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《有料・冒頭試読》【マリーンズ略史 92~05/-19-「球界再編騒動」】

(写真 マリーンズファンも「合併反対」の声を上げた)


(19)巻き込まれた、球界再編騒動(2004年)

 2004年の鹿児島キャンプスタートの前日だった。朝日新聞の夕刊に「近鉄球団が命名権の売却を検討」という記事が出た。その日の夕方に近鉄球団は会見を開き「35億円程度で売却を検討している」と正式に表明した。ところがその夜、会見を受けて巨人の渡辺オーナーは「外資や消費者金融の参入に繋がる命名権売却は野球協約違反」と批判し「断固阻止する」と話した。結局、他球団のオーナーも同調、コミッショナーも撤回を求める等の騒動に発展し、2月5日には、永井社長が「球団の売却は全く考えていません」と否定した。これで表面的には収束したものだと思っていたが、これがスタートだったことが明らかになるのは後年だった。

【明らかになった近鉄球団の経営難】

 近鉄球団の経営難は数年前から囁かれていた。近鉄本社はバブル崩壊の後始末に苦しみ、赤字のグループ企業については、会社の解散などの整理を行い、沿線外企業などを中心に他社への経営譲渡や解散を行っていた。本社は経費削減が徹底され、本社業務の切り分けにより分社化も検討されていた。当然、赤字を生み出すだけの球団は売却のターゲットになっていた。
 当時、知人の近鉄社員と何度か話したことがあった。「確かに大阪ドームに本拠地を移して赤字は倍になった。でも、近鉄グループにとって球団の赤字は微々たるもの。持っている宣伝価値はもちろん、こういう時だからこそ社員が一丸となるシンボル的存在として価値があるんだけど、今回ばかりはね…」と苦笑した。グループ社員から反発が出ているのだという。「とにかく経費削減、経費削減の嵐。本社の社員にしてみれば、コピーも裏紙を使っているのに『〇〇選手は何十億で契約』なんて聞くと面白くないやね」。かつて「選手は本社の一員であり社員の家族だ」という意識があり、本社と一体だった時代があった。選手の活躍に社員も沸き立った。この知人の話を聞いて「プロ野球の位置づけも時代とともに変わっているんだな」と感じていた時だった。

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