自宅でのお茶のもてなし
和室がある築90年の町家に暮らしている。
引っ越しをしてから徐々に茶道具を集め、お茶を点てて飲むことができるくらいは揃ってきた。
同僚に茶の湯の話をすると「茶道って怖い。けれども、少しだけ興味がある」と声をかけてくれた。
たしかに、いきなり稽古場を探すのはハードルが高い世界である。カルチャーセンターなどの空間では味気ない体験に思われる可能性もある。
そこで、立派な茶室があるわけではないが、自宅に招き茶を差し上げた。
何度か友人を招いてお茶を点ててはいたが、道具を一式用いて、薄茶を一服差し上げる一連の点前を行うのは初めてだった。
いくつかのお菓子や季節の花を、全体のコーディネートを考えながら用意することは、新鮮であり難しくもあり楽しいことだと実感した。
季節、天気、客の趣向など考える要素はたくさんあり、それらを同時にうまく表現することは精進していくしかないと気付く。
茶の湯の魅力を伝えたいが、幅が広すぎて伝えたいことがなかなかまとまらない。客にうまく伝わったかわからないなと不安だった。
後日、「所作がきれいだった」との感想をいただいた。正直、いつまでたっても型を覚えられず頭で考えながら動いている私は、とても意外であり嬉しくもあった。
苦手意識のある「美しい所作」への意欲が生まれ、稽古で意識していきたい。
茶の湯の世界は、奥深い。
自分にとっても相手にとっても、新たな気付きの時間となっていれば嬉しい。