「高崎・たのしい授業フェスティバル」という実験
●夏の「宇都宮・たのしい授業体験講座」のあとに…
宇都宮の体験講座は2024年も大盛況で,夏の終わりの重要なイベントとして,ぼくたちの中で定着しています。高崎サークルの仲間も,ものづくりや講座の講師として活躍させてもらい,みんなが満足して帰れるステキな会です。
そんな宇都宮の会に参加していた高崎サークル仲間の唐澤美知恵さんから「こういうの,私たちのサークルでもできないのかなぁ」という一言がありました。それを聞いて,まずぼくが思ったことは2つ。「群馬の先生方に呼びかけたところで,休みの日になんて講座に来ないでしょ」。それともうひとつ,「誰が主催するのよ。やるとしたらぼくになるんだろうけど,そんな大がかりなこと,ぼくには無理だよ…」。
でも,同時に思いついてしまったことも。高畠謙さんたちが神奈川でやっている「THE FIRST」の会の講座の形(ものづくり・選べる講座・最後にみんなで一緒に授業,というスタイル)が素晴らしくて,「あれをうちのサークルでもマネしたら,みんなが講師として活躍ができて,元気になるだろうなぁ」ということ。
それから,「先生を対象とするというより,子どもや保護者にたのしんでもらえるようなコンセプトの会にしたら,意外と人数が集まるかもしれないなぁ」と。
実は,そう思えたのには,すでに実験結果が出始めていた時期で,黒田康夫さんをお呼びして〈白と黒〉の講座をやってもらったのですが,「子どもたちも受けたい,受けられますか?」という問い合わせが相次ぎ,新たに枠を設定したら,参加者の半数が子どもたちになったのです。唐澤さんの案も,まさに「子どもや保護者を対象にやってもらいたい」というものでした。
そこで,下のような内容を夏休み最後の日に黒板に描いて,ぼくがサークルで提案してみることにしたのです。
「仕切るつもりはぜんぜんないのですが,みんなとやりたい!ってぼくが言い出したら,みんなが協力してできてしまうのか,という実験をしてみたいのですけど?」と。
そうしたら「いいよ~,やろう!」と言ってくれるじゃありませんか。
そこで,実験的に「1月の3連休最初の土曜日1日で,第1回をやってみる」ということになったのです。
その後,サークルLINEで検討を重ねて,次ページのような形が決定しました。(ものづくり13ブース・講座7)
多くの子どもたちや保護者の方々に来てもらいたかったので,1人2000円というリーズナブルな金額を参加費として設定し,さらに,家族で一緒にという場合は2人目から1000円でよい,幼児は無料,ということにしました。
部屋は20人くらい入れる部屋を3部屋,40人くらい入れる部屋を1部屋の計4部屋借りられたので,定員を50人と設定しました。
人数が集まらなくても,それは実験結果。「ものづくりも,講座も,人が集まらなかったらお金も出ずにボランティアになりますよ」ということをサークルのみんなと確認しました(笑)。
さて,これでいったい,何人ぐらいの参加者が集まったと思いますか?
●驚きの実験結果
なんと,総申込数61名,当日欠席4名,当日参加2名,幼児参加4名で,参加実数は63名の大盛況でした(大人41名,子ども22名)。
想像以上だったため,驚いたことやわかったことをメモしておきます。
・参加した大人,保護者・先生の多くは,「子どもを参加させたい」と思って参加を決めていた。でも,結果的に自分がすごく学べたと思ってくれていた。
・仮説やたのしい授業関係の先生は,遠方からでも参加してくれた。(千葉・東京・埼玉などから,県外の参加者が18名もいた。)
・サークルメンバーが,自らLINEの仲間に呼びかけたり,noteの記事やSNSなどを使って,いろいろなところで紹介してもらったためか,仮説の先生,学校の同僚の先生,組合の先生,オルタナティブスクール関係者,保護者など,いろいろな立場の先生や大人が入り交じっての参加者となっていた。同様に,子どもたちも,校種の違う子たちが集まってきていた(多くは小学校の子どもたち。中学生・幼児の参加もあった)。
・最初に「講座やものづくりは完全にみんなに任せる」というスタンスだったので,主催のぼくは枠だけ準備しただけで,特に打ち合わせもなく当日を迎え,すごく気持ちがラクだった。さらに,それぞれのメンバーが主体的に活動してくれて,大成功だった。
・スタッフも参加者も,みんな「すごくよかった」と思えて,「第2回をやりたい,参加したい」と思ってくれた。
●参加者の感想(抜粋)
・子どもたちの反応がリアルに見れるのが本当に楽しくて、私も笑ったり微笑ましい気持ちになったり、一日中自分の感情が幸せMAXでした。本当に最高でした。会場にちらばめられている手作りのおりぞめ、ポスターにも温かさを感じて心地の良い空間でした。帰りの車の中で『1日が終わっちゃうの寂しいなあ』と感じてしまったほど楽しいが詰め込められていました。三連休の土曜日はすごくありがたかったです!絶対にまた参加したいです!ありがとうございました!(仮説・東京・若者)
・5才の女の子が、北村先生の宇宙の講義を最初から最後までしっかり聞いてました。すごいことだと思います。子どもたちはみんな最後のシャーベットづくりをご褒美だと考えていて、午後の講座も最後までとても頑張っていました。参加したどの講座も、先生目線を忘れて、学生として夢中になってしまいました。最高でした。峯岸さんの授業では、自信をつけた子どもたちの気持ちが、最後の台上前転の場面では炎のように燃え上がっていました。また、北村先生の宇宙の話では、知っているはずの知識を新たな視点から考えさせてくれ、楽しむことができました。最後の太陽直視で講座の内容が全てつながり、感動を覚えました。最後のドライアイスの講座は、床に掃き捨てたドライアイスを子どもたちが砂金のようにかき集めるところがハイライトでした。またぜひ参加させていただきたいと思います。本日はありがとうございました。(高崎の先生・若者)
・☆よかったこと:最初の1時間がもの作りタイムになっているので、到着時刻を気にせず来られたこと。☆初めて知ったこと:アラザンは電気を通すこと。自分の考えを伝えること(相手の考えを聞くことも)は楽しいということ。☆感想:親子共々とっても楽しい1日でした。息子は家に帰ってから、嬉しそうに今日のことを家族に話していました。作ったおもちゃもお気に入りで、夜寝るまで遊んでいました。こんなに楽しい授業だったら、不登校がなくなりそうです。私もこんな授業してみたいなぁと思いました。今日はありがとうございました。(高崎の先生・親子で参加)
・良かった点 ①親子で参加できる点。仮説実験授業を子どもと一緒に受けられる機会があるのは、凄く良い。②価格設定が嬉しい。高速やガソリン代がかかったが、参加費がお手頃なのが子どもと一緒に参加しやすい。③アットホームな雰囲気。④マット運動の一コマの授業で、子どもの成長を感じられたこと。はじめはできないことがあるとなかなか参加しなかった息子。周りに同世代が集まり、どんどん挑戦する同年代を見て、息子も挑戦していきました。最後はみんなで8段の台上前転をしていました。感動しました。
普段、他人の子に教えていますが、自分の息子に教える難しさを父として感じています。甘えなども含めて。家に帰っても、まくまくまくまくまく登りと呪文のように唱えていました。息子自身も楽しかったのと、できた喜びがあるようです。楽しいことやできなかったことができるようになることで、自分から活動するようになるんだなと感じました。第二回も親子で参加したいです。⑤お菓子コーナーやジュースコーナーがあって子どもは喜んでいました。スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!楽しかったです!是非2回目もよろしくお願いします!(仮説・千葉から親子で参加)
・楽しい1日をありがとうございました!私は親子3人で「マット運動」「振り子」「ドライアイス」に参加させていただきました。
マット運動では、運動苦手チームで皆さんの活発さに圧倒されてしまいましたが、講師の峯岸さんが、「やらなくても良い、見てるだけでもOK」のスタンスで授業をしてくださったので、安心してその場にいることができました。家に帰ると、子どもたちはくまくままくまく登りをやり始めたので、本当は混ざりたい気持ちがあったんだなと、見学だけで終わらず親としてホッとしました。
振り子のお話は、お土産もたくさんいただき、家に帰って色々と家族に話始めていました。楽しいと、授業のことを話したくなるんだな、感動すると共有したくなるんだな、勝手に今日の復習を始めてるじゃないか(笑)と、改めて心を揺さぶる授業の大切さを感じました。
おり染めも、早速翌日に自宅で復習しました(笑)障子紙買うんだよ、絵の具も用意しなきゃと、子どもたちが主体的に動く姿に、楽しいの原動力ってすごいなと思いました。絵の具でも満足にでき、フェスティバルの予熱で2日も楽しめちゃいました。
ドライアイス実験は、あんなに楽しみ方があったのですね。家では水に入れて遊ぶ程度だったので、教材の面白さに改めて気づきました。
次回も絶対参加します!企画運営で応援できることがありましたら私も手伝いたいと思いますので、教えてください。
私も、教育について保護者と語るイベントに携わっています。そこでオルタナティブスクールの先生や保護者と語るのですが、一般校の先生は参加率が少ないです。でもこのイベントは、両方の先生たちや親が交わって参加しているというのが本当に素晴らしいと思いました。こうして一般校とオルタナティブやフリースクールの大人たちみんなで、群馬の教育についてオール群馬で考えられたら良いなと思っています。(高崎の先生・親子で参加)
・楽しく刺激的な一日に参加させていただき、ありがとうございました。大したこともできませんでしたが、スタッフとしていただけて、嬉しく思いました。サークルメンバーの方々の授業は以前から見ていたのですが、子供とのやり取りが加わって初めてイキイキと動き出し、その良さが倍増するのを目の当たりにして、感動を覚えました。
今回参加した子供たちの反応にも驚かされました。エキストラかなと思うくらい、全力で見て感じて感想を素直に話して、「あ~、たのしむってこういうことか」と思いました。参加された方の感想も、すごく喜ばれているものばかりで、大成功ですね。子供たちはもちろん、親たちは子供たちが心から楽しんでいるのを見るのが喜びなのですね。笑顔と笑顔が溢れていて、幸せな空間でした。メンバーの皆さんのやる気と行動力の賜物です。皆さんの目もキラキラと子どもたちに負けない輝きでした。ぜひ次は、中学生の息子にも、この“たのしさ”を直に味わってほしいです。メンバーの方々の頑張り、子供たちの反応を見て、感じることはたくさんあるはずです。今回は、本当にありがとうございました。(高崎の保護者・サークルメンバー)
・とってもたのしくて、素晴らしいフェスティバルでした!一人一人の個性や能力が発揮されていて、とても生き生き輝いていましたね!ほんとに素晴らしかったです。
私は、こういう形のフェスティバルをずーっと前から待ち望んでいました。やっぱり、たのしい授業は、学校だけでない、先生と子どもたちだけではない、保護者も、そして、すべての人々にとっても「たのしい学び」になるに違いないと思っていたからです。今日のフェスティバルでは、まさにそれが証明されましたね!大成功でした。子どもたちもとても意欲的に発言や行動を起こしていました。色々な環境に置かれている子どもたちが、何も気にしないで、たのしい授業を通して、自然とチームワークが生まれ、会話が始まり、コミュニケーションの輪が広がる瞬間をたくさん見ました。大人たちが、授業を受けている子どもの様子を見て、わははって笑ったり、たのしそうにしていたり、子どもの発言や動きをみて「なるほど〜、そうなるか!」と感心したり。
普段の体験講座では、自分の知識技術としての学びになりがちですが、このフェスティバルでは、もう、ここが学校そのものになっていて、「たのしい授業のある学校だとこんな雰囲気」ということも感じることができたと思います。 こうやって、「たのしい」って、連鎖していくんだなぁって思いました。(高崎・おりぞめ講師・サークルメンバー)
フェスティバルの様子
●モーニングものづくり
●おりぞめ
●選べる授業①「たのしいマット・跳び箱」
●選べる授業②「日本の都道府県」
●選べる授業③「もしも原子が見えたなら」
●会場・受付・売り場・お弁当
●選べる授業④「宇宙への道」
●選べる授業⑤「自由電子が見えたなら」
●選べる授業⑥「ふりこと振動」
●イブニング授業「ドライアイスであそぼう」
●おわりに
ぼく自身,「体育の講座」や,「ドライアイスであそぼう」の授業などをやってみて,改めて思ったことがあります。それは,たのしいことの前では,子どもも大人も,みんなが自然に同じ立場になっていて,いつの間にか仲間になってしまう素晴らしさがある,ということです。
クラスの子どもたちとも毎年そんなことを感じていましたが,ここに集まっていた子どもたちは,クラスの子どもたち以上に様々です。オルタナティブスクールに通っている子や,不登校でおうちにいる子,学校に通っている子や,まだ小学校にも上がっていない幼児まで,状況も年齢も本当に様々でしたが,同じことに挑戦している姿は,みんな笑顔で輝いていて,そして,みんなが同世代の,これからの未来を担う仲間たちという感じに,ぼくには映って見えていました。
運動能力にも大きく差があります。学校でマットや跳び箱に慣れている子もいれば,普段は木登りをしているような,学校体育の枠にある跳び箱の授業なんかしたことがないという子までいろいろでしたが,たのしい課題の前では,みんながお互いを励まし合ったり,できる子がいいお手本になって,周りの子がやってみたいなって思ったり,できなくても果敢にチャレンジする姿がみられたり,できたときにみんなが一緒に喜んでくれたり,すごくいい映画をみているような,ヒューマンドラマにあふれていました。
そして,誰が一番感動していたのかといえば,それを目の当たりにしてしまった,この会に役割をもって開催している立場の,サークルのメンバーたちでした(笑)。
たのしい会になるだろうなぁとは予想していましたが,こんなにも素晴らしい会を自分たちで作り出すことができたという気持ちは,驚くほど自分たちを元気にさせてくれるものでした。
終わってすぐに「第2回には,どんなことをしようかなぁ」って自然に考えている自分たちにもビックリです。大変じゃないって言ったらウソになりますが,それを超えて「やりたい」と思えている自分たちを,いま誇らしく思っています。
参加してくださったみなさま,本当にありがとうございました!今後も開催していきますので,一緒にたのしみましょう!
おしまい
2025.1.18
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