Charles Smith ロングインタビュー 6
パート6 つくづく興味深い人だと思うワシントン州のアイコニック・ワインメーカー チャールズスミス。最新のインタヴュー音源の文字起こしをしました。
その1はこちら
https://note.com/orcawine/n/n1ea5b8d05bca
元になったインタヴューはこちらです。2時間もあります(>_<)
https://radiomisfits.com/twm251/
理想に近づく
(インタヴュアー:以下 I )ところで、ソノマに何をしに来たのですか?
(チャールズ:以下C)君たちに会いに来たんだよ!(笑) まぁ、ナパヴァレーに人に会う用事もあったんだけどね。
( I )あなたは以前スプリング・マウンテンでワインを造ってましたよね?
(C)NO。僕は一度もカリフォルニアでワインを造った事はないよ。ただ昔、遠い昔。僕が若いころ、80年代。カリストガ(ナパ)にはよく来ていたんだ。カリストガにはSilverado tavern Hotelがあって、ワインリストには1200種類のワインが載っていたんだ。フォーシーズンホテルの目の前にあって、マークとその頃僕らが働いていたレストランのオーナーのグアイジンがオーナーだった。同僚のサンディと僕は休みの日には、稼いだチップを持ってこのレストランに通ったよ。そこでは僕らは半額でワインを飲めたからね。今でも76年、77年、78年、79年、90年のソーヴィニヨンブランがどんなテイストなのか、言えるし、77年のダイアモンドクリークのVolcanic Hill, Gravelly Meadows, Red Rock Terraceがどんなテイストなのかはっきりと説明することが出来るよ。全部忘れず自分の中に刻み込まれてるんだ。
そしてその頃は壁に、100、いや1000枚ものビラが貼ってあってそこで求人もしてたんだ。僕はそこからワインを造る仕事を選ぶことが出来た。自分が世界で一番幸運な男だと思ったよ。
ワイン文化の深いレベルにまで遡り、人々とテーブルを囲み、ワインについて語り、深く酔い、ヴィンヤードを歩き、収穫を嗅ぎ、土に触れ、メインストリートを練り歩くバンドを見る。あの時代のカリストガは本当にかっこよかった、自分もその一部になりたいと思ったんだ。
人々が好きだと思っているものに、深くかかわる事ができる。シェフの気持ちがちょっとわかった気もしたし、なんて幸せな事なんだと気が付いたんだ。
( I )チャールズがここに来る前にジェームズに言ったんだが、多分これはあなたがどこから来たかによるんだと思う。あなたのメッセージには意味があるんです。あなたがワインについて語るとき、それは一般の人々に語りかけるものなんです。ソムリエはブルジョア的なものに巻き込まれることが多いけれど、あなたがワインについて話すとき、ビデオやインタヴューでの、あなたのワインについての話し方は、一般のワイン消費者に語りかけるような感じがするんだよね。
(C)なぜなら、僕は一般の人々のためにワインを造っているからだ。ワインを飲んでいるのは普通の人なんだよ。
( I )そうそう、この話に関連すると思うけど、サブスタンスのボトルの裏面の一番上には「重要性、正当性、有意性の本質」と書いてあるよね。
(C) ああ。それがサブスタンスの定義なんだ。それがワインに込められた意味。これが言いたいんだよ。実現したいのはサブスタンスと言う大きなスケールで、バイザグラスとしてレストランでサーブ出来るように広めたいんだ。このワインを見れば誰もが必ず美味しいと思ってくれるようにね。
例えば・・・例を挙げると、フランス・コート・デュ・ローヌのギガルだ。ギガルってどこに行っても必ずリストに載ってるだろ。そしてギガルなら必ず美味しいって思うだろ。高級ワインもカジュアルワインもギガルなら間違いない。
チャールズのワインもそうありたい。チャールズなら間違いないと思われたいんだ。意味わかるだろ?
( I )$13だろうと$150だろうと必ず美味しいワインね。
(C)ワインリストには25種類リスティングされていて、3ドルのクラークスバーグを飲もうとすると例えば・・・・
( I )ああ、クラークスバーグ(笑) あのシュナンブランを作ってる場所か。(笑) いやシュナンブランは素晴らしいよ。ボーグルは全般的に美味しいよ。
(C)知ってる知ってる、覚えてるよ。ボーグルだろ。プティシラーも作ってるワイナリーだろ。言ったろ、僕はサクラメント出身なんだ。
( I ) ボーグルはあれだよ、もう一度パンデミックが起きて欲しいと思ってるよ、この2年で小売店で最も売り上げを上げたワイナリーだからね。
コロナ禍
( I )質問があるんだけど、あなたは国内のみならず世界中にワインを卸しているだろ?今現在、3年前とくらべて世界のワインマーケットはどんな風に変わったと思う?
(C)そうだね、コロナ、インフレ、不景気、、不確かな事の多い世の中だ。そんな中、一つ言えることはワインはいつでも素晴らしいし、カッコいいものだという事。ワインが生まれた時代からそうだったし、今でも素晴らしく、そしてこれからもワインとは素晴らしいしカッコ良いと思う。
僕がただそう願っているから言ってるわけじゃないよ。70年代にはワイン・クーラーが流行ってだろ? Bartles and Jaymesのワイン・クーラーだ。そして缶ワインが出てきた。ただ大きな発明や発見があったわけじゃない、ワインはずっと継続するものなんだ。
世の中すべてに言えることは、、、、もちろん今はちょっとしたでこぼこ道を皆が走らないといけない。世界と言うのは未知のものに出会う場所だ。でも進んで行くんだ。あきらめたり、近道をしようとしないで、まっすぐ正直に進んで行くことが大事なんだ。
( I )付け加えると、もしあなたが巨大企業の一部でビールを飲みながら、市場を眺めているのなら、コロナが広まり、人々が家にこもり、どんどんアルコールの消費が高まって行った時には喜び、そして、終息に近まると、アルコールの消費量も横ばいになりパニックに陥るでしょう。
ここで私たちがワーナーブラザーズではなく、インディーズ・ロックレーベルである事の良さが活きてくるんだ。僕らは情熱をもって、ワインに情熱を傾ける人たちの為にワインを造っている。毎晩$50のワインを飲むような人間ではないかもしれないけれど、仕事が終わり家に帰り$17のワインを楽しむ人たちの為にワインを造るんだ。
( I )どこでも購入できる、あちこちで販売しているワインは、最終的には小売店に並びお客さんはボトルを購入するよね。
(C)僕はレストランや小売店のワイン・バイヤーに買うたびに言ってるんだ。「もし僕のワイン造りや考え方に賛同してくれるなら、僕のワインを買って欲しい。賛同できないのなら、買わなくてもいいんだ。あなたが決めたらいい事だよ。」ホント、自分たちで決めていただければよいと思うんだよね。
実は以前大きなワインの展示会で、ある大手企業のワインバイヤーに言った事があるんだ。あんまりこう言う事言わない方がいいのはわかってるんだけどね・・・・
「残念ながら大きなワイナリーはワインに化学的なものをたくさん入れている事を知っているだろう?それを分かっていながら、あなた達はなぜ、パレット単位、またはトラック単位で大量にそんなワインを購入するんだい?他にも良いワインは世の中にあふれている。僕だけが、自然なワイン通リをしているわけじゃなく、たくさんの人たちが良いワインを造っているんだ。僕は良いワイン造りをして、幸運なことにそれを称賛された。他の良いワインを造っている人たちも報われるべきだと思うんだけどね・・・」
( I )それは、そうだね。その通りだと思いますよ。ただそのような意見が言えるのは、チャールズが自分のワイナリー、会社を持っていて自分でワインを造り、自由に発言できる立場にあるからで、それは珍しいケースなんだ。
(C)確かにね。うちには2人のワインメーカーがいる。僕とBrennon Leightonだ。僕とブレノンは常に同じ方向を向いていて、いつも話し合い、年毎により良いワインを造りだしている。ブレノンは「B.Leighton」と言う自分のブランドも持っている。僕らは3つの醸造設備を持っているけれど、そこで働くすべての素晴らしいスタッフに、僕らのワインに対する考え方、僕らのつくり方を常に話しているので、僕やブレノンがその3つのワイナリーにいなくても、僕らがいるのと同じようにワインは造られるんだ。
僕らの赤ワインは浸漬を30日以上行う。30~50日だ。価格が高いキング・コールと他のワインとの違いは、畑の収穫量と樽に入ってる時間だけで、どの赤ワインの他はすべて一緒なんだよ。すべて野生酵母を使用、ぶどうの皮や種との浸漬は長い。僕は発酵中の全てのワインを毎日テイスティングする。もしそのワインの状態が前日と一緒だったら、プレスする。それが、タンニンがシルクのようにとても滑らかになる瞬間なんだ。18日後とか27日後とか数字じゃないんだ。毎日テイスティングをして、タンニンが縦にならんでいたのが、水平に並ぶように感じた時、プレス(皮と共に発酵中のワインをジュースだけ取り出す事)するんだ。
だからこそ、サブスタンスのカベルネも、ピノノワールも口当たりがとても滑らかでスムースに感じる。糖分など成分表にかかれている他の要素が働いているのではなく、かけた時間の違いなんだ。
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