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【読書感想文】偶然性・アイロニー・連帯
彼は私的空間と公的空間(クラブとバザール)を個人の中に内在させてもいいとしたが、今起こっているのは、各地での残酷さの表明である。その都度、公的空間での言語運用ルールが見直される。また、インターネット上の発言はもちろん、道端での言動・会話も動画に撮られたり晒されることもある。どこもかしこも公的空間への接続を余儀なくされる。となると、多様であること、つまり私的空間を持つことが難しいというか維持するモチ
もっとみる読書感想文 なぜ働いていると本が読めなくなるのか
読書文化が成立してきた明治期から、自己啓発を目的とした読書の文脈はあれど、摂取から咀嚼、アクションまでの時間をどんどん短くしてきたというのがざっくりとした歴史で、インターネットやネオリベ(市場原理に全て任せる)的な背景も合わさり、行動のみが語られる形に昇華したのが現代といえそうだ。情報とはその瞬間瞬間に必要なものであり、思考したり内面化することで行動するこれまでとは異なり、ぶっ飛ばしてただただ行動
もっとみる【読書感想文】実験の民主主義
諸課題を解決するうえでも、市民の声を聴くのが大事だという思いがある。民主主義というか、市民の活動が個人的に重要だと思っているが、それが”いい”のかは立ち止まって考えるべきだと思っていた。つまり、自分たちにとっていいことが全体としていいのかは分からない。その意味で、宇野の本を手に取った。理論的にそれでいいのかを政治学者の目線でも語っていないかと。
一言でいえば、それについては、複雑化された現在におい
何のスマート化か。-読書感想文「スマート・イナフ・シティ」
スマートシティという言葉自体、現在バズワードになって久しく、
政府がデジタル田園都市構想によって、都市のスマート化を後押ししている。
よく引き合いに出されるトロントにおけるスマートシティの失敗について、
政治的なプロセスが全く行われずに、提携企業が選定されたことが原因として挙げられている。*1
こういうことが起きないように市民と合意形成をしながら、スマートシティ化を推し進める必要がある。
*1
【読書感想文】差別はいけないとみんないうけれど
基本的にはロールズの正議論に則り、「正体が無知のヴェールに包まれた状態」におけるものに立脚していたいものの、生得的な違いなどにより、平等ではない事実(女性のほうが感情的だったりすることを裏付けるデータだったり、人種によってIQ平均値の統計的な差異が認められていることなど)により、それが上っ面な正義でしかないことが明らかになってきた。また、女性の平等を求めたとしても、それに見合う効能とコストがあるの
もっとみる15年ぶりの従兄弟との再会
昨日、父方の従兄弟に会い、ごはんを食べた。実に、15年ぶりとかくらいだった。小さい頃はよく会っていて、兄弟のような関係性だと思っていた記憶がある。従兄弟と会えるというのは、妙にイベント感が高くて、当時、父方の家に遊びに行ったときは、母親はすぐ帰っても、残って数日家に入り浸っていたような気がする。
親の離婚で母側に引き取られた自分は、父方との関係が崩れてしまい、そこから15年くらいは会えていなかっ
映画「ハッピーアワー」
重心の探り合い。人を頼ること、だれかとの間にある正中線に身を置くこと。それが幸福の時間である。というのが映画「ハッピーアワー」のそのタイトルの意味と言える。くだらない飲み会、夫婦生活のような、自分の行動が相手を慮ったり想像したりして発生する時間。自分の行う行動の動機が主体性の内にはなく、その関係性の間、間主観的に存在している状態。そういう状態を幸せというのではないかと提示する。
自立しすぎていた公