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『残像陶冶』
駅の前
ぽつんと長い影一つ
どぶ底の、あの日の曙光に反射した
ひどくなまった針みつけ
それを、そうっとズックへと
白々と、そして騒やかな森へと
回送を見送り、次を待つ
✳︎
闇に覗く、ゾードロープのその隙間
繰り返される信号の、消えて、点いてはまた消える
網膜に灯るその残像、残像、残像・・・
――いつか観た、ニューシネマが
記憶からこぼれた、その刹那
ゴウン、と響いた雷鳴で、炎もろとも崖の下
慌てもせずに、目をつむり
木々たちの、焦げた匂いを燻らせて
赤茶けた肌を、掻き毟る
落屑が、土へと還るその様が
この様が、何故かとても心地良く
網膜に焼く、景色
黒々と、霧の深く漂う森の
・・・誰も居ない、森の中
✳︎✳︎
残った、針は考える
さて、どうやって還ろうか