【映画分析】『ベイビー・ドライバー』なぜあいつがラスボスなのか
1.いちばん好きなシーン
『ベイビー・ドライバー』でいちばん好きなシーンは、前半、主人公・ベイビーがいったん金を支払い終えたところ。仕事で使った車を廃車にするためスクラップ会社へ行き、つぶす。
天気最良、晴れやかな気持ちで詰まれた廃車たちを横切りながら歩いていく。つまりそれらは彼のいままでの仕事の象徴だ。汚れた仕事から解放される。新しい人生が回りはじめる。
2.解明! なぜあいつがラスボスなのか
もうひとつ好きなシーンがあって、中盤、ふたたび仕事をすることになったベイビー。以前組んだ強盗カップルと合流。男の方のバディは、ベイビーがつねに曲を聴いてることに好意的だ。反発する粗野な強盗(ジェイミー・フォックス!)などおかまいなしで、ベイビーとバディはiPodのイヤホンを分け合って曲を聴く。
ワオ! と思った。このふたりは意思が通じてる。仲間感がすごい。しかし! さらにワオ!なんと最後の敵はそのバディだ。なぜだろう? 僕はすごい疑問だったがいまはわかる。
つまり、バディはもうひとりのベイビーなのだ。強盗に身をやつし、カップルで犯罪を重ねてる。ベイビーも終盤、好きな彼女と一時、逃避行する。この2カップルは対比であり、同一であり。
この構図は黒澤明『野良犬』とも同じだ。敗戦後、引き揚げてくる途中で全財産を盗まれた2人。刑事になった男と犯罪者になった男の追跡劇。
3.まとめ
さて『ベイビー・ドライバー』は悔しいほど美しい構図でそれを見せる。イヤホンをそれぞれ右と左で分け合いクイーンの曲を聴く。二手に分かれたイヤホンの線は、彼らの運命の分かれ目でもある。そしてなんとそのシーンはこの映画の真ん中にあって、このあと2人の運命もまた分かれていくのだ。
美しい構図と構成のすぐれた映画だ。
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