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A012 ~演習で学ぶ有機反応機構解説~

疑問点などありましたら、どしどしコメントください!
一緒に学んでいきましょう。

それでは、『演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで』の解説部分を見ながら、『電子はマイナスからプラスに動く』の考え方に基づき、反応機構の流れを見ていきましょう。

A012 はビルスマイヤー反応です。 

オキシ塩化リンの存在下、アミドと活性芳香族化合物が反応して、芳香族化合物をアシル 化する反応です。 

この反応が特に有用なのは、本問題のようにDMF をアミドとして用いた場合です
DMF をアミドとして用いた場合には、Friedel-Crafts反応では困難であるホルミル基 (-CHO) の導入を行うことが出来ます。
Friedel-Crafts反応は、芳香環に置換基を導入する際によく用いられる反応ですが、塩化ホ ルミルが不安定であるため、Friedel-Crafts 反応によってホルミル化を行うことはできません

それでは反応機構を見ていきましょう。 

まず、オキシ塩化リンとアミドからビルスマイヤー試薬が生成するところから反応は始まります
オキシ塩化リン中のリン原子は、1つの酸素と3つの塩素 (どちらもリン原子より電気陰性度が高い原子) に電子を引かれているため、かなりプラスに帯電しています
もう一方のアミドに注目すると、窒素原子上の非共有電子対による押し込みの効果により、アミド中で最もマイナスを帯びているのはカルボニル基の酸素です。

プラスとマイナスが抽出できたところで、電子をマイナスからプラスに動かしましょう。
この反応系の中で最もマイナスを帯びているカルボニル基の酸素が、最もプラスに帯電しているオキシ塩化リン中のリン原子に求核攻撃します。 

ここでオキシ塩化リンから脱離した塩化物イオンは、オキシ塩化リンに求核攻撃したことで、打って変わって系中で最もプラスを帯びるようになった元 DMF のカルボニルの炭素に求核攻撃します。
その後、求核攻撃を受けたカルボニル基の炭素に結合する置換基の中で最も脱離能の高いジクロロリン酸が脱離し、ビルスマイヤー試薬が完成します。

ビルスマイヤー試薬が生成したところで、ジメチルアニリンがそのパラ位でビルスマイヤ 一試薬に求核攻撃をします。
ジメチルアミノ基は電子供与基なので、芳香環のメタ位とパラ位が電子豊富な状態となります
さらにメタ位とパラ位の中でも、周りに何も置換基が存在せず、立体的に空いたパラ位でジメチルアニリンは求核攻撃をするというわけです。

最後に、反応系を水でワークアップすることで、イミニウムカチオン部分が加水分解され、ホルミル化が完了します。

~重要ポイント~

ビルスマイヤー反応は、オキシ塩化リンとアミドからビルスマイヤー試薬が生成するところから反応が始まる。 
ビルスマイヤー反応におけるアミドに DMF を用いた場合には、Friedel-Crafts反応では困難であるホルミル基 (-CHO) の導入を行うことができる

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