【読書感想文】此の世の果ての殺人
荒木あかね(2022).『此の世の果ての殺人』.講談社
発想が良かった。終末世界での殺人事件解決は、ありそうでなかった。(と思う)
というか、江戸川乱歩賞って〝こういう感じ〟も有りなんだという印象。いわゆる「ライト文芸」っぽい。けど、世界観や終末を迎えた人たちの描写に妙に説得力があったのでぐいぐい読めてしまった。
個人的に、ミステリーは犯人の動機が気になって読んでいるところがある――加えて、事件を追いかける側にも深い事情があるとなお好み。そういう意味では、ちょっとだけ肩透かしだったのかも。狂ってしまった世界にいる狂った人。コイツが犯人だった嫌だなぁと思っていたのが当たってしまったのは本音。
それでも、終わりがある世界での思いやりだったり投げやりだったり、キャラクター同士のやり取りは刺さるものがあった。トリックや謎解きうんぬんのミステリーというよりは、終末世界を生きるキャラクターたちのロードムービーとして楽しかった。最後ちょっと爽やかだったのも良い。