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#6 映画の感想!2023年6月編

こんにちは!おりんです。
最近暑いですね~。ここ最近卒論や求人探しで忙しくて更新できていませんでした。毎週投稿は厳しいかもですが、引き続きnoteは続けるのでよろしくお願いします!

さて、今回は6月に観た映画の感想をつらつらと書いていきます。「波紋」と「怪物」どちらも心に残る作品になりました。
⚠ネタバレを含みます!触れたくない方は閲覧をおすすめしません。


①波紋

真っ赤な背景が印象的ですね~。

Filmarksで付けた評価⇒★4.2

登場人物全員「嫌だな…」と思う面があったものの、裏の気持ちや葛藤に共感するところも多かった。生きづらい日常、人間の愚かさ、依存心、善悪の境界線…無意識に差別したり罵倒したりするのが何とも現実的。依子はずっと気持ちが揺れ動いていたのではないか。

それぞれの言動に怒りを感じつつも、バックボーンを感じさせる描写があったため、共感せざるを得ない部分も。人との繋がりの中で生まれる歪みやズレは、きっと社会の残酷さや抱える闇がきっかけになっているのかもしれない。知らないふりをせず、抱え込みすぎず、向き合う時間が必要だと思った。

この作品の凄いところは、ファンタジーになり兼ねない展開に風刺や皮肉を効かせてリアリティを持たすことだと思う。依存、差別、恨み、葛藤…様々な感情が登場人物に入り交じっているから憎みきれないし、逃れられない現実に苦しくなる。

なので、所々の優しい言葉やラストの爽快感に救われた。ラストの依子は、何かから解放されたようだった。

いや~、ダークな内容でしんどさや怒りを感じる部分は多かったけど、風刺や皮肉を要所要所に効かせていて唸りましたね。登場人物、それぞれ「ほんと酷いな!」って思う部分あるんですけど、それが周りの人や環境が影響しているのもあり、共感できる部分もあって面白かったですね。

この作品、聴覚障害を持つ女性・珠美さんが出てくるのですが、かなり底意地悪いキャラクターだったの良かったです。変に美化しないで、「無意識に差別している」というメッセージを伝えながら、依子さん(筒井真理子)を脅かす存在であったというのが度肝を抜かれたというか。気持ちは分かるけど、結構ひねくれ者で怖かったですね。しかも、珠美さんを演じているのは実際に聴覚障害を持つ役者・津田絵理奈さん。津田さん、感情の表出が自然で、変に大きく豹変しないのが逆に怖くて良かったです。あんなに淡々と追い詰められたら凍りつきそう…(笑)

周りの人物の身勝手さ、宗教の依存性と生活に希望がなかなか見出せないので途中で辛くなるときもありましたが、最後依子さんが解き放たれたようにフラメンコを踊るシーンで爽快感が凄かったですね。自分らしく生きようという意志と真っ直ぐさが見えて救われました。フラメンコかっこよかったです。

今まで観た荻上直子さんの作品よりダークだな(川っぺりムコリッタも多少影はあったけど)とは思いつつ、惹き込まれてとても面白かったです。

②怪物

大きなタペストリーがありました!
シーンの切り取り方がいい…。

Filmarksで付けた評価⇒★4.5

人はそれぞれ何かを抱えながら生きていると思っているけれど、それが他人にどう見えているかは"解釈"にしかすぎないと感じた。
「自分のことは自分にしか分からない。」それは、子どもも大人もそうだと思う。

親の視点、教師の視点、子どもの視点。
それぞれ解釈も抱える想いも違う。それがぶつかるときに心の傷が抉られていく。学校でも職場でも起こりかねない恐ろしさ。自身の解釈・偏見が誰かを傷つけることがあるということを忘れてはならない。見覚えのある背景が所々あって終始苦しかった。

自分が良かれと思って、冗談で、からかいでやったつもり、のそのつもりが人生を壊すこともある。些細な言動ほど、実はナイフのように突き刺さるのかもしれない。抱えている想いは、それぞれ繊細で深いものだからこそ。

この作品は、人間・現実との向き合い方を誰かに問いかける作品だと感じました。人間が抱える真理って凄く奥深いものだと思います。それは単なる悩みではなく、渦巻くように続いているのかもしれない。構成や各登場人物の描写から、奥底にある想いや現実のしがらみを描きたかったのではないかと自分は考えていました。

だからこそ、今後も誰かに「優しくありたい」「向き合いたい」と涙が止まらなかった。後半の抱える想いに寄り添う言葉と、一筋の希望に涙しました。

ただ、正直最後の最後で「これで終わり?」と感じてしまい。一筋の希望は大切だけど、そこでぼんやり終わっちゃうのか…と。最後のみ個人的に引っかかってます。

でも、今までに無いくらい涙が溢れてしまった。それくらい、世の中は不条理で、人間の奥底にある真理は多くて、何より人を大切したい優しくありたいと強く思いました。

6/10(土)追記:正直、観た時はなぜその先が描かれずぼんやり終わってしまったのか…?と疑問に感じていたが、これは、視聴者に問いかけるラストなのかもしれないと思った。

様々な捉え方ができる点から、「このラスト、あなたはどう思いましたか?」「湊と依里に対して、どう思いましたか?」と問いかけているのかも…と改めて感じました。

もうね…今までにないくらい涙が溢れてしまった。号泣ではなくて、ずっと涙が流れていました。人間ってなんだろうって。現実にどう向き合えばいいだろうって。色々考えて泣きましたね。

人間が抱える真理って、考えている以上に奥深いんだと思います。それは単なる悩みではなく、渦巻くようにずっと続いているのかもしれない。奥底にある想いや現実のしがらみを描きたかったのではないか、と自分は考えていました。構成や各登場人物の描写から。

ここからは、ふせったーにも書いたのですが「怪物」の映画とパンフレット、シナリオブックを読んでの自分の考えになります。一意見として捉えてくださると幸いです。

⚠一意見として捉えられる方は見てください↓↓↓↓↓↓
「怪物」鑑賞後、この作品についてじっくり考えたいと思い、パンフレットとシナリオブックを購入しました。2冊読んで思ったのは…やっぱりこの作品で伝えたいのは単純なものや鮮明に現われているものではなく、もっと深いところにあるものだと思いました。それで自分がこれかな…?これかもしれない?と考えたのが「人間の心」

「いじめや差別といった社会問題」、「虐待や親子の距離感」、「マイノリティ」、「価値観」…など問題点として題材に取り上げられてはいます。ただ、これはあくまで起きている現実であって、特に強調したい部分ではないと思うんですよ。一方的な解釈・偏見は人を傷つけたり、場合によっては人生を崩したりすることがあるので、そういう意味では警鐘を鳴らしてるのかもしれないですが。

自分が「人間の心」を伝えたい点と捉えたのは、本編での構成や心理描写、パンフレットの中で坂元裕二さんが述べていた言葉からです。

本編は、湊の母の視点・保利先生の視点・湊と依里の視点で描かれます。それぞれの視点、それぞれ抱えている想い。視えていることが真実とは限らないし、抱えている想いは自分にしか視えない。目に視えることから捉えた・考えたことは"解釈"にしかすぎません。そして、自分の内心は、自分にしか分かりません。湊、保利先生、湊の母、伏見校長…相手に視える姿と自分に視える姿は違っていました。自身の解釈や偏見で決めつけ、正論化するのは、人を苦しめることになりかねないと思います。

また、坂元裕二さんはパンフレットでこのように述べていました。

「"視えていない"という視点を出発点として(脚本を)書いた」

自分は、大学で4年間心理学を学んできたのですが、相手の心を読むことはできず、表面に現われている想いが全てではないことを学びました。人の内心はもっともっと深いところにあって、全て相手から視えるわけではないのです。

坂元裕二さんと是枝裕和監督がパンフレットで述べていましたが、映画「怪物」の当初のタイトルは「なぜ」なぜだろう、どうしてだろう、どうしてそうなったのか。その「なぜ」は、視える事実もそうだし、視えない真実もそう。ただ、今作で特に伝えたいのは"視えない真実"のほうではないかと思います。"視えない真実"はおそらく、たくさんあるので。

なので、この作品は何も知らずに観たかったと心の底から思いますね。カンヌ受賞の件で題材の一部分を知りましたが、映画を観てからこの題材が本筋ではないと感じたんです。非常に繊細な題材であるため、慎重に取り上げなければならないし美化してはいけないですが、この作品の内容に対して「これは~だ!」と決めつけるのも違うのではないでしょうか。

ラストに関しては、湊と依里からしたら希望かもしれないとシナリオブックを見て改めて感じました。湊と依里のラストシーンは、本編を観てもシナリオブックを見ても楽しそうで、嬉しそうな様子でした。2人で幸せな道を見つけて欲しいとも思うラストでした。一方、湊の母や保利先生…といった周囲の人々からすると、希望あるラストではないと考えました。むしろ絶望的だろうと。この先は描かれていないので、自分の解釈にすぎませんが…。

正直、観た時はなぜその先が描かれずぼんやり終わってしまったのか…?と疑問に感じていたのですが、このラストは希望とも絶望とも捉えられると思います。これは、視聴者に「このラスト、あなたはどう思いましたか?」「湊と依里に対して、どう思いましたか?」と伝えているのかもしれない。

この作品を観て、自分は中盤あたりから涙が止まらなかったのですが、それは「解釈や偏見で人を判断したくない」「視えない真実がまだまだありふれてる」と強く感じたのと、「人に優しくありたい・持っている意志を尊重したい」と決心したからなのかと振り返りました。

長々と語りました。ここまで見てくださりありがとうございます…!

次回は7月編。「1秒先の彼」と「逃げきれた夢」について語ります。先行上映で「658km、陽子の旅」を観ましたが、こちらはまた別な投稿で。

以上、第6回の投稿でした。最後まで観てくださり、ありがとうございました!

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