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【いちご通信♯12】 魂のブループリント
多分私は忘れっぽい。それは今に始まったことではなくて若い頃からなのだ。すっかり忘れてしまうのである。昔はこんなこともあった。兄の結納の日に義姉の実家に行った時のことだ。いよいよ儀式が始まるというのに私の姿がどこにも見当たらなくて両家がザワザワしたことがあった。暫くすると「すみませーん・・」とトイレから聞こえる小さな声で私は発見された。そのトイレは古風な造りで鍵をかけてしまうと、内側から開錠する場所が隠れてしまう特殊な扉だった。うら若き乙女の私はトイレから出られなくなったことが恥ずかしくて、暫く籠って何とか鍵をあけようと苦戦していた。しかし、私を探す両家の方々の声が聞えてきたので、勇気を出して扉の開け方を教えてもらいようやく外に出られた。そして結納は無事終えたのであった。人様をお騒がせした本人なのにその後「トイレ立て籠もり事件」は私の記憶からすっぽりと抜けてしまった。数年後に義姉と会話して「えー、覚えていないの!」と驚かれたことがあった。それでようやく思い出したのである。
忘れると大変なこともあるが忘れることで生きやすくなることもある。そして大事なことは忘れてもちゃんと思い出すのだ。歳を重ねた今はそんな風に思っている。
胎内記憶や母の胎内に入るまでの記憶を持ち話をする子ども達がいるという。成長するにつれ忘れてしまう子が多いらしいが、人はみな願いや想いを胸に抱いて生まれてくるのではないだろうか。魂には生まれた後の青写真が刻まれている・・と私は感じている。しかし、忘れてしまうのだ。だけど魂は覚えているから、人は夢を描き、どう生きるのか、なんのために生きるのか探すのではないだろうか。魂の青写真はひとりひとり違って様々だ。その人の心だけが知っている。そして他の人と比べることもできない。どんなに傷ついても、誰に何を言われても、自分の中から決して消えたりしないものが私にはあった。そうして残ったものと今の自分を繋ぎ合わせて、最近ようやくうっすらと青写真が見えてきたのだった。
昨日あたりから脳内に「夢 with you」と言う曲が流れて口ずさんだりしている。昔見たドラマの中で主演の三上博史さんが歌っていた。当時とても魅かれた曲だった。久保田利伸さんの曲なので今はYouTubeで両方とも聴くことができる。どちらのバージョンも好きだ。ドラマの中で三上さんがよく言う台詞があった。すっかり忘れていたのだが思い出してしまった。
「小さくまとまんなよ」
何だか今の自分に言われている気がしたのだった。
そう、誰の魂も小さくなんてないはずだから。