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小さな呪いとその回避

外食時に、小さなミスやトラブルが起こる。
それがどうやらわたしにかかっているらしい地味な呪いだ。

Aランチと言ったのにBランチが来る。
チョコストロベリーパフェと言ったのにただのストロベリーパフェが来る。
明太釜玉うどんと言ったのにただの釜玉うどんが来る。
糖質オフ麺と言ったのに普通の麺で来る。
そもそもオーダーが通っていない。
他の卓の注文品が来て、うっかり食べてしまう。
割引券を使えば割引率を間違われる。

昔からずっとこうなのだ。

たとえばマクドナルドに限っても、月見バーガーに目玉焼きが入っていない、あるいはパテしか入っていない、コーンのセットと言ったのにポテトのセットが来る、等々。

そんな感じで、もはや日常茶飯事だ。
何事もなく食事を終えて店を出られることのほうが圧倒的に少ない。

本稿の主旨は、店員さんのミスが許しがたいというものではない。飲食業の大変さはある程度理解しているつもりだし、もう慣れている。
ただ、外食時にこうしたミスやトラブルがこれほどの高頻度で起こる人はそうそういないのではないかと指摘され、そう言われると少し考えてしまうのだ。
注文する自分の滑舌が悪いのかとことさらクリアに発音し、メニューを指差しながらアイコンタクトを取り、必ず復唱してもらう。
それでも間違われるときは間違われる。
着席するなり氷水を派手にこぼされるなど、注文や会計に絡まないハプニングもしょっちゅう起こる。

これはもう、呪いがかかっているレベルではないかと夫は言う。
そこで、家族で外食するときは「わたしは注文時にいっさい口を開かない」を遵守してみるようになった。店員さんとのやりとりは、すべて夫が行う。
ただのジンクスのようなものだけれど、これを実践すると最後までトラブルのないまま食事を終えて退店できる率がぐんと上がった。
呪いの有無は不明だが、わたしには人の注意力を散漫にさせるような何かがあるのかもしれない。妖気を発しているとか。
前世で、食に関して何かやらかした報いなのかな。

外套を脱がない客は急いでる  カフェ店員は少し気を揉む/柴田瞳


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