Soy
詩たち。
わたしにまかせてと主のようなみ声がひびくわたしは尊さを垂れ下がる葉桜の枝に見るわたしは海と空をなだめては抱くからと告げるおさなことばで 霧へとかえる オジロツバメガ おまえに単なるコピーと薄ら嘲りを向けるおまえは遠くから垂れ下がる蜘蛛の糸つつくおまえは食う寝る場所にも困り欲をかくおさなことばで 罠へとかける オジロツバメガ
赤い列車の その車内 真向かいに 乳鉢色のその肌の 右膝だけが赤錆びた 少女が筆を走らせて 世界の秘密を暴いている ポニーテールの黒髪を ゆらゆらと遊ばせ 僕もひとり指を遊ばせ 聴こえてくるあの “レティクルの音色”を抑えつつ 少女の秘密を書き留める 指が疲れる程に しばらく揺られ やがて待合する駅で 白髪の男が 少女の隣に座る 彼は口を笑わせて おびただしい数の金銀の歯から 乱反射するギラついた生々しい光で 乗客すべてを震わせた でもなぜだかその眼だけは なにも映しては
この惑星が泣いている 嘘じゃなく 全身が痛くて 身動きもつらいのに 手の大きかったヒトのメロディーで 詩人の眠る丘へ レクイエムを弾く 惑星のしずく その軌跡 流れ 国を越えて 水に混ざり込む そんなサイクル すべてが愛おしく こんな変な時間だけ ただ過ぎてく 今夜 変な時間だけ ただ過ぎてく こんなこと考えてもムダだと こんなこと言うヤツは変だと・・・ そう思われるのはワカッテイルヨ でももう抑えることは出来ないんだ わかってる 変なヤツなんだろう 生まれた時から変わらない
来るがいい世界よ このわたしの義歯は 貴様の惨めな骨を 幾億もの欠片にし このわたしの髄液へと ーーまるであの”誰かの海”に 日毎に投げ捨てられる同志たちへの たむけの代わりにしてやろう すっかりと流し込んでやろう それでも さしちがえる事なく終えるのであれば 来るといい世界よ 容赦なくわたしの肉を遣うがいい お前はもう 独りであの戸口をあけられるのだからな