― 「ところかまわずナスかじり」第百三十三話 洗濯物 ―

裏クリーニング屋「奥さん。ちょっと奥さん!」

女「え?私ですか?」

裏クリーニング屋「しぃ~っ!静かに!」

女「ぇ?」

裏クリーニング屋「ちょっと奥さん、クリーニング行くとこだね?」

女「はぁ、そうですが・・・」

裏クリーニング屋「じゃあねぇ、奥さん!うふふふ。裏クリにしなって!」

女「ウ、ウラクリ?」

裏クリーニング屋「しぃ~っ!あんま声あげないで!殺されちゃうよぉ!」

女「・・・・」

裏クリーニング屋「そのジャケットかい、オモクリに持ってくつもりなのは?」

女「オ、オモクリ?」

裏クリーニング屋「‟表クリーニング”のことだよぉ。で、そいつをオモクリに持ってくつもりなんだろ?」

女「は、はぁ、そうですが・・・」

裏クリーニング屋「じゃあさ、試しに裏クリ使ってみなって。」

女「あ、あの、何ですか、その裏クリって?」

裏クリーニング屋「ふふふ・・・。あのさぁ、奥さん。最近、クリーニング出しても、きちんと汚れが落ちてないなぁって感じたこたぁないかい?」

女「う~ん・・・。そう言われれば、そうかもしれないわねぇ。」

裏クリーイング屋「だろぉ!あんね、最近のクリーニング屋ってね、ほら最近、『環境破壊、環境破壊』ってやかましいだろ?」

女「ええ。」

裏クリーニング屋「だからさ、洗剤の量、減らしてんの。」

女「ええっ!そうなんですか?!」

裏クリーニング屋「しぃ~っ!静かに!殺されるよぉ!」

女「・・・」

裏クリーニング屋「あと、ほら、終わった後に服を包んでるビニールの袋あんだろ?あれもさ、『海に投棄されたらクジラが死ぬ』ってことで、紙製に替えられちゃうんだよ。」

女「ええ!そうなんですか?!・・・・あ、でも、紙製でも問題はないんじゃないでしょうか・・・」

裏クリーニング屋「バカ言っちゃいけないよ、奥さん!奥さんは、じゃあなにかい?山崎パンの‟やきそばパン”とか‟マロンマロン”が紙にくるまれて並べられてたら買うかい?コンビニの弁当が紙でくるまれてたら買うかい?それがカレー丼だったら、って考えたことはあるかい?」

女「え?・・・はぁ、まぁ、ないですけど。・・・でも、食べ物と服はちょっと違うような・・・」

裏クリーニング屋「ノォー!いっしょ!食べ物が服に変わっただけ!」

女「はぁ・・・」

裏クリーニング屋「でね、奥さん。俺たち裏クリはそんなこと気にしナッシング!洗剤使い放題!ビニール袋、垂れ流し放題!」

女「・・・」

裏クリーニング屋「ね、奥さん。悪いことは言わない。裏クリにしなって!」

女「はぁ・・・。でも、お高いんでしょ?」

裏クリーニング屋「ノン、ノン、ノン!ウチはね、洗剤もビニール袋も自社製。ノーコスト!ノーリターン!」

女「わ、わかりました。そしたら、今回だけお願いします・・・」

裏クリーニング屋「オーケー!さすが奥さん!目のつけどころがシャープじゃねぇか!」


~~~ 数日後 ~~~

女「ちょっとぉ!なんなのこれっ!コンビニの袋じゃないっ!あと、これ石鹸使って洗ったんじゃないの?!カピカピになっちゃって着られないじゃないの!」

裏クリーニング屋「ちょっと奥さん・・・。ふぅっ。裏クリなめてもらっちゃこまるよぉ。これ、よく見てみなよぉ。今はなき、‟エーエムピーエム”の袋だぜぇ。あと、使ってるのはフランス製、‟CAO KURI-M U”だぜぇ。」

女「(プルルルル)・・・あ、警察ですか?」

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