ヒコロヒーさんの「きれはし」というエッセイを読んだ。

ヒコロヒーさんの「きれはし」というエッセイを読んだ。

結論から言うと、いいきれはしだった。
布のきれはしも繋げば綺麗だし、食べ物は海苔巻きとか出し巻き卵とか、だいたいきれはしが美味しい、そういう本だった。

スーパーに並ぶ野菜は、曲がったものとか傷のあるものは弾かれるように、普段表舞台に立たれるタイミングでは削ぎ落とされるような内容であったように思えるものの、ヒコロヒー節は健在であったのではなかろうか。

出てくるエピソードは決して奇抜なものばかりではない。我々の日常にすら明日にでも起こりうる出来事である。

ただそこにヒコロヒーという存在の視点が入ること、登場人物としてヒコロヒーという存在があることが日常からの脱却を加速させている。

もちろん、エッセイの題材にするくらいであるから、ご本人にとってはある種の自然な流れだろうが、一般人からすればそうは展開しないだろうと思うことばかりだ。

連なっていく日々の中で、思い出として積み上げるには薄く削ぎ落とされるきれはしが、私には大変魅力的であった。

踏み込んだ感想を言うとネタバレになるのでこれだけにしておく。
私は文学作品の中で、エッセイこそ作者の心情が一番色濃く反映されているので前情報なしで読んでみて欲しいと思うのだ。

ヒコロヒーさん(並びにキョコロヒー)これからも応援しています。

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