市民オペラに参加するということ 10
月日は容赦なく流れ、合唱祭本番前日の練習日がやってきた。欅の会の練習に参加するのが3度目で、まだ事情がよくわかっていない私は、馬鹿正直に練習開始の3時ちょうどに会場に向かった。今日の会場は3時からしか入場できないと書いてあったので、早く行ってもきっと入れないだろうと思ったのだ(感染症下の練習はなにかと大変だ)。そしたら私が着いたらもう発声練習が始まっていたので、いくらなんでももう少し早く行けばよかったな、と思った。
この日は翌日に迫った合唱祭の並び順を決めるので、合唱祭で着る予定のドレスを持参するように、ということだった。私は衣装を借りる予定だったので、私が頼んだドレスを係の人が持ってきてくれていた。
発声練習が終わると、まず本番の並び順を決めた。背の高さなどで自動的に決めるのかと思ったらそうではなく、各自の持っているドレスの色などによって順番を決めていた。私は青いドレスを頼んだのだが、ソプラノでブルー系のドレスの人は私を含めて2人しかおらず、希少価値だった。赤やピンクのドレスの人が圧倒的に多いのだ。もしドレスを今後購入することにするなら、何色にするかはよく考えないといけないな、と思った。
並び順が決まって稽古が始まると、さすがにこの日は翌日に迫った合唱祭で歌う曲の練習だった。私は前回の練習からこの日までに、一度だけ楽譜を開いた。だから今度こそは日本語の「乾杯の歌」くらいは歌えるかと思ったが甘かった。やはり歌詞が音にはまらない。私は青くなって休憩時間にも必死に楽譜をさらった。
オペラ椿姫の「乾杯の歌」は、ヴィオレッタとアルフレードによるソロパートがある。明日ソロを歌うプロの歌手が今日の練習には参加していたので、練習は華やかなものとなった。やはりプロの歌い手の歌は聞きごたえがある。一緒に練習していて楽しいし、やりがいも感じる。
でも私は練習量が足りていないので、ソロパートも含めて楽譜に齧り付いていたら、そういうのはみっともないからやめるように、と先生に注意される。自分が歌っていない時は、楽譜から顔を上げて客席を見るように、とのことだった。椿姫は別の団体で歌ったことがある。私は覚悟を決めて楽譜から顔を上げることにした。
ナブッコの「行け、我が想いよ黄金の翼に乗って」の練習も一通りしたら、夏の公演でやる「愛の妙薬」の音取りが始まった。えー、合唱祭の歌はもう終わり? もっと練習しようよ、というのが私の本音だったが、ろくに歌えないのは私くらいのもので、全体としてはもう十分なレベルに達しているという判断なのだろう。仕方ないので今晩こそは自習して、明日の本番に備えるしかない。この日は会場を5時に明け渡さなくてはならなかったらしく、4時50分ごろに練習が終わった。むしろ練習時間がいつもより短いではないか。まずい。不安を残しつつ、私は合唱祭当日を迎えることになった。