オスプレイ社軍事史シリーズ(洋書) ~三十年戦争と軍制改革関連
日本語では新紀元社でシリーズ出版している、オスプレイ社の原書です。日本語版もかなり冊数がありますが(現在ほぼ絶版)、それでも「メンアットアームズ」シリーズ・「戦史シリーズ」のごく一部のみに留まっています。原書はシリーズ数も多く、シリーズそれぞれの種類も豊富です。比較的手頃なのでついついたくさん集めてしまいます。
ここでは日本語訳がないもので、かつこのサイトで扱う同時期のもののうち、入手しやすいものをいくつかクリップしました。一部、古いものはInternet Archiveで公開もされています。内容は図版が多いので、英語が苦手な人でも図版だけ見ているだけで充分参考になります。
八十年戦争については別記事です。
Imperial Armies of the Thirty Years' War
書誌情報
著者: Vladimir Brnardic (著), Darko Pavlovic (イラスト)
出版社: Osprey Publishing
サイズ: ペーパーバック
ページ数: 各48p
発行年月: 2009/10/27(1), 2010/11/23(2)
読書メモ
「メンアットアームズ」シリーズ。「三十年戦争期の皇帝軍(1)歩兵・砲兵」「三十年戦争期の皇帝軍(2)騎兵」です。三十年戦争というと、軍制改革に絡んでグスタフ二世アドルフ側が取り上げられがちですが、こちらは案外ありそうでなかった皇帝軍側にスポットを当てたもの。概説・小事典のように使えます。
インペリアルと言いつつ、表紙の絵はスペインのフランドル方面軍(スピノラ旗)ですね。
Internet Archiveでも読めます。
The Thirty Years' War 1618-1648
書誌情報
著者: Richard Bonney (著)
出版社: Osprey Publishing
サイズ: ペーパーバック
ページ数: 96p
発行年月: 2002/8/19
読書メモ
電子書籍版は表紙の装丁が変わっていました。
「Essential Histories」シリーズ。このシリーズは他のシリーズと違ってイラストレーターによるイラストはありませんが、それでも図版が多いことは他のシリーズと同じです。三十年戦争についての概説本といった感じで、マイナーな登場人物も含め、日本ではあまり紹介されない肖像画も多く、有名な戦闘のオーダー図も豊富です。
Internet Archiveでも読めます。
The Spanish Tercios 1536-1704
書誌情報
著者: Ignacio Lopez (著)
出版社: Osprey Publishing
サイズ: ペーパーバック
ページ数: 48p
発行年月: 2012/8/21
読書メモ
著者は元スペイン陸軍将校(現場叩き上げ系)で、退役後3つの軍事アカデミーで軍事史を学び、現在は教授。オスプレイでは初となる著作だそうです。 時代のレンジはテルシオの誕生から1704年までということになっていますが、やはり内容の中心は八十年戦争と三十年戦争時代です。テルシオ年表がついているのが嬉しい。テルシオの時代の変遷だけではなく、組織(ヒエラルキー)や戦術についてがメインとなります。各所、白黒ですが再現イベントの写真もあります。
Internet Archiveでも読めます。
Pike and Shot Tactics 1590-1660
書誌情報
著者: Keith Roberts
新書: 64ページ
出版社: Osprey Pub Co
発行年月: 2010/3/23
読書メモ
Eliteシリーズ。MAAシリーズよりページ数がやや多く、特定のトピックスを掘り下げた内容になっています。タイトルどおり「戦術」、とくにこの場合は隊形・フォーメーションに特化しています。
オランダの軍制改革、スペインのフランドル方面軍との比較、三十年戦争のスウェーデン軍での進化を経て、最後にイングランド内戦が登場。作者はイングランド内戦の専門家のイギリス人なので、イングランドに寄った内容になっているのはご愛敬。それでも、レスター伯時代と比較して、オランダ軍制改革の真っただ中にいた英軍司令官フランシス・ヴィアーをイングランド人先駆者ととらえ、その部下たちの書き記した記録をもとに数字で示す手法には説得力があります。
ところどころのフォーメーション図はおそらく作者が鉛筆かなにかで書いたもの。1590-1660となっていますが、スウェーデン軍とイングランド王党派軍に焦点が当ててあるので、1630-40年代のボリュームが多いです。カラー挿絵はすべて、その時代の特定の野戦のオーダーになっています。
惜しむらくは、この本全体のリファレンスが無いこと。図版についても出典をぼかしてある印象を受けます。本文中には触れられていることもあるのですが。とくに、三十年戦争期のオランダ戦術の伝播について、リアルタイムの出版事情が取り上げられている箇所は要付箋項目です。
Matchlock Musketeer: 1588-1688
書誌情報
著者: Keith Roberts
新書: 64ページ
出版社: Osprey Pub Co
発行年月: 2002/2/25
読書メモ
Warriorシリーズ。「Pike and Shot」と同一作者による一昔前のもの。なので、ここに挙げた中では唯一電子書籍化していないようです。こちらのほうが広く浅くなので、基本を押さえるのに向いています。「Pike and Shot」にはない、軍隊運営や攻囲戦の項目もあります。
相変わらず図版の出所はあやしいものの、こちらはリファレンスもがっつり1ページあり。ただし、英語由来の二次資料しかここには挙げてありません(本文中には一次資料についても言及されていますが)。
徴兵・費用・給与など、具体的な数字が出ているのもうれしい。軍服の価格や、イングランド軍の給与の変遷図などもあります。中央カラーは、オスプレイによくある図鑑的なもののほかに、スナップショット的な兵士生活の一コマを切り取った風のものもあります。
Ironsides: English Cavalry 1588-1688
書誌情報
著者: John Tincey (著), Graham Turner (イラスト)
出版社: Osprey Publishing
サイズ: ペーパーバック
ページ数: 64p
発行年月: 2002/3/25
読書メモ
「Warrior」シリーズ。通常「Ironsides 鉄騎隊」というと、クロムウェルが組織した騎兵隊のことですが、ここではもっと広い意味で、「イングランド騎兵」のような意味で使われています。歩兵の場合、オランダの『武器教練』をはじめとして教練書がいくつかありますが、騎兵の教練書はあまりメジャーではありません。ここには少しだけですが、1630年代の騎兵教練書の内容も載っています。
武器教練についての本館記事。
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