見知らぬLINE

　ふと、自分のLINEの友だちリストを見てみると、見知らぬアカウントがあった。アカウントの名前は「ららら」（※）。心当たりの無い「ららら」さんをタップしてみる。LINEのアイコンはディズニーランドで売られているミッキーの形のワッフルだ。
　それは以前、弟が使っていたLINEだった。彼が亡くなってから携帯電話を解約したのだが、「ららら」さんは現在、弟がかつて使っていた番号を使っている人のようだ。

　重度知的障害のある我が息子は、ディズニーランドが大好きである。彼にとってディズニーランドの魅力は、楽しい乗り物や美味しい食べ物だけではないと思う。
　人だ。
　ディズニーランドに来ている人。
　ニコニコ楽しそうな人が、ギスギスしてきない雰囲気がきっと彼は大好きなんだろう。
　ディズニーランドに行くと全く癇癪を起こさずに過ごせるので、私も楽しい。乗り物は何でも乗れる息子のお気に入りは、スプラッシュマウンテン、イッツアスモールワールド、そしてカリブの海賊である。水に揺れる感覚が楽しいのだろうか。特にカリブの海賊が大のお気に入りで、最低でも１日３回は乗る。５回以上乗ったこともあった。

　思い返せば、弟もカリブの海賊が好きだった。カリブの海賊を乗り終えて、エスカレーター（今は平らな動く歩道だが）で上に行き、お土産物を買う。持ち手が金色で丸みを帯びた海賊の剣は弟のお気に入りで、しばらくの間家にあった。

　今も家に飾られている弟の写真はディズニーランドで撮られたものだ。母に抱っこされ、大きくピースしている。満面の笑みで、心底楽しそう。こういう楽しんでいる人がディズニーランドの雰囲気をつくり、ますます楽しい夢の国にしてくれているのだろう。

　弟とディズニーランドに行きたい。
　乗り物では常に母の隣をキープし、「ずるい！」と思っていた頃の関係に戻りたい。
　もう遅いけれど、死を選ばないで欲しかった。

　「ららら」さんが、これからもディズニーランドを楽しんでいるといいな。
　私も息子も、ずっとディズニーランドを楽しめるといいな。

　今度息子とカリブの海賊に乗ったら、お土産物を覗いてみよう。もしかしたら弟と同じように剣を選ぶかもしれない。そしたら「邪魔になるでしょ」とは言わず、買ってあげたいと思う。

（※）「ららら」は実際のアカウント名の表記を変えております。