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市民オペラに参加するということ 16

[前回のあらすじ 年末年始でしばらく間が空いて、新年の初練習に参加。この日の指導者は、私が好きな、音大で教えているテノール歌手の先生だ]

「愛の妙薬」も、この先生の指導だと、発声を重視しながら行われる。この先生の指導方法は、私が個人指導を受けていたときに教わった内容とかなり被るので、私にとってはとてもわかりやすいし、歌いやすい。

私の歌の先生に、以前、子音は音の前に出して歌うよう指導を受けたことがあったが、この先生も同じことをおっしゃる。また、高い音ほど支えをしっかりして、逆に低い音は鼻にかけるように響かせて歌う、と言うのも、表現こそ違うものの、私の先生も以前おっしゃっていた。この先生は重心を下げるため、ジャンプをしながら声を出す練習を今日私たちにさせていたが、私の先生も、腕を上げさせたり動きをつけたり、いろいろ私に体験させながら指導していたな、と懐かしく思い出した。また、低い音の後に高い音が控えているときは、はじめから高い音を視野に入れて歌わないと、いざ音が高くなった時に声が出ない、というのも、私の先生がかつて教えてくださったことだ。私がかつて教わっていた先生は、コロナ禍の今、いかがお過ごしだなのだろうか。

発声の指導も受けながらだと、すごく楽に声が出るし、この先生もかつての私の先生のように、教えて生徒の声が変わることに喜びを感じるタイプのようだ。そういう人は一般的に、指導者に向いていると思う。

休憩後はスプリングコンサートで歌う歌の練習だ。「オレンジの花香り」は年末の練習で一度だけ歌ったが、久しぶりなので忘れている。でもこの曲の譜面は難しくないのでなんとか付いていく。「乾杯の歌」は、はじめ楽譜上で自分が歌う箇所が見つからず閉口したが、いざ歌が始まると今度はちゃんと付いていく。「ハバネラ」もそつなく歌い、「行け、我が想いよ黄金の翼に乗って」もだいぶ慣れてきた。

とにかくこの日は、無理なく自然に声を出すことができたので、実に楽しかったし気持ちよかった。低い音は響きが下がりすぎないように、鼻にかけるように歌う、というのはこの先生独自の指導方法だが、そのように歌ったほうが、現に響きがよくなったようだ。問題は、教わったことを全部は覚えていられないことだ。来週もこの先生ならだいぶ記憶が定着するのだろうが、きっとまた違う先生が指導されるのだろう。でもまあたとえ今日教わったことのほとんどは忘れてしまったとしても、少しは体が覚えていて、ちょっとずつは進化してるんだよね、と前向きに考えることにする。

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