厳しい。ヤクルトはもちろん他球団も独立出身捕手を戦力というより数合わせ的に獲得しているように感じるが、独立出身捕手たちにはぜひ球団を見返すような活躍を期待したい。


拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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