『"ゲームをするとバカになる"』を調べてみた
クイズ:
彼の名前はジャスティン・ローゼンスタイン。どういう人だ?
答えは本文
※写真は https://elcomercio.pe/tecnologia/redes-sociales/facebook-inventor-likes-borra-app-miedo-adiccion-noticia-463714-noticia/
より
1.ゲームをするとバカになる"は本当なのか
まずはPRESIDENT 2019年2月4日号の記事から
"ゲームをするとバカになる"は本当なのか
2カ月にわたり「一日30分」プレイによると
枝川 義邦早稲田大学リサーチイノベーションセンター教授の記事
https://president.jp/articles/-/27995?page=1
によると
「スーパーマリオ64」で空間認知、記憶、戦略が増大
結果として、ゲームをしているときには、特に海馬や前頭前野の働きが活発になることがわかりました。海馬は、記憶を司る部位。また、前頭前野は社会性や計画性、戦略を司っています。すなわちゲームには、記憶力や計画性、戦略性を高める効果が期待できるというわけです。
さらに、小脳で神経細胞やそのまわりの組織の層が厚くなっていることもわかりました。小脳は身体の運動を司る脳部位なので、ゲームをすることで身体のいずれかの運動機能にいい影響を与えるといえそうです。
「ゲームでボケ予防」という取り組みもあります。例えば、同時並行で物事を進める料理のような作業では、記憶や認知、戦略性などの高い情報処理を行っています。認知症を患うとそれが難しくなるわけですが、ゲームは関連する脳の機能を高めてくれる。「ボケ予防にゲーム」は一理あるというわけです。
さらに、ゲームと脳の関係で注目すべきなのが、ドイツのマックスプランク研究所が行った実験です。日本でもブームになった「スーパーマリオ64」を2カ月にわたり一日30分プレイした人について、空間認知、記憶、戦略、手の運動技能を司る脳の海馬、前頭前野皮質、小脳において、神経細胞等が集まる部分が増大していることが明らかとなりました。
ただし、この記事の最後はこんな風に締めくくっています。
WHO(世界保健機関)は2018年1月に「ゲーム依存症」を病気として認定しました。ギャンブルやタバコ、アルコール依存と同じように、あなたのQOL(生活の質)を著しく下げる可能性もあるので、注意しながら楽しみましょう。
2.『ゲーム依存症』を調べてみた。
ゲーム依存症 ~今話題の健康ワード!
- 日本成人病予防協会より
https://www.japa.org/tips/kkj_1903/
ゲーム依存症とは
ゲーム依存症とは、人間関係や健康面に問題が生じても制御がきかずゲームに没頭し続け、日常生活に支障をきたすことです。
以前は、10~20代の子どもや若者の依存として認識されていましたが、スマートフォンの普及とともに、最近では30~40代の患者が増加してきていると言われています。
診断基準
WHOは今回のICD(国際疾病分類)の改訂で、以下の診断基準の諸条件が当てはまると、「ゲーム依存症」と診断される可能性があると明示しました。以下の3つの症状が1年以上継続している場合、診断されます。
●ゲームの時間や頻度をコントロールできない
●日常生活でゲームを最優先にする
●問題が起きてもゲームを継続、エスカレートさせる
ゲーム依存症の健康被害
①視力低下・肺活量減少
長時間画面を見続けることで視力低下が報告されています。また、運動量が減ることから、肺活量の減少も見られます。
②不眠・睡眠障害
ゲーム依存症になることで、ゲームに関連する情報を脳が認識したときに興奮しやすくなり、なかなか寝付けず不眠や睡眠障害になりやすいという報告があります。
③イライラ感・衝動性
イライラしやすくなったり衝動的になりやすいとの報告もあります。また、ゲーム依存症になると、ゲームをやらないと禁断症状が生じ、「ゲームしたいのにできない」ことに苛立ち衝動的な行動をとる場合もあります。
以上3点の他にも、昼夜が逆転し朝起きることができずひきこもりになったり、集中力や注意力が低下し学力が低下するとの報告もあります。
3.ゲームが子どもの脳に及ぼす影響とは?
DIAMOND onlineの記事より
https://diamond.jp/articles/-/274045?page=5
スマホ依存で1日2時間の勉強がムダに!ゲームが子どもの脳に及ぼす影響
榎本博明:心理学博士、MP人間科学研究所代表
2021.6.16 3:55
ゲーム依存は脳にどんな影響を与えるか
子どもたちの知的発達にかかわる問題として、ゲームが取り沙汰されることが多い。電車に乗っていると、スマホでゲームに熱中している人をよく見かける。それも、子どもではなく大人を見かけることも多い。子ども時代、あるいは若い頃から習慣になっているのかもしれない。ゲームには、神経伝達物質ドーパミンを放出させ脳を興奮させる効果があるため、中毒性が高く、依存症を引き起こしやすいと言われる。
実際、ゲーム依存で治療を受ける者も非常に多くなっており、2018年にWHOがゲーム依存を治療が必要な精神疾患と認定し、ゲーム障害として国際疾病分類に追加した。大人も依存症に陥るほどなのだから、まだ自己コントロール機能を担う脳の部位の発達途上にある子どもが依存症に陥るリスクは非常に大きい。
10歳から17歳の青少年を対象に内閣府が2019年に実施した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、小学生の81.7%、中学生の76.4%、高校生の78.7%が、スマホやタブレットなどでゲームをしている。つまり、青少年の約8割がゲームをしている。もしゲームが知的発達を阻害するとしたら、これは無関心ではいられないはずだ。
では、ゲームは脳の発達にとってどれくらい有害なのだろうか。
ゲーム後30分は脳が働かない状態に
脳科学的手法で認知機能の発達を研究している川島隆太と横田晋務たちの研究グループは、5歳から18歳の子どもや若者を対象に、3年間の間隔を空けて脳の画像を撮影し、知能も測定して、ゲームをする時間が脳の形態や認知機能に与える影響について検討している。
その結果、ゲームをする時間が長いほど、語彙力や言語的推理力に関連する言語性知能が低いことが明らかになった。
また、驚くべきことに、長時間ゲームをする子どもの脳は、脳内の各組織の発達に遅れがみられることがわかった。脳画像からは、記憶や自己コントロール、やる気などを司る脳の領域における細胞の密度が低く、発達が阻害されていることが明らかになった。
さらには、ゲームで長時間遊んだ後の30分~1時間ほどは、前頭前野が十分働かない状態にあり、その状態で本を読んでも理解力が低下してしまうということを示すデータも報告されている。ゲーム中には、物事を考えたり自分の行動をコントロールしたりするのに重要な役割を担う前頭前野の血流量が少なくなり、機能が低下してしまうのだろうという。
読書によって語彙力や読解力が高まり知的発達が促進されるということや、読書することによって神経繊維の発達や言語性知能の向上がみられることが実証されているものの、ゲームを長時間してしまうと、その後に読書をしても、その効果が減ってしまうというのである。
このように、ゲームが知的発達を阻害することが、脳画像によっても実証されているのである。言語性知能が低くなり、記憶、自己コントロール、やる気などと関係する脳領域の発達に遅れがみられるのでは、学習がスムーズに進むとは思えない。
中高生のスマホ依存・ネット依存が進んでいる
厚生労働省の研究班が2012年に中高生を対象に実施した調査では、ネット依存を強く疑われる者が中学生6.0%、高校生9.4%であり、合わせて52万人と推定された。それでも相当高い数値となり注目されたものだが、それから5年後の2017年に実施された調査では、中学生12.4%、高校生16.0%であり、93万人と推定された。5年間で、ネット依存を強く疑われる中高生が8割近くも増えているのである。
ネット依存にはゲームをする者が多く含まれていると思われるが、ゲームばかりでなくスマホをいじること自体の弊害についても、世の親は耳にする機会が多いことと思う。
先ほどの川島と横田の研究グループは、小学校5年生~中学校3年生を対象に、スマホの使用時間と学業成績の関係についての調査を行っている。
その結果、スマホの使用時間が長いほど成績が悪いことが判明した。恐るべきことには、1日2時間以上勉強していても、スマホ使用が4時間以上になると、スマホをやらないけれども勉強時間が30分未満の子より成績が悪いのだ。
ここからわかるのは、いくら勉強しても、スマホをしょっちゅういじっていると、それが帳消しになってしまうということである。ちゃんと長時間勉強しているから大丈夫と安心し、スマホ使用を容認していると、取り返しのつかないことになりかねない。
スマホ依存で1日2時間の勉強がムダになるときも
では、なぜスマホを長時間使うと勉強した効果がなくなってしまうのか。
第一に、すでに説明したように、ゲームをすることにより脳の発達上の問題が生じていることが関係していると考えられる。ゲームで長時間遊んだ後の30分~1時間ほどは、前頭前野が十分働かない状態にあり、その状態で本を読んでも理解力が低下してしまうことがデータによって示されている。ゆえに、勉強をしても頭に入らない。
第二に、ゲームだけでなく、LINEなどの通信アプリの問題もある。川島・横田たちは、同じ調査を1年後にも行い、データを比較しているが、その結果、LINEなどの通信アプリをしていると成績に悪影響が出ることがわかったのだ。
その理由として、LINE等をやっている子は、勉強しようと机に向かっても、頻繁にメッセージが来てしまうため、勉強に対する集中力が切れてしまうこと、さらには相手から返事が来ないと、なぜ来ないのかが気になってしまい集中力がなくなることがあげられている。
4.ジョブズとゲイツが我が子のテクノロジー使用を厳しく制限した理由とは?
アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、iPadを自分の子どものそばに置くことすらしなかったそうである。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツも、自分の子どもには14歳になるまでスマホを持たせなかったという。
ジョブズとゲイツが我が子のテクノロジー使用を厳しく制限した理由
NEWS PICKS 2017/11/12
https://newspicks.com/news/2620935/body/
ビル・ゲイツの場合
テクノロジーは、ビル・ゲイツを世界一の大富豪にした。ゲイツの3人の子どもたちも父親と同じようにテクノロジーの恩恵を受けているはず、と誰もが考えるだろう。
だが、マイクロソフトの創業者は、テクノロジーの害から子どもを守ることのほうに関心があったようだ。
イギリスの『ミラー』による2017年4月のインタビューによれば、ゲイツと妻のメリンダは、子どもたちがテクノロジーに触れる機会を厳しく制限していたという。携帯電話は14歳になるまで持たせず、夕食のときにはとりあげていたとゲイツは説明している。
「時間を決め、それ以降はスクリーンを見てはいけないとすることも多かった。うちの子たちのケースでは、そのおかげで夜更かしせずに眠ることができた」とゲイツは『ミラー』に話している。
「ご承知のように、テクノロジーは、たとえば宿題をするときや友だちと連絡をとるときには、うまく使えばおおいに役に立つ。だが、使いすぎてしまうこともある」
スティーブ・ジョブズの場合
アップル創業者のスティーブ・ジョブズも、我が子がテクノロジーに触れる機会を最小限に抑えていた。『ニューヨーク・タイムズ』のニック・ビルトンによれば、ジョブズ家もゲイツ家と同じような環境だったという。
「iPad」発売直後の記事をめぐってジョブズから苦情の電話がかかってきたときに、ビルトンはジョブズに対し、あなたの子どもたちはこの大人気の新製品をどんなふうに楽しんでいるのかと訊ねたという。
「うちの子たちは使っていない」とジョブズは答えた。「うちのなかでは、子どもたちのテクノロジーの使用量を制限しているからね」
ビルトンはこの会話をきっかけに、ほかのテック業界の巨人たちが我が子に対して設けている家庭内の制約を詳しく調べはじめた。その結果、テック業界を代表する有力者のあいだでは、驚くほど厳しい制約があたりまえのように見られることがわかったのだ。
『ワイアード』創業者のクリス・アンダーソンはビルトンに「うちの子たちは、私や妻をファシストだと言って非難する。テクノロジーのことを心配しすぎている、そんなルールがある友だちはひとりもいない、と言われるよ」と語った。
ツイッターの共同創業者エバン・ウィリアムズとその妻は「2人の幼い子どもたちには、iPadのかわりに、何百冊もの本がある(もちろん、紙の本だ)。いつでも好きな本を選んで読むことができる」と説明している。ほかにも、多くのテック系著名人が同様のルールを口にしている。
伝説の創業者たちが心配する訳
彼らはテクノロジーをつくった張本人だ。それならば、テクノロジーについてよく知っているはずだ。こうした伝説の創業者たちは、何をそれほど心配しているのだろうか。
それは、自分の子がiPadの画面に夢中で見入っているのを目にしたときに、あなたが感じるであろう不安と同じものだ。ネットいじめ、不適切なコンテンツ、スクリーンを見ている時間のせいで、もっとタメになる活動の時間が減ること。さらには、デバイスがもたらす虚ろな楽しみの依存症になる危険もある。
テック業界のパイオニアたちが、私生活では厳格なルールを設けている。
その事実は警戒心を呼び起こすものだが、何よりも気がかりなのは、彼らを駆りたてている不安の種類ではなく──昨今では、ほぼすべての親が子どものネット使用時間に懸念を抱いている──その不安の大きさだ。
現代の基準からすると、ジョブズ家とゲイツ家は偏執的にも見える厳しいルールを設けている。
だが、彼らはなんといっても、ガジェットのはたらきや、それがもたらす害の大きさをもっともよく知る立場にいる人たちだ。テクノロジーの天才ではない私たちよりも、彼らのほうが正しくリスクに対処している可能性は、おおいにあるだろう。
また『ガーディアン』が先ごろ報じたように、彼らほど有名ではないにしても、やはり大きな影響力を持つ科学技術者たちの多くも、同様の不安を抱いている。そうした技術者たちは、テック系企業のトップに比べ、現状への加担に伴う金銭的な利害関係が小さいため、より率直に不安を口にする傾向がある。
たとえば、フェイスブックの「いいね」ボタンの開発に貢献したある女性は「自身のフェイスブックのニュースフィードを消去するウェブブラウザをインストールし、自分でフェイスブックページを閲覧しなくてもすむように、ソーシャルメディア・マネージャーを雇った」という。
どのような制約を設けるべきか
こうした諸々の事実を知り、家庭内のルールを見直してみたくなった人もいるかもしれない。では、どのような制約を考えればいいのだろうか。
こちらの『ガーディアン』の記事では、さまざまなテック業界関係者の対処法が詳しく紹介されている。
厳しい制約に対する反動を避ける、子どもに衝動をコントロールすることを教える、テクノロジーの創造的な利用と受動的な消費の区別をつける、といった重要なテーマが扱われている。
ゲイツ家やジョブズ家、そのほかのテック系著名人たちの賢明さに共感し、彼らを見習いたいと思うのなら、以下のようなルールを検討してみるといいだろう。いずれも、テック業界を代表するビッグネームたちの家庭で実施されていると報じられたものだ。
● 子どもが14歳になるまで携帯電話を持たせない(一部の家庭では、その後もデータプランの使用は控えている)
● 家族の食卓での使用を禁止する
● 就寝時間のかなり前から、デバイス使用を禁じる時間を設定する
● 平日については、スクリーンを見ていい時間を厳密に定める(年少の子どもに関しては、全面的に禁止する場合もある)
● 使用を認めるソーシャルメディア・サービスを慎重に検討する(少なくともスナップチャットであれば、若気の至りで書いたことが一生残ってしまうことはない)
● 子どもが寝室でデバイスを使うことを禁止する
Why Steve Jobs and Bill Gates Both Severely Limited Their Kids' Tech UseThey built our tech-obsessed world, but they wanted something different for their own kids.
https://www.inc.com/jessica-stillman/why-steve-jobs-bill-gates-both-severely-limited-their-kids-tech-use.html
執筆:Jessica Stlllman/Contributor, Inc.com、翻訳:梅田智世/ガリレオ
5.どうしてスマホがこれほど魅惑的な存在になったのか?
アップルの幹部はスマホを子どもに与えない。脳科学を元にIT企業が仕掛けた「罠」
Forbes JAPAN ビジネス 2021/01/27 08:00
https://forbesjapan.com/articles/detail/39067/1/1/1
どうしてスマホがこれほど魅惑的な存在になったのか、その理由を知りたい場合には脳内のドーパミンに注目するといい。ドーパミンはよく「快楽」を感じたときに分泌される報酬物質と言われるが、実はそれだけではない。ドーパミンの最も重要な役目は私たちを元気にすることではなく、何に集中するかを選択させることだ。つまり、人間の原動力とも言える。
報酬システムを激しく作動させるのは、お金、食べ物、セックス、承認、新しい経験のいずれでもなく、それに対する期待だ。何かが起こるかもという期待以上に、報酬中枢を駆り立てるものはない。1930年代の研究では、レバーを押すと餌が出てくるようにした実験で、ネズミたちは時々しか餌が出てこないようにしたほうがレバーを押す回数が多かった。いちばん熱心にレバーを押したのは、餌が出てくる確率が3~7割のときだった。
その20年後には、サルによる実験も行われた。ある音が聞こえると、ジュースが少し出てくるようになっている。サルのドーパミン量は、音が聞こえた時点で増加し、むしろジュースを飲んでいるときよりもずっと多かった。この実験でわかるのは、ドーパミンが快楽を与える報酬物質ではなく、何に集中すべきかを私たちに伝える存在だということだ。音が聞こえても、時々しかジュースが出てこないほうが、ドーパミン量がさらに増えることもわかった。2回に1回という頻度のときに、最もドーパミンが放出された。
ネズミに見られた現象がサルにも見られたわけだが、同じことが人間にも言える。お金がもらえるカードを被験者に引かせてみる。毎回お金がもらえるとわかっていると、確実にもらえるかわからないときほどドーパミンは増えない。ネズミやサルとまさしく同様に、ドーパミンが最も増えるのは2回に1回の頻度だった。つまり、脳にしてみれば、もらえるまでの過程が目当てなのであって、その過程というのは、不確かな未来への期待でできている。
なぜ脳は不確かな結果のほうに多くのドーパミン報酬を与えるのだろうか。最も信憑性が高い説明はこうだ。「ドーパミンの最重要課題は、人間に行動する動機を与えることだから」
「もしかしたら」がスマホを欲させる。
あなたの祖先が、たまにしか実のならない木の前に立っている姿を思い浮かべてほしい。実がなっているかどうかは地上からはわからないので、木に登らなくてはいけない。登ってみて何もなかったら、別の木にも登って探すことが大事だ。ハズレを引いてもあきらめない人は、そのうちに高カロリーの果実というごほうびをもらえる。それで生き延びる確率も高まる。
不確かな結果でドーパミンの量が急増するのは、新しいものを前にしたときと同じ理屈なのだろう。報酬を得られるかどうかわからなくても、私たちは探し続ける。この衝動により、食料不足の世界に生きた祖先は、そこにある限られた資源を発見し活用してきたのだ。
人類が狩猟生活を中心にしていた何万年も前から、人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛。現代ではそれが問題を引き起こしている。例えば、スロットマシーンやカジノテーブルから離れられなくなる。ギャンブルは長い目で見れば損をするとわかっていても、やってしまう。確かに、純粋な娯楽としての魅力はある。だが、適度な距離を取れずに、ギャンブル依存症になる人も確実にいる。脳の報酬システムが、不確かな結果にこんなにも報酬を与えてくれるのだから、ギャンブルの不確かさもとてつもなく魅力的に思えるはずだ。「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」そう考えるのだ。
このメカニズムをうまく利用しているのは、ゲーム会社やカジノだけではない。チャットやメールの着信音が鳴るとスマホを手に取りたくなるのもそのせいなのだ。何か大事な連絡かもしれない──。たいていの場合、着信音が聞こえたときの方が、実際にメールやチャットを読んでいるときよりもドーパミンの量が増える。「大事かもしれない」ことに強い欲求を感じ、私たちは「ちょっと見てみるだけ」とスマホを手に取る。しかもこれを頻繁にやっている。起きている間じゅうずっと、10分おきに。
報酬中枢を煽るSNS
ゲーム会社やスマホメーカー以外にも、不確かな結果への偏愛を巧みに利用している企業がある。それはソーシャルメディア、SNSだ。フェイスブック、インスタグラムやスナップチャットがスマホを手に取らせ、何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を起こさせる。その上、報酬システムがいちばん強く煽られている最中に、デジタルな承認欲求を満たしてくれるのだ。
あなたの休暇の写真に「いいね」がつくのは、実は、誰かが「親指を立てたマーク」を押した瞬間ではないのだ。フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを保留することがある。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。刺激を少しずつ分散することで、デジタルなごほうびへの期待値を最大限にもできる。
SNSの開発者は、人間の報酬システムを詳しく研究し、脳が不確かな結果を偏愛していることや、どのくらいの頻度が効果的なのかを、ちゃんとわかっている。時間を問わずスマホを手に取りたくなるような、驚きの瞬間を創造する知識も持っている。「『いいね』が1個ついたかも? 見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」と同じメカニズムなのだ。
このような企業の多くは、行動科学や脳科学の専門家を雇っている。そのアプリが極力効果的に脳の報酬システムを直撃し、最大限の依存性を実現するためにだ。金儲けという意味で言えば、私たちの脳のハッキングに成功したのは間違いない。
シリコンバレーは罪悪感でいっぱい
極めてテクノロジーに精通している人ほど、その魅力が度を過ぎていることを認識し、制限した方がいいと考えているようだ。ジャスティン・ローゼンスタインという30代のアメリカ人は、自分のフェイスブックの利用時間を制限することに決め、スナップチャットのほうはすっぱりやめた。依存性ではヘロインに匹敵するからと言って。スマホの使用にブレーキをかけるために、本来は保護者が子供のスマホ使用を制限するためのアプリまでインストールした。
ローゼンスタインの行為が興味深いのは、彼こそがフェイスブックの「いいね」機能を開発した人物だからだ。つまり、「立てた親指」の立役者は、自分の創造物が度を過ぎて魅力的だと感じているのだ。あるインタビューでは、後悔したようにこう発言している。「製品を開発するときに最善を尽くすのは当然のこと。それが思ってもみないような悪影響を与える──それに気づいたのは後になってからだ」
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