レオ・ヌッチさんに会いに行ってきました Vol.2「ピッチンニ賞を受賞したヌッチさんが歌った《リゴレット》」
音楽ライターの井内美香と申します。7月にバリトンのレオ・ヌッチさんにお会いするためにイタリアに行ってきました。そのレポートを数回にわたって連載します。(Vol.1はこちらからどうぞ)
レオ・ヌッチさんはイタリアの至宝と言われるオペラ界のレジェンドです。来年2月には東京で、久しぶりの来日コンサートが予定されています(詳細はこちら)。
レオ・ヌッチさんがピッチンニ賞を受賞したのは、今年から始まった夏の芸術祭「フェスティバル・リフレッシ・デル・ガルダ」の最終日に設けられた、オペラ・ガラ・チャリティー・ディナーの夕べにおいてでした。会場は広大なゴルフ場付きのリゾート・ホテルのレストラン。ディナーの席は屋外のテラスに設けられていました。中央の丸テーブルにはヌッチ夫妻、女優のサンドラ・ミーロさん、そしてカステルヌオーヴォ・デル・ガルダ市長夫妻や夏のフェスティバルをサポートしているスポンサーなどが、オペラ作曲家ニッコロ・ピッチンニの末裔で、夏の芸術祭とピッチンニ賞の主催者であるマクシミリアン・セレン・ピッチンニ氏と共に座っていました。
ディナーが進み、いよいよヌッチさんの受賞です。フェリーニの「8 1/2」にも出演した大女優のサンドラ・ミーロさんからヌッチさんにピッチンニ賞のメダルが贈られました。
ヌッチさんは洒脱な冗談などを交えて皆さんに挨拶をします。そして芸術祭広報の女性タニアが事前にお願いしていたらしく、なんとヌッチさんが今夜のお客さんたちに向けて一曲歌うことに!この後の若い歌手たちのミニ・コンサートを伴奏する予定の若いピアニストさんが呼び出されます。場所が屋外のテラス席、しかも遠い席にはガラ・ディナーの来場者ではない別のお客さんもいたので人の話し声などが少しうるさかったのですが、ヌッチさんが冗談めかして「えっへん、あー、少し皆さんのお邪魔してもいいですかな?」とバリトンの声を響かせると、着席していた人たちからも「お静かに!」という声が上がり、あたりは静かになりました。
そこでヌッチさんが歌ったのは、ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ《リゴレット》から「悪魔め、鬼め」。なんという真剣勝負の歌声!ヌッチさんが歌っている間だけ、オペラの舞台がそこに出現したようでした。
歌い終わったあとは当然のことながらブラヴォーの嵐です。とても嬉しそうなヌッチさん。続いてヌッチさんが、今度はマイクを使ってイタリアのカンツォーネ的な曲を「この曲はサンドラ・ミーロさんに捧げます」と言って歌ったりしました。
その後はミニ・コンサート。ピッチンニ賞を贈るピッチンニ基金は、イタリアの音楽院に在籍している声楽科の生徒たちを対象としたピッチンニ声楽コンクールも開いています。このコンクールの昨年の優勝者ジェッシカ・パンタロットさん、今年の優勝者ミケーラ・デッラノーチェさん他の若い歌手たちがガラ・コンサートでピッチンニのオペラからの数曲を歌いました。ヌッチさんの後で歌うのはちょっと大変だったのではと思うのですが、ピッチンニの軽やかな曲が爽やかなイタリアの夜に響いて素敵な雰囲気でした。
この日は、芸術祭の最後の日ということで、カステルヌオーヴォ・デル・ガルダ市長さんのご挨拶、そして打ち上げ的にスタッフの紹介があったりと和やかに夜は更けて行きました。
翌日はついに、私がイタリアに来る目的だったヌッチさんインタビューの日でした。次回はその詳細を書きます。どうぞお楽しみに!