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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問40

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問40です。

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問40 労働安全衛生法が定める、事業場の規模に応じた事業者の義務として、正しいものを1つ選べ。

① 衛生委員会の設置

② 従業員支援プログラムの導入

③ ハラスメント相談窓口の設置

④ 事業場内の心理相談体制の確立

⑤ 事業場外の精神科医療機関との提携
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正解、 ①です。
(以下、長文になることわご容赦くださいませ)

まずは労働安全衛生法に定められている事業者の義務を列挙していきます。

具体的には「管理者や責任者の選任」です。

労働安全衛生法の第3章 安全衛生管理体制にある通り、事業者は安全衛生管理や推進の中心となる人を選定しなければなりません。

事業規模や業種に応じて「安全管理者」「衛生管理者」「安全衛生推進者」「産業医」を配置します。

安全管理者:常時所定の数の労働者を使用する事業場
衛生管理者:常時50人以上の労働者を使用する事業場
安全衛生推進者:常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場
産業医:常時50人以上の労働者を使用する事業場

このように、事業場の規模に応じて配置が必要な役割があることが示されています。

また、同じく労働安全衛生法の第3章 安全衛生管理体制では、常時使用する労働者を50人以上有する事業場に「安全衛生委員会」を設置することが義務付けられています。

安全衛生委員会は、衛生委員会と安全委員会を統合したものであり、設置目的は労働者の健康被害を防止するための対策を講じることとされています。

この辺の条項を書き出していきます。

(安全委員会)
第十七条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
三 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項
2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 安全管理者のうちから事業者が指名した者
三 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。
4 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
5 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。

(衛生委員会)
第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
三 産業医のうちから事業者が指名した者
四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。
4 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

(安全衛生委員会)
第十九条 事業者は、第十七条及び前条の規定により安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。
2 安全衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 安全管理者及び衛生管理者のうちから事業者が指名した者
三 産業医のうちから事業者が指名した者
四 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
五 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを安全衛生委員会の委員として指名することができる。
4 第十七条第三項から第五項までの規定は、安全衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十九条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

ここで安全委員会、衛生委員会、安全衛生委員会の3つが挙げられているので、細かく見ていきます。

衛生委員会の設置目的は、事業場側と労働者側が協働して労働者の健康障害や労働災害を防ぎ、健康に業務に従事できる職場環境を目指すことであり、設置義務が生じる基準は、業種を問わず常時50人以上が勤務する事業場となります(パート・アルバイトや派遣社員も含まれることに注意が必要です)。


安全委員会は、従業員数と指定の業種に当てはまる場合に設置が必要です。

なお、常時使用する従業員が50人未満の場合は、両委員会の設置義務はありません。

そして、安全委員会及び衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができるということになります。

また、労働安全衛生法第66条では、労働者の安全と健康確保に向けた対策として、事業者に健康診断・ストレスチェックの実施を義務付けています(ストレスチェックは労働者50人未満の事業場においては努力義務です)。

事業者には、労働者の心理的な負担の程度を把握し、新たな病気発症の予防に努めることが求められます。

ストレスチェックは、50人未満であれば努力義務、それ以上であれば法的義務となり、「事業場の規模に応じた事業者の義務」に該当するといえそうです。

ただ、今回は選択肢の中に「ストレスチェックの実施」が含まれていないので、本問では考えなくて良い事項になります。

労働安全衛生法第4章では、事業者は設備や作業などにより労働者が危険に晒されたり、怪我や病気をしたりすることがないよう、事前に防止措置を講じるよう定められています(労働災害(危険・有害物・健康被害)の防止措置)。

労働災害とは、具体的に爆発性や発火性のあるものによる危険やガス・粉じん・放射線等による健康障害などを指します。

事業者にとって、労働者の健康・安全を図るために必要な防止措置といえるでしょう。

こちらは事業場の規模に応じているのではなく、業種に応じてというものになっています。

労働安全衛生法第6章では、業種・職種・雇用形態にかかわらず、事業者は労働者を新たに雇い、その作業内容を変更したときに遅滞なく、「安全衛生教育の実施」が義務付けられています。

総括安全衛生管理者や衛生管理者、安全管理者、業務に精通した労働者などが主体となり、安全衛生教育を実施し、労働者それぞれがいかなる危険に対しても、意識して安全な行動を取り、労働災害を防止することが目的です。

こちらは事業場の規模に関わらず行わなければならないことになっています。

平成18年の法改正により、労働安全衛生法第28条に「危険又は有害性の調査及び調査の結果に基づく講ずべき措置」が事業者の努力義務として導入されました(要するに「リスクアセスメントの実施」になります)。

事業者が業務における危険性や有害性を調査し、労働者の危険や健康障害を防止するための措置に努めることで、労働災害につながる危険性や有害性のあるリスクの抽出、危機に対する感受性向上といったリスクアセスメントの実施が期待されます。

こちらについては「努力義務」ですから、本問を考える際には除外して良いのかもしれません。

同じく「努力義務」として、労働安全衛生法第7章において「快適な職場環境の整備」が明記されています。

職場環境の現状把握、労働者の意見や希望の聴取など、労働者の健康保持増進のための措置として、労働者が不快と感じないような作業環境の維持管理が求められています。

職場環境を整備することで、健康障害の防止や労働災害防止につながり、労働者の士気向上も期待できます。

ここで事業場の規模に応じて義務が変わるものを列挙すると以下の通りになります。

管理者や責任者の選任
安全管理者:常時所定の数の労働者を使用する事業場
衛生管理者:常時50人以上の労働者を使用する事業場
安全衛生推進者:常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場
産業医:常時50人以上の労働者を使用する事業場
安全衛生委員会の設置
※安全委員会:業種によって設置義務が異なる(50人以上・100人以上など)。
※衛生委員会:常時50人以上の労働者を使用する事業場
ストレスチェックの実施
※50人未満であれば努力義務、それ以上であれば法的義務
このようになりますから、本問で設定されている選択肢の中では「衛生委員会の設置」になりそうです。

よって、①が正しいと判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/15-産業・組織に関する心理学+法律/公認心理師%E3%80%802023-40/

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