A002 ~演習で学ぶ有機反応機構解説~
『演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで』の解説部分を見ながら、『電子はマイナスからプラスに動く』の考え方に基づき、反応機構の流れを見ていきましょう。
この反応は、フィッシャーエステル化反応です。
A001 において、塩基性条件下、生成したカルボン酸が脱プロトン化されていたのに対し、ここでは強酸性条件において、カルボン酸のカルボニル基がまずプロトン化されます。
プロトン化を受けることで、カルボニル基の炭素はより強くプラスを帯びるようになり、エタノールの酸素上に存在するマイナスの電子がここに引き付けられてくるというわけです。
その後、生成した四面体中間体において、エトキシ基から水酸基へプロトンが移動し、もう一方の水酸基の酸素上に存在する電子による押し出しを受けながら、水が脱離することで、エチルエステルが生成します。
フィッシャーエステル化反応の過程はすべて可逆反応なので、基本的には逆反応 (加水分解) も並行して存在しています。
そのため、本問題のように、アルコールを溶媒量用いるなどして、平衡をエステル側に偏らせる必要があります。
~ 重要ポイント ~
・カルボキシ基は強酸性条件下でプロトン化を受け、求核剤の攻撃を受けやすくなる。
・フィッシャーエステル化反応は可逆反応なので、アルコールを溶媒量用いて、平衡を生成物 (エステル) 側に偏らせる必要がある。