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A001 ~演習で学ぶ有機反応機構解説~

『演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで』の解説部分を見ながら、『電子はマイナスからプラスに動く』の考え方に基づき、反応機構の流れを見ていきましょう。

この反応はエステルの加水分解です。

では、まずマイナスとプラスを探していきましょう。
この反応系に含まれる化学種の中で最もマイナスに帯電しているのは、水酸化ナトリウムの水酸化物イオンです。
一方で、最もプラスに帯電しているのはエステルのカルボニル基の炭素です。
カルボニル基の炭素は、炭素よりも電気陰性度が高い酸素原子によって電子を引かれているため、電子不足つまりプラスに帯電しています。

マイナスとプラスが見つけられたところで、『電子はマイナスからプラスに動く』にあてはめていきます。
マイナスの水酸化物イオンがプラスの電荷を帯びたカルボニル基の炭素に攻撃し、電子を引っ張っている酸素へ一度電子が動きます。
ここで生じた四面体中間体は不安定であるため、メトキシドイオンが脱離し、カルボン酸が生成します。

カルボン酸は酸性のプロトンを持っているため、塩基性水溶液中では脱プロトン化され、カルボキシラートアニオンとなることに注意してください。(実際にはナトリウムイオンと塩を形成している。)
カルボキシラートアニオンはマイナスですが、カルボニル基によって電子を引かれる分だけマイナスが弱くなっており、これ以上反応を起こすことはありません。
最後に、酸性水溶液で反応系をワークアップすることで、カルボキシラートアニオンはプロトン化されカルボン酸が生成しています。

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~ 重要ポイント ~

カルボニル基の炭素はプラスに帯電しており、マイナスの攻撃を受ける。
カルボキシラートアニオンはカルボニル基に電子を引かれている分だけマイナスが弱く、水酸化物イオンに反応性で劣る。

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