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ゲーム感想|【SCHiM -スキム- 】ホップステップ影から影へ

ずっと影から見ていたよ


(ネタバレあり)
『SCHiM -スキム-』は一風変わった特徴を持つジャンプアクションゲーム(プラットフォームゲーム)です。

プレイヤーは影に住む精霊「スキム」を動かして、影から影へとジャンプを繰り返し、ふとしたきっかけで離れ離れになってしまった自分の影の主である青年を追いかけます。


1|グラフィック:パステルと影の世界で

<最小限の魅力!>
いやーもう、画面の色合いが素敵なんですよ。ステージクリア型のゲームなのですが、進むにしたがってどんどん違う色の景色が広がります。

それも、明暗と差し色と影の4色だけ。ゴール対象の青年や影の縁取りなどはゲーム的な要素のために別の色が追加されて、浮いて見えますが、それはあえてそうしているのだと想像できるぐらい、少ない色で表現されたこの画面が素敵です。

いくつか載せておきます。車や建物のディテールも、邪魔にならないぐらいのほどよいデフォルメがされています。

<多角的ってこういうことね>
このゲームは影と影の間をジャンプしながら、ステージのゴールに向かって進んでいくゲームなのですが、この平面的な黒い影ですが、画面をぐるぐる回すことで、影の見え方が離れたり近づいたりちょっと変わります。

この距離感届きそうもないなー…なんかここ失敗しやすいなー…という時。画面を回すと、別の角度から見た時、それまで建物の裏に隠れていた影が見つかり、自分の行動範囲が広がることがあります。

な、なんか全然右下にいけないぞ…?
あ~そっか坂だったのね!?
じゃあ左から時計回りで行けるわ。

2|ゲーム性:影あるところへ跳んでいけ

<ワンボタンのシンプル操作>
画面全体の見た目のユルさに反して、結構判定がシビアです。2回ジャンプができたり、復活ポイントがちょくちょくあったり、そういうシビアさの緩和策はたくさんあるのですが、「影から影へ跳ぶゲーム」です。

そりゃね、もう、電柱の影とか、物干しのロープとかそういうほっそ~い影も渡っていかねばなりません。左右に流れる工場のラインの荷物の影とか、夜中で車のライトに照らされた時にしか出てこない影だとか。

易しすぎず難しすぎず、やりごたえは十分。

流れ作業が許されない…。

<やり直し場所は遥か向こう>
復活ポイントの話も書きました。全65ステージあるこのゲーム、1ステージ内に複数個所、ジャンプで失敗しても復活できるポイントが用意できます。ただし、復活ポイントの距離感がまちまち。

難所の手前で復活できる時の方が多いのですが、それを期待して進んでいると、た~まに「え、ここからやり直しなの…?」という場面に遭遇します。

ゲーム内のイースターエッグ要素もあり、それらは大体、正規のルートから外れた場所にあるため、探しに行こうと思ったら、この復活ポイントの問題にぶち当たることもよくあります。

イースターエッグが隠されているだけに、正規ルートの難所よりももっと難しい操作を要求されることもありますし、復活場所が正規ルートとの分岐点に位置していてミス時の手戻りが多く、精神的なダメージになることもよくあります。

そんでもって、外れ側の道を進んだ先に、優しさによる復活ポイントがおいてあることもあります。別に困らないと思われるかもしれません。

しかし場合によっては、運よくたどり着いたせいで絶対に引き返せないし、隠されたアイテムを見つけるのが必須だけど下手だから攻略できないという、デッドロックに陥ることもあるのです。


3|物語性:ただひたすらに追い続ける

※※※終盤のネタバレがあります※※※

<彼を訪ねて二万マイル>
全65ステージと書きました。このゲーム思っている以上に長い物語があります。しかし、登場人物は一切言葉を発さず、身振り手振りのみ。文字も出てこないので、そのリアクションから心情を想像するしかありません。

いつもいっしょ。

ただ、間違いなく伝わります。文字もなく、言葉もない世界で、プレイヤーは影の精霊「スキム」となり、青年を追い続けることになります。

人が子どもの頃、なんとなく「スキム」の存在を感じられるようですが、大人になるにつれだんだんとわからなくなっていきます。「スキム」はその人と共に居ながら、ただ見守るだけの存在になっていきます。

で、序盤。この作品の「主人公」である青年が、会社をクビになり絶望に打ちひしがれすっ転んでしまいます。一緒にいることを感じてもらえなくてもずっと側にいた「スキム」が、その拍子に青年の影から切り離されてしまいます。

元のあるべき場所、「青年の影」に戻るために「スキム」を操作して、何日も何日もかけて青年のもとに戻るのが物語の目的です。

「子どもの頃からいた精霊と離れる」というと後にとんでもない不幸に見舞われ続けそうですね。ですが、そういう話ではないようです。

青年は絶望して、しょげていても、転職してどっこい生きていきます。

おぽのは最初、「早く戻って彼を順調な人生に戻さなきゃ!」という使命感で、追いかけ続けていましたが、違いました。

雨上がり、夜中の公園でピザ。

どこか漫然と日々過ごしているような、心にぽっかり穴が開いているような感じではありますが、青年のもともとの性格が変わったわけではないようです。素朴で親切心のある行動をとれることが、ちょくちょく挟まれる青年視点のムービーから伝わってきます。

物語の終盤に差し掛かったあたりで、「スキム」と青年が出合い、少しだけ彼を導くことができます。しかし、そこでもまだ元に戻れず、青年だけが常に一歩先を歩いてすれ違いを続けます。

まあそうか、「影」は後からついていくものですから。

青年が持ち直すのも決断するのもすべて、プレイヤーたる「スキム」ではなく「青年自身」の力によって行われていきます。プレイヤーは必死にその後を追いながら、青年の意思が戻ってくるのを見続けることになるのです。

最後の最後で青年に追いつけた後の演出を見て、万感の思いが溢れます。彼こそがこの作品の「主人公」である、と強く感じたままエンディングを迎えました。


大変なところや理不尽な目にも遭いましたが、じんわりとこのゲームの良さ
を感じていましたね。

難点はちょっと中盤が長い感じのするファンタジーですが、エブリデイ・マジックな物語が好きならきっとこれも。


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