胸元の開いた服
男の子になりたい
小さい頃男の子になりたかった
戦隊ヒーローのレッドになりたかった
でも女の子はレッドにはなれないよ、
と言われて虚しい気持ちになった
ある日、下校のときに痴漢に遭ってしまった
誰にも言ってはいけないことだと思った
ないことにしないといけない雰囲気だった
遭ってしまった自分が悪いのだと思った
当時、宮崎勉の事件のニュースを見て
女の子は殺される
長くは生きられないと思った
女らしくしていると狙われる
女らしさを隠して生きていた
男の子になって強くなりたい
でも生理がきて男の子になることを諦めた
女になれない
彼とのスキンシップ
時々トラウマを思い出してつらくなる
彼には全部話して理解してもらえたし
むしろすごく大事にしてもらえた
でもその気持ちに応えられないときがあってつらかった
もっと気持ちをあげたい、と思ってもブレーキが掛かったり、罪悪感が湧いてくる
怖くなって逃げてしまう自分がいる
自分も相手も信じられずうまくいかない
彼からは女らしさを求められる
すごく求められる喜びは大きかったけど、つらかった
女らしさとは何だろうかと悩む
体じゃなくて心が欲しい、と言われる
心が追いつかない、と思った
女を諦めて人として生きる
生物的、社会的役割を果たさせなかった自分に罪悪感はあるけれど、
女を諦めたら解放されて楽になった気持ちもある
女でも男でもなく、ようやく人間になれそうだ
でも
胸元の空いた服を着た知人を見てすごく嫌な気持ちになった
女らしさを全力でアピールする服
私も自分らしさを発揮して自己実現したい、という気持ちになった
男でも女でもなく、人間になりたいと思っていたけど、負けたくないと嫉妬したのは、案外私の中にまだ女らしさが残っていたのかも、と自分の気持ちにびっくりした
かと言って、じゃあ今から女らしさ全開で頑張ることはもうできそうもない
でもこんな自分だけど、作品を作ったり、誰かが喜ぶことをしてみたいなと少し思うようになった
また女として、人として生きる気持ちにさせてくれた知人にはすごく感謝している
私を大切にしてくれた彼にもすごく感謝している
誰にも言えなかったことだけど
気持ちの置き場所として
ここに置いておきます