パワーポイントを使った説得力のある提案書の作り方【企画書編:3】
イベントづくり先生のオーガナイザーM(@organizermanual)です。
前回、前々回と企画書編として基本的な考え方やワード企画書の書き方について説明してきました。
未読の方はぜひこちらを先にお読みください。
第1回は企画書と提案書の違いを、第2回では初心者がいきなりパワーポイント(パワポ)等のプレゼンソフトで企画書を作るべきではないということをお伝えしました。
今回は、企画書編の仕上げとして過去2回で避けたパワポを使った提案書の作り方をご紹介します。
提案書は相手から何らかの回答を引き出すための説得的コミュニケーションツールであり、それを作るのにはやはりパワポをはじめとしたプレゼンソフトに一日の長があります。
イベントづくりは、ある意味では関係者に対する説得の連続であるとも言えるので、確かな提案スキルはあなたの強力な武器になります。
ぜひこの機会に触りだけでも身に着けてみてください。
スライド形式の提案資料づくりに適したソフト
この記事では便宜的に「パワポ」企画書と呼んでいますが、より正しく言えばスライド型のプレゼン資料となります。このような資料を作るソフトの代名詞といえるのが「PowerPoint」というMicrosoft Officeが提供しているプレゼンソフトです。
その他に使えるアプリとして、Mac OS/iOS向けにはAppleの「Keynote」があります。また、Googleも無料オフィスアプリのシリーズの中で「Google Slides」を提供しています。更に最近では「Canva」のプレゼンテーション資料作成ツールも非常に機能が充実し使い易くなっています。
ただ、これもワードと同様に、共同作業の多いイベントづくりでは、利用者の多い「PowerPoint」が使える環境があるのであれば、なるべくこちらで作っておくのが無難だと思います。
パワポを使ったプレゼン資料づくりの極意
まず最初に、パワポを使って資料を作る時に絶対に守って欲しい3つの極意をお教えします。世の中の見づらい、ダサい、分かりにくいパワポ資料の多くがこの3点を外していることがその原因です。
1.シンプル・イズ・ベスト
パワポ提案書は、とにかくシンプルであることを心掛けてください。テキストは一文字でも少なく、色数やフォントの種類も可能な限り少なく、そして図表や画像も可能な限り情報量が少ない方が、見やすく伝わりやすい提案書になります。
「PowerPoint」とは意訳すると「強調したい所」という意味であり、情報の選別と省略、そして強調こそがパワポ資料づくりの核心です。
2.1ページ1テーマ
パワポでは、1ページにいくつものテーマを集約しないでください。複数テーマがある場合は、テーマの数だけページを作るのがセオリーです。
また、イベントの出演者が4人いるような場合は、テーマを「出演者」として4人紹介してもOKですが、各出演者を深掘りして文字が増えそうな場合は出演者毎にページを分けてページ当たりの情報量を減らすようにします。
3.余白を大切に
最も大切なこととして、各ページにはしっかりと余白を残すことを意識してください。
メッセージを強調しようとすると文字のサイズを大きくしがちですが、大きな文字がたくさん詰まっているより、中程度のサイズの文字を余白を残して配置する方が、その個所はしっかりと読み手に伝わることを理解しましょう。
以上3点を意識すると、まさにこの方のツイートの通りになります。
効果的なパワポ提案書を作る手順と具体例(作成サンプル)
次に、読み手に伝わるパワポ資料の作り方をご説明します。
まず、絶対にやってはいけないのは表紙から順に1ページずつ完成させていくことです。パワポ提案書はプレゼンとセットで提示することになるので、プレゼンの流れを想定し、それに合うように意識して作っていきます。
1.全体のページ構成を考える
最初にすることは、資料の全体構成をつくることです。プレゼンの流れを念頭に、先に作ってあるワード企画書の中から、どのテーマをどんな順番で伝えるのが効果的かを考えます。
また、同時に、ワード企画書には挙げたけれど、次のプレゼンで敢えて伝える必要のないことは省略します。
そして、↓のようにどのページにどんなテーマを載せるかを形にします。
これは表紙と問い合わせ先を除いて10ページで構成したページ構成例です。PowerPointファイルもUPしておくのでテンプレートとしてご活用ください。
ページ数も可能な限り少ない方が良いので、最初は10ページ以内に収めることを意識して、どうしても必要な場合に限って、ページを増やすようにしておくと良いでしょう。
2.各ページの要素をワード企画書からコピペする
全体のページ構成ができれば、次に各ページに掲載する内容を決めていきます。各ページに載せる内容の正解は先に作ったワード企画書にあります。
配置したテーマに対応するワード企画書の文章を各ページにコピー&ペーストしてくればOKです。そして、まずはその文章の中から明らかに不要な個所を削除し、残った文章の中で更に重要なことだけに絞り込んで、少しずつ文字を削っていきます。
3.可能な限り文字数を削って図表や画像に置き換える
各ページにコピー&ペーストし、厳選した文章を意味が変わらない範囲で可能な限り短くしたり、図表や画像でも伝えられる文章は積極的に置き換えていきます。
例えば、イベント会場は写真に置き換えやすく、またその方がイメージが伝わりやすい代表例です。また、過去の動員実績なども数値を並べるよりグラフで表現した方が一瞬で理解できます。
この過程で、前段階でかなり厳選した文章は「キャッチコピー」「箇条書き」「補足説明」「画像」「図・表・グラフ」に変換され、更に情報が絞り込まれます。
4.配置を整理し、強調ポイントを装飾する
最後に、文字の配置やバランスを整え、また強調したい個所の文字色やフォントサイズを変えるなどの装飾を行います。ここでのポイントは先にも述べたように、余白を残し、装飾しすぎないことです。
特に、フォントの使い方は重要で、よほどの理由がない限り、1つの資料で使うフォントの種類は1つにしてください。文章の中で特定の個所や単語を強調したい場合も同じフォントのまま色やサイズを変えることで対応します。これだけで見た目が一気に洗練されます。
また、慣れるまでは色使いは3色までにしてください。モノトーンのベースカラーにキーカラー1色+ハイライト1色(原則はキーカラーの反対色)が一般的です。キーカラーは彩度を変えたグラデーション使いをしてもOKです。
パワポ提案書の作例解説&無料テンプレート
ここまでご説明したことを踏まえて、最後に実際に私がつくったパワポ提案書の作例を元にもう少し具体的な解説を加えます。
パワポの作例は↓にUPしておくのでテンプレートとしてご活用ください。
それでは最初のページから順に解説していきます。
作例解説
今回は「イベントづくり先生」のセミナー企画を実施するという仮定で、講義をして欲しい先生への登壇依頼という体裁になっています。
対バンやDJイベントの出演依頼、マルシェや即売会での出店(展)依頼、町のイベントでの来賓依頼等、共通するシチュエーションも多いはずです。
この形だけが正解ではないですが、ぜひ参考にしてみて下さい。
1頁:表紙
ベースにモノトーン、キーカラーにブルーを配しています。
2頁:論点整理
プレゼンの目的やどんなことを伝えるかを予め提示します。
3頁:開催目的
イベントのステートメント部分。ハイライトはピンクを使いました。
4頁:開催概要
日時・場所・費用・規模等。会場写真は目指す雰囲気が伝わり易いです。
5頁:内容
イベントの企画部分を提示します。企画毎にページを分けてもOKです。
6頁:タイムテーブル
イベントの時間軸を示すと企画が立体的に伝わります。
7頁:実績
講師依頼なので生徒数や過去の講師を列挙し信頼感を表現しました。
8頁:オファー
今回お願いしたいことやその際の条件を提示しています。
9頁:提案者情報
問い合わせ先を兼ねて自身のプロフィールを添えています。
以上、表紙を除いて8ページ構成のパワポ提案書となります。
提案書は何らかのリアクションを期待するものなので、相手がどう回答するか検討できる材料を過不足なく分かりやすく提示することが重要です。今回は講師の登壇オファーなので次のような材料を盛り込んでいます。
判断材料は提案の目的や相手によって変わります。例えば「会場を貸して欲しい」という提案ならば安全管理や運営体制、「協賛して欲しい」ということなら開催規模や動員の裏付けの重要性が増します。
この辺りの嗅覚は、何度も提案の機会を重ねて養っていくしかありません。
視線移動に気を付けよう
最後に、パワポ提案書を作るうえで意外と見落としがちな、しかしけっこう重要な「視線移動」について触れておきます。
大原則として、読み手の視線を迷わせないことを肝に銘じましょう。
そのページをパッと見た時に、どこから読み始めてどの順番で読めばいいかが一目で解ることが重要です。具体的には次の3点を押さえることです。
・必ず「左」と「上」からスタートする
・視線移動は一筆書きで
・視線を一定のルールで誘導する
先ほどの資料を例に説明します。
視線移動は①上から下、②左から右、③Z字型、④逆N字型の4パターンが基本です。全てのページをこのルールに沿って作っておけば、自然と読み易いレイアウトになります。
この事を理解して、最初に引用した厚生労働省の資料をみるといかに視線移動が多く、読み手が迷うことになるかが理解できるはずです。
個人的には、こうした読み易さは提案が通る確率にも影響すると考えています。誰しも「よくわからない提案」には乗りたくはありません。ぜひ、しっかりと意識しておきましょう。
まとめ
今回は、パワポをはじめとしたプレゼン資料作成ソフトを使った提案書づくりについて解説しました。
これまで述べてきたようにパワポ資料の神髄は協調と省略にあります。言い換えれば企画のすべてを伝えないということです。また、敢えて良くない言い方をすれば「企画をこちらの都合のように編集して相手を説得する」ということでもあります。
騙す意図をもって作られた資料は、あたかも真実らしく嘘を語ります。
それでは最終的に誰も幸せにならないので、あくまで誠実に、提案する相手のことを考えた協調と省略(直接関係のない事項を省いて判断し易くする等)を心掛けましょう!
次回からは、企画立案に関する総仕上げとして「ベンチマークとネットワーク」の重要性について説明します。
ぜひ、最後までお付き合いください!