ゲーム感想・ネタバレ無|【バベル号ガイドブック】ヘンテコ謎解きアドベンチャーの手触り感
儲からないなら風を呼べ
昨年2022年5月にNintendoから配信されたインディゲーム紹介動画「Indie World 2022.5.11」。そこで紹介され実に一年と三ヶ月ぐらい経ってからついに発売されたのが本作です。
Switch以外にもSteam版もあります。ということで、おぽのはSteam版でプレイ。
ステージをクリアしながら物語を進める、推理アドベンチャーです。プレイヤーはお話ごとに切り替わるキャラクターを操作しながら、少しずつ別のお話の未来を変えていきます。
1|イラストレーション − 夢か現かバベル号
ちょっとくすんだ色彩と児童絵本のようなタッチが特徴。画面に散らばっているのは一目みてなんだか分かるような分からないような、ヘンテコなものがたくさん。
『バベル号ガイドブック』は空から落ちてきた一冊の本です。それをアシスタントスタッフのリーが読みあげるところから本編がはじまります。
そこからは独特の世界観とキャラクターが息つく間もなく登場します。物語はオムニバス形式であり場所も時間もコロコロと変わっていくので、より一層そのキャラクターの多さを感じます。
メインどころを除くと、顔や体は同じようなパーツを使いまわしているモブが多いのですが、実はしっかり一人ひとりに名前があるようです。
2|世界観 − これはバベルな物語
奇妙奇天烈なバベル号の上、開始冒頭にいきなり死だの記憶抽出だのショッキングなワードを投げかけられますが、意味がほとんどわかりません。
いえ、会話の七割程度はちゃんとした言語なのですが、固有名詞の殆どが目的やら背景やらさっぱり不明なのです。類推はできるけど、関係性が全然わかりません。トゥワズブリリ〜グ♪
こんなわからないだらけの世界で、プレイヤーはバベル号にやってきたひとやバベル号の中の人を代わる代わる動かしてストーリーを進めていきます。
作品全体を覆うのは、あの時ああしていれば…という後悔。プレイヤーだけがそれを覆せる立場にいます。そうやって今作のキーワード「バタフライエフェクト」を引き起こすのが目的です。
3|ゲーム性 − ガイドブックの外側
謎解きの舞台となるマップ探索をして、その時動かせるものをとりあえず触ってみるというのが基本。触ってみたり話しかけたりすることで様々な出来事が発生します。
謎解きのヒントとなり得るのは露骨にヒントという形ではなく、「ノート」というガイドブックが持つ機能を使います。一つ一つの出来事を文字通り結びつけることによって推理が進み、バタフライエフェクトの始まり、“コトの始まり”を見つけることが可能です。
謎解きゲームの性質上、この推理ノートを使わなくても答えは見つけられますが、推理パートとも言うべきこの事実の整理を行って損はないはずです。つなぎ合わせたときのエフェクトが結構好き。
そして忘れてならないのが「リビジョン」と呼ばれる、運命の書き換えシステム。
マップに散らばる物体を足がかりに、物語に直接介入して本当なら起こり得ない状態を生み出します。それがきっかけとなり本当なら失敗するはずだった未来が、成功へと生まれ変わります。
プレイヤーはオムニバスに進む物語の傍観者ながらも、物語に手を加えることができるところが過去改変モノのツボを押さえているように感じました。
リビジョン起動時のボタン長押しの操作からは、ちょっとしたカタルシスを味わえます。
4|UI/UX − ゲームブックなガイドブック
さて、このゲームをクリアするため何度も開くことになる「ガイドブック」のメインメニューですが、なかなかにアナログチックです。(推理ノートもボードゲーム盤のような印象があります。)
「ガイドブック」だからこその特徴的な見た目はもちろん、「ガイドブック」故に目的のページそれぞれにワンボタンで移動できる機能があります。
こういう紙をめくる、ページを送る感覚もあってより一層、実体はなくとも「メニュー画面」や「ステージセレクト画面」ではなく”絵本“や“本”の1ページであることを感じられます。
UIではないですがジャズ風味のBGMも心地よい。
本作のメイキング風景の画像が外部サイトの紹介記事に載っていましたが、推理ノート周りは本当に紙ベースで作ってゲーム調整をしていたようです。
デジタルなのにアナログな感じの源流はもしかしたらそういった手順を、操作に落とし込んでいるところからも来ているのかもしれません。
各操作にちょっとした引っ掛かりも感じます。具体的に言うとゲームとは関係のない、持ち上げる、手に取るような操作が目的との間にワンクッション挟まれます。
謎解きゲームらしくキーアイテムを手に入れて、怪しいところに使っていくのですが、全てのアイテムは所持しているだけでは意味はありません。アイテムの選択と使用する対象を選ぶことで初めて使えるようになるのです。
批判めいた書き方をしていますが、脱出ゲームなどではよくある操作です。
こういったひと手間、手応えがデジタルゲームをやりつつもアナログゲームをやっている感覚も味わえるということに繋がっていると考えています。
イラストや設定に惹かれ、実際遊んでみた感想をゲーム部分中心に語りました。全部終わった今、この作品には語りたいことが溢れてるので、〈キャラ語り〉編も書きますよ。