A011 ~演習で学ぶ有機反応機構解説~
疑問点などありましたら、どしどしコメントください!
一緒に学んでいきましょう。
それでは、『演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで』の解説部分を見ながら、『電子はマイナスからプラスに動く』の考え方に基づき、反応機構の流れを見ていきましょう。
A011 はストレッカーアミノ酸合成です。
アルデヒドまたはケトンのカルボニル基を、アミノ基とカルボキシ基に変換し、一発でアミノ酸を合成することが出来ます。
まず、アルデヒドに対して塩酸アンモニウムが作用し、イミンが生成するところから反応は始まります。
塩酸アンモニウムのうち一部は反応系中で、塩酸とアンモニアに分離した形で存在しています。
その塩酸が酸触媒として作用し、カルボニル基をプロトン化することでカルボニル基の炭素がかなりプラスに帯電します。
すると、そこへマイナスの非共有電子対を持つアンモニ アが求核攻撃してきます。
その後、アルコール部分とアミン部位の間でプロトン交換が起こり、アミン上に存在する 非共有電子対による押し込みを受けながら水が脱離することで、イミニウムカチオンが生成します。
イミニウムカチオン中の窒素に隣接する炭素は、プラスに荷電した窒素に電子を引かれているため、かなりプラスに帯電しています。
そのため、系内に存在するシアン化物イオンのマイナスがこの炭素へ求核攻撃をし、アミノニトリルが生成します。
ここで生成したアミノニトリルに対して、酸性条件下で加水分解を行うことで、シアノ基 がカルボキシ基へと変換され、アミノ酸となります。(加水分解の反応機構解説は割愛します。『電子はマイナスからプラス』で考えれば理解できますね。疑問点あればコメントください!)
このストレッカーアミノ酸合成において、加水分解は不可逆な反応ですが、加水分解の前まで、つまりアルデヒドからアミノニトリルまでの反応は全て可逆な反応です。
このアルデヒドからアミノニトリルまでの平衡において、アミノニトリルのみ加水分解後にアミノ酸となりますが、それ以外の中間体は加水分解を行うと原料のアルデヒドに戻ってしまいます。
つまり、ストレッカーアミノ酸合成における最終的な収率は、加水分解前の可逆反応において、いかにアミノニトリルへ平衡を偏らせることが出来るかにかかっています。
そのため、高収率でアミノ酸を得るためには、アミンを過剰量加えてアルデヒドとイミン の平衡をイミン側へ偏らせたうえで、さらに、シアン化ナトリウムを過剰量加えてイミンとアミノニトリルの平衡をアミノニトリル側へ偏らせる必要があるというわけです。
~重要ポイント~
・ストレッカーアミノ酸合成において、加水分解の前までは全て可逆な反応。
・高収率でアミノ酸を得るためには、試薬を過剰量加えて、平衡をアミノニトリル側へ偏らせる必要がある。