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【時短まめ知識】なぜ「札幌ドーム」の愛称が「大和ハウスプレミストドーム」になった?

大和ハウス工業(本社:大阪市)が「札幌ドーム」の施設命名権を締結し、2024年8月1日から愛称が「大和ハウスプレミストドーム」に決定したとの報道がありました。なぜ大阪に本社を構える業界No1企業が、北海道の札幌に目をつけたのか、気になったので少し調べてみました。


「札幌ドーム」とは

札幌ドームは札幌市が所有する公共の施設です。北海道コンサドーレ札幌のホームスタジアムでもあり、日本ハムファイターズもエスコンフィールドができるまでは本拠地としていました。2001年の開業以来、ラグビーやコンサートなどたくさんのイベントが開催されています。

札幌ドームは、㈱札幌ドームが管理・運営しています。㈱札幌ドームの株主は札幌市だけでなく、北海道電力㈱やサッポロビール㈱など地元企業をはじめ、㈱竹中工務店、㈱JTBなど名だたる企業が経営に参加しています。(詳しくは、㈱札幌ドームの株主からご覧ください

㈱札幌ドームの2024年3月期決算は、売上高12億71百万円、当期純損失6億51百万円でした。前年2023年3月期の当期純利益1億20百万円からの急降下については、日本ハムファイターズの公式戦開催がなくなったことが大きな要因のようです。1試合あたりの動員を3万人と仮定すると、26日(減ってしまったイベント日数)で78万人が来場することになり、昨年と同程度の来場者数(99万人+78万人)となります。エスコンフィールドに日本ハムファイターズの本拠地が移った影響は大きいですね。

㈱札幌ドームの事業概要 出所:㈱札幌ドームHP

そこで経営改善をめざす取り組みの一つとして、今回の施設命名権(ネーミングライツ)を販売するに至ったと思われます。実は、当初の募集期間2024年1月9日〜2月29日に協賛企業の応募がなかったようです。その後、募集期間が延長され、大和ハウスが獲得しました。当初の募集では年間協賛金が年間2億5千万円以上とされていましたが、最終決定価格は非公表となっています。協賛金だけでは赤字を補填できませんが、いろいろな交渉を経て、双方にメリットある決断に至ったのでしょう。

「大和ハウスプレミスト」とは

「プレミスト」は、2007年に誕生した大和ハウスのマンションブランドです。マンションシリーズをすべて含めると、これまで北海道エリアで10,504戸、全国では105,720戸の供給実績があります。(2024年4月1日時点)(詳しくは、ダイワハウスの実績からご覧ください)

大和ハウスは、戸建住宅・賃貸住宅・マンション・商業施設・事業施設・環境エネルギーを柱にした売上高5兆2,029億円の大企業で、マンション事業はそのうち年間4,329億円(いずれも2024年3月期連結)という位置づけです。2024年5月13日の機関投資家・アナリスト向け経営説明会で公開された資料では、マンション事業は収益改善が課題とされています。

一方で営業力を活かした土地の仕入れや、採算性を見極めながら複合開発や地方でのプロジェクトが強みのようです。そんな中、2024年3月にさっぽろ駅直結の「ONE札幌ステーションタワー(総戸数624戸)」が竣工し、直後に命名権の発表となりました。こちらの物件はすでに完売となっていますが、今後の開発に弾みがつくことは間違いないでしょう。

札幌市のビジョンと課題

札幌市の「まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023」では、未来のさっぽろの姿が公表されています。「安心して暮らせる街」「魅力的な世界都市の街」をキーワードに掲げています。一方で現実は、65歳以上の高齢者が人口の27.8%を占め、4人に1人の割合となっています(令和2年10月1日時点)。ちなみに10年前はまだ17%程度でした。またマンションの高齢化も加速しており、令和12年(2030年)には、築40年以上のマンションが全体の40%近くになることが明らかになっています。

札幌市はこのようなビジョンを実現するため、課題を解決するために、協賛金に加えて大和ハウスの事業に大きな期待をしていると思われます。大和ハウスのパーパスでは「生きる歓びを分かち合える世界の実現」を掲げており、未来の街づくりというベクトルが札幌市とも合致しています。また世界都市をめざす観点からも、大和ハウスは海外事業(売上高7,059億円(2024年3月期))の加速を重点テーマ(2026年3月期には1兆円を計画)としているため、こちらも方向性が一致しているように思えます。

愛称「大和ハウスプレミストドーム」によるブランド力向上はもちろん、今後は大和ハウスが札幌市の開発に大きく寄与していく可能性を感じます。諸外国も日本の後を追うように高齢化が進んでいます。いずれ同様の問題に直面するでしょう。世界が注目する少子高齢化社会の新しい街づくり事業が成功すれば、日本経済にも貢献できます。世界都市のポテンシャルを持つ札幌市と、グローバル企業になりつつある大和ハウスのタッグは如何に。

産業や雇用、インフラ面でも今後の札幌には注目です。
2027年には、半導体大手のRapidusが国内初となる2nm(ナノメートル)ノード以下の最先端ロジック半導体を製造する施設・IIM(Integrated Innovation for Manufacturing)において、量産を開始する予定です。
また2023年度末には、北海道新幹線が札幌の延伸を計画中となっています。

引用元:北海道新幹線 北海道新幹線の概要

最後に、札幌市への投資にも注目してみたいです。直近の地価変動率は令和5年の住宅地で15%、商業地で9.7%、令和6年は住宅地で8.4%、商業地で10.3%、とかなりの水準で地価が右肩上がりです。ちなみに、令和6年住宅地の最高価格は75万円/㎡、商業地では660万円/㎡です。

【出所】
大和ハウス工業㈱2024年3月期機関投資家・アナリスト向け経営説明会資料大和ハウス工業㈱2024年3月期有価証券報告書
大和ハウス工業㈱HP
㈱札幌ドームHP
令和6年地価公示概要(札幌市)
令和2年国勢調査結果速報 札幌市の人口(札幌市)
札幌市マンション管理適正化推進計画(令和5年4月札幌市)
㈱札幌ドーム第26期事業報告
統計からみた札幌市の高齢者(令和5年9月札幌市)
Rapidus㈱HP
北海道新幹線HP

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「SDGs金融教育」アドバイザー おっぴ
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