市民オペラに参加するということ 35
5月最終土曜日、この日から立ち稽古が始まるのだという。練習会場もこれまでのところと異なり、スペースが広い会場に変更になり、練習開始時刻も早まる。直前に会場が変更されたので、間違えて変更前の会場に向かった人もいるようだ。
立ち稽古だと、楽譜を持っていられないと聞くので、暗譜が終わっていない私はさすがに焦り、行きの電車では先週練習を録音した音源を聞きながら向かう。電車なので楽譜は開かずに音源だけを聞くが、意外に歌詞を覚えているので安心する。実は案外歌えるのかもしれない、と希望を抱く。
電車が遅れて、会場に到着するのがギリギリになったので、私が着くと程なくして練習が始まる。立ち稽古が初回なので、まずは演出家が今回の演出の概要を説明する。今回の演出は現代演出だ。私がオペラに出演するのは4回目だが、現代演出の舞台に乗るのは初めてだ。
今回は舞台がテレビ局なのだと言う。愛の妙薬の舞台がテレビ局なんて、ちょっと想像がつかない。
ヒロインのアディーナはトップアイドル、アディーナに憧れるネモリーノはテレビ局の使えないADだが、おじさんはテレビ局の創業者でコネ入社という設定のようだ。
そして合唱は2組に分かれ、片方はアイドルグループで歌番組に出演する側、もう片方はテレビ局スタッフという設定だ。
アイドルをやりたい人、と募られるが、誰も手を挙げないので演出側から割り振られる。若いほうの人がアイドルに指定されていたので、この集団で若いほうから2番目の私(と言っても完全に中年なのだが)はアイドル組だった。
アイドルの方が楽しそうだし簡単そうだな、という気がする一方で、テレビ局スタッフの方がやりがいがあるかもしれないと思ったりする。
実際のところ、それぞれに役割が異なり、それぞれに見せ場があるし、そもそも合唱はみんなでやるのだからどちらの役割であってもそれぞれのよさがある、というのが妥当なところのようだ。演出家がそれぞれの役割の演技を付けていく。アイドルは8人居て、基本的に全員同じ感じの演技なので楽だ。でも全員で歌に振り付けをするところがあり、そういうのは楽しそうだ。
この日は練習時間が3時間も確保されていたのに、早目に終わった。しかし暗譜ができていないという私の懸念は問題にならなかった。と言うのもこの日、歌はあまり歌わなかったのだ。演出が付いたのは始めの部分なので、私が歌詞をすでに覚えていたところをちょこっと歌っただけだ。だから暗譜ができていないことがバレなかったのだ。
逆に言うと、今日は歌はあまり練習していないので、自分で練習しないといつまで経っても覚えられないということでもある。油断はできない。今のうちに自習しておくことが、暗譜成功につながるような気がする。
立ち稽古は新鮮で楽しかったが、少ししか歌わなかったのでちょっと物足りない。かと言って家で自習するということにはなかなかならないから困る。