山田智和監督作品【四月になれば彼女は】を見た。
エモエモ恋愛映画大好きやねん。
定期的に顔とか性格に似合わず恋愛映画を見るよね。んで、恋愛映画を大体勧めてくるよね。なんて言葉ばかりを言ってくる友人達は滅んでしまえと思いながらも見てきた話題作の一つ【四月になれば彼女は】…話題作と括って良いよな?と思うぐらいには、自分が昔から見ていたテレビで常に何かしら主演を飾っているイメージが強い佐藤健と長澤まさみ、その上昨今話題に話題を呼ぶ森七菜が主演という形で作品を作り上げているのに、あまりにも話題にあがらないのを見て恐怖に慄いています。…何だかんだで3月って色々と映画公開されてますし、話題作自体は多いんで割とこんなものなのかな?日本人の邦画アレルギーと言うか、洋画で字幕で見るの最高!みたいな連中の多さもありますが、もう少し話題にあがっても良いんじゃないかと思う訳ですけれども。
本当、改めて思う事でも無いんですが…個人的に予告編から何処か悲壮漂う雰囲気に引かれてしまうのはなんなんでしょうね。昨今リバイバル上映もされている新海誠作品の秒速5センチメートルに脳を破壊されているからかな。今でも自分の人生観を変えたとかは無いけれど、花束みたいな恋をしたの見た破壊力から、お勧めの映画を見せるなら何を見せるかで花束を多分挙げるぐらいには好きなんで、あの映画を見た衝撃の取っ掛かりみたいなのは未だに残ってるのかもなぁと思ったり。
何度も語る様に、花束みたいな恋をしたから始まった気がするエモーショナルに重きを置いた昨今流行り気味ではある恋愛映画。正直な所、こういう映画ばかりを見て辟易しないのかと言われれば、僕が尊敬するラッパーと言うよりかは映画批評家としての立場で語るRHYMESTERの宇多丸氏。そしてその氏の言葉を借りるのなら【倦怠夫婦物】はやっぱり人間らしさが出る度に何処か味がするので、無縁だからこそ楽しめるんですよね。
今思えば今作が話題にならなかったという点においては少し分かり難さはあったと思う。予告編でもある通り、10年前の元カノと現代で付き合っている結婚を予定している彼女とのシーンはそれぞれ挟まれる形で描かれるのもあるので、そういう分かり難さなのか?と言えば、馬鹿じゃないからそういう事じゃないと断定する様に否定する訳なんだけれど。正直有り体な言葉で言えば【現代風蛙化現象】これに尽きるんじゃないかな。
監督の意図する通りであれば…作品自体は綺羅びやかな学生特有の恋愛の始まりと期待感がやはり描かれていて、結婚を控えている彼女との描写は少しだけ陰湿で、だけど何処か分かってしまう自分が居る様なうだつの上がらない日々が描かれるんです。だけど此れがまた全面的に付き合う迄の過程がどんな物だったとしても、付き合った始めの綺羅びやかさや続くであろう楽しさも描かれているんですが、それに対比させる恋愛における憂鬱さを羅列してるから、まぁ何とも言えない気持ちになる訳ですよ。
直近って程でも無いけれど、アナログや余命10年に関しては出会った時からお互いに過ごす時間の素晴らしさと尊さを描いているからこそ、色んなカップルも見て賛美してくれてたと思うんですよ。だけど今作は本当にきついシーンがある。37歳独身無職の俺でもきついなって思えるシーンが、本当に結構ある。
例えばだけどグラスが割れて、ただ割れたグラスを義務の様に惜しまず片付けるシーン。何の変哲もないシーンなんだけど、この割れたグラスの背景には今付き合っている二人が同棲を始める時に、にこやかに楽しげに選んで買ったグラス。彼氏からしたら彼女が心配で大丈夫か声を掛ける。割れた衝撃や夜遅いが故に手早くグラスを片付けてた訳です。だけれど、彼女からしたら今の関係性は冷え込んでしまっているんじゃないかと言う最中。思い出深い品が割れてしまったのに、残念がる事もなく処理としてこなす彼氏に愛の疑問が深まるばかりと言うシーンが描かれる。
よく某掲示板に貼られている克・亜樹先生のふたりエッチって言う本に出てくる話に下記画像の様な問答があるんですが
グラスのシーンの理解に関して、極端な非モテのネットに蔓延るアナログタイプのオタクならまだ何かこういう理不尽に近い!とかになるんでしょうけど、こういう事は無いんです。本当にこういうただ理不尽とも呼べる事は一切無い。
ただ男からしたらいやいや(笑)そんな事有りませんよ(笑)惜しみます(笑)なんてあるかも知れないけれど、女の子からしたら同性だからって言うのも込で、何処か付き合っている中で擦り減っていく愛情の感覚。似たような事があるんじゃないかとも思えるから、多分お互い仲良く見て面白かったね!みたいな映画じゃないんですよね。正直男女別の視点を向いてしまえるからこそ、話題になってないのかなぁと。一人で愉悦に浸って見る人が増えたらマジで人気作になってたと思う。
正直、映画自体の面白さで考えたら俺は好き。だけど、作品の流れやきれいな景色を映し出したりするエモーショナルの押し付けがましい所や10年前の付き合っていた元彼女と結婚を見据えて付き合っている現彼女との関わり合いも出てくるんですが、かなり斜め上にぶっ飛んでるとかで難しい立ち位置なのかなぁなんて。
今回の主演にばかり目が行く映画なんですけど…上記画像にいらっしゃるともさかりえさんをはじめ、竹野内豊さん、仲野太賀さんと言った周りに固めている他の俳優さん達の情緒を揺さぶる演技が一つ一つ凄いのがこの映画の良さだと思うんで、普通の邦画として見て欲しいなと思えた映画でした。愛に対しての一つ一つの永遠じゃない理由に答えが無いから終わりなんじゃないかと無慈悲に問いかけてくる様な抉られるシーン、何処か恋愛に対して背伸びはしてないけれど…ペースが合わせられなくなるシーン。その一つ一つが答えは出ないけれど、お互いが常に歩み寄る事の何気ない大切さを教えてくれるし、尊ぶシーンは何処か自分を傷つけてくれるけれど、大きくさせてくれるんじゃないかって映画だと思いましたね。