樹を盗むやつ、鮭に扮装するやつ「樹盗」
書店で「樹盗」のタイトルが気になってこの本を昨日手に入れた。
てっきり、近年木材として樹木が違法に伐採されているという話だと想像していたが、読み進めていって分かったのは、十七世紀から脈々と続く伐採が社会的な問題として現代まで引きずられているということだった。
北米では毎年1300億円相当の気が違法に伐採されているというから驚きだ。これは花王の営業利益に相当する。
もちろん科学技術も負けてはおらず、樹木の生物的・化学的なデータベースを作り違法な木材をあぶり出している。現在注目されているのは、ギターやバイオリンなどの木材を使用した楽器への木材の使用らしい。
本題は伐採者と環境保護者の対立の歴史を順当に描いたものなので、以下では特に面白かった脇道の話を紹介する。
forestの語源
英語の"forest"はラテン語で外側を意味する"foris"を語源としている。"foris"は"forbidden"の語源でもある。
これは"forest"がもともとはウィリアム征服王に収用された国土の一部を指すものであり、森林を意味していたなかった。ウィリアム達が狩りをするために、他の者には狩猟権の対価を求め、厳重な規則を適用された。
つまりは狩猟ができるような豊かな木々がある場所(=町の外)がforestであったのである。
鮭に扮装して川を流れる職員
樹木と同様に自然生物も密漁の脅威にさらされている。特に産卵期の鮭は川に密集するため格好の餌食となる。
グロスさんというアメリカの野生生物学研究所の職員は伝説を作ったようだ。彼は密漁者を逮捕するために、ウェットスーツで逮捕状だけをもって川の流れに身を任せていたという。そして密漁者がたらすルアーを引き寄せて捕らえた。
樹を盗むということ
「樹盗」というタイトルからもそうだし、現代で犯罪であることから、樹木の違法伐採をすべきではないことは明らかだが、富裕層と貧困層の対立の歴史という観点からはある種プロテスタント的行為として樹を伐採していた側面も分かった。
人類にとって必須の資源になった森林を守るのためにもしがらみが起こった歴史を知ることは役立つと思うのでぜひ読んでいただきたい一冊だ。