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Malorの読み方

インタビューでロバートが呪文の名前のことを偽ウェールズ語と言っているのを読んで、「ん?」って思った人はそこそこいるんじゃないだろうか。

ウェールズ語と言ったらLlであり、Gnであり、母音のwやyだ。だからこそLlylgamynやGnildaはウェーリッシュ(*1)に感じられる。そしてWizardryの呪文には、これらがまったくないのである。(*2)(*3) ロバっプさぁ……なぜTylltowaytにしなかったんだい?

*1 こんな英語はない。正しくはWelsh。
*2 #1の時点では。後発的にはVaskyre等がある。
*3 Milwaが実はミルアだと言われたらw母音があることになる。が、ウェールズ感を出したいなら
  母音であることがわかりやすいように、子音の間にwを挟むだろう。

トゥルーワードの言語的特徴

Wizardry#1の呪文の特徴を並べてみよう。

最後に母音が来ることが多い。ただしeで終わることはない。

MilwaもMadiもBamatuもMahalitoもあるが、eで終わるものは1つもない。eで終わると英語読みされてしまうからだろう。niceやmemeのように、英語では最後に置かれるeは発音されず、代わりに1つ前の母音の音を変化させる。HalitoがHaliteだったら、ハリテかハライトか迷わせてしまう。逆に言えば最後のeを排除しているのは、英語読みをしてほしくないということだ。

母音が2つ連続することは少ない。

これも同様だ。euはユーになるし、aeならエーになる。だからDiosやDialのように、英語読みしても発音が変わらない並びだけが許容されている。とまとめようとするとLoktofeitというのもあってeiは発音がイだったりエだったりもするのだが、eiには代表的な読みがあるわけではなく、発音がわからなければ素直にフェイトと読んでくれると考えて残したのだろう。Dialもダイアルって読みそうな感じではあるが、他の呪文との比較でディアルだと伝わると考えたのだと思われる。

二重音字はない、ように見える。(*4)

chやtzなど、子音2つを使って1つの音を表すものは#1の時点ではない。これもchuとあった場合クフかチュかでブレが生じるので、極力読み方の可能性を減らしたかったのだろう。

*4 実はトゥルーワードではktでフと読むのでLoktfeitはロフフェイトです、
  とか言われる可能性はないではない。

先頭1文字は必ず子音で、2文字目は必ず母音

母音を先頭に持ってこない理由はわからない。しかしcrimeやknitのようなスペルがないことで、明らかに英語ではない雰囲気は出ている。

各国語国歌と比較する

では、Wizardryの呪文は何語に似ているのか。nationalanthems.infoから各言語の国歌の歌い出しを並べて比較してみる。ただしすべては難しいので、初期Wizardryにおいて意識されがちな国・言語のみに絞る。

ウェールズと日本は説明の必要はなかろう。エジプトにはララ・ムームーがいるし、アブドルもいる。イスラエルはヘブライ語を使っていて、セラフやカバラのホームグラウンドだ。Contra dextra avenueの出身地としてバチカンもエントリーする。ギリシャは後で神話が役に立つ。また、Hrathnirの出身地であろう北欧の代表としてフィンランドも入れた。ざっと北欧系の国歌を眺めてみて、比較的Wizardryに言語感覚が近い国として選んだ。

Kimi ga yo ha chiyo ni yachiyo ni
sazareishi no iwao to nari te
koke no musu made

日本、君が代

Bilādī, bilādī, bilādī 
Lakī ḥubbī wa fū’ādī  (*2回繰り返し)
Miṣr yā umm al-bilād
Anti ghāyatī wal-murād
Wa ‘alá kull al-‘ibad
Kam liNīlik min āyād

エジプト(アラビア語)、Bilady, Bilady, Bilady (My Homeland, My Homeland, My Homeland)

Oi maamme Suomi, synnyinmaa!
Soi, sana kultainen!
Ei laaksoa ei kukkulaa,
Ei vettä, rantaa rakkaampaa,
Kuin kotimaa tää pohjoinen,
Maa kallis isien!

フィンランド、Maamme (Our Land)

Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé!
Contre nous de la tyrannie,
L’étendard sanglant est levé!

フランス、La Marseillaise (The Song of Marseille)

Kol ‘od balleivav penimah
Nefesh yehudi homiyah,
Ulfa’atei mizrach kadimah,
‘Ayin letziyon tzofiyah;

イスラエル(ヘブライ語)、Hatikvah (The Hope)

O felix Roma, O felix Roma nobilis.
O felix Roma, Roma felix Roma nobilis.
Sedes es Petri, qui Christi vicem gerit,
Sedes es Petri, qui apostolus est pacis.

バチカン(ラテン語)、Hymnus Pontificius (Pontifical Anthem)

Mae hen wlad fy nhadau yn anwyl i mi
Gwlad beirdd a chantorion, enwogion o fri
Ei gwrol rhyfelwyr, gwlad garwyr tra mad
Tros ryddid collasant eu gwaed.

ウェールズ、Hen Wlad fy Nhadau (Land of my Fathers)

Se gnorizo apo tin kopsi
tou spathiou tin tromeri,
se gnorízo apo tin opsi,
pou me via metrai tin gi.

ギリシャ、Ymnos eis tin Eleftherian (Hymn to Freedom)

ウェールズ語にはやはり似ていない。感覚的な話ではあるが、比較的似ているのは日本語、ラテン語、ギリシャ語ではないだろうか。ただ、子音と母音がほぼセットになっている日本語は似ている度が一段落ちる。

ここにあるものだけ見ると一番近いのはギリシャ語に見えるが、ラテン語も捨てがたい。どこかでラテン語を目にした際に「やけに-oで終わる言葉が多いな」という印象を持っている人も多いのではないだろうか。Wizardryの呪文もやけに-oで終わる。Diosなんかも語感がラテン語っぽい。タクティクスオウガのドルガルアが使っていたコンゲラーティオやコッレクティオがラテン語だ。ギリシャ語もラテン語も古代の権威ある言葉であるし、このどちらか、または両方をベースに、もしかすると若干の日本っぽさも意識しながら作ったのではなかろうかと思う。

ではなぜウェールズ語と言っているのかと言うと、1つの可能性としては本人が素で勘違いしているのだと思う。#2で導入されたリルガミンは確かにウェールズベースなので#1の呪文もそうだったと覚え違いをしているのではないだろうか。得物屋のログでPo'leのことを憶えていなそうだったりするし、鳥山明や荒木飛呂彦や猿先生の忘れっぷりを思えば、この程度の覚え間違いは不思議はない。

そうでないとすると、Llylgamyn=ウェールズのブランディングのためにわかってて言ってるか。#5だとwやyを母音として使う呪文が出てくるが、これはもしかしたら後付けで偽ウェールズ語ということにしようとした結果かもしれない。

Wizのベースになったoublietteの呪文はまた趣が異なる。ahで終わったりkで始まったり、こっちはヘブライ語っぽく見える。攻撃呪文にGeiborがあるのでゲイ=ボルグか? と思いかけるが、アイルランド語に似ているようには見えない。

で、Malorがマロールなのかマラーなのかだが、ギリシャ語にせよラテン語にせよ素直に書いてある通りに読めばよいようにできているので、マロルだろうと思う。ポーフィックのようにrをーで表記するならマロー。


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