Salesforceの営業ノウハウの秘訣「ルドニツキーPlaybook」を共有(シェア)しよう
営業に強い企業を分析するシリーズ、をnoteで書いております。リクルート、キーエンス、サイバーエージェントに続き、本日はSalesforceです。
企業の強さを最も影響を与えた人物から営業力を分析する本シリーズですが、リクルート、キーエンス、サイバーエージェントは明らかに創業者に影響を受けた営業組織ですが・・・実はSalesforceは違います!
Salesforceは、日本ではあまり知られていない人物ですが、『デビッド・ルドニツキー』さんの影響をめちゃくちゃ受けている会社です。※これはSalesforceジャパンで働いてる人も知らなかったです。
今日の記事は、このデビッド・ルドニツキーさんの営業の秘訣が詰まった「ルドニツキーPlaybook」と呼ばれる”Salesforceの11の営業ルール”を公開し、Salesforceのような強い営業組織を作るヒントとできれば幸いです。(もちろん、カスタマーサクセスでも役に立つ内容です!)
Salesforceの営業組織に大きく貢献したデビッド・ルドニツキー
デビッド・ルドニツキーさんとは、2002年にマーク・ベニオフさんが採用した営業幹部です。まだSalesforceの売上がそれほど立っておらず、エンタープライズ営業を強化するために採用された人物です。このルドニツキーさんが採用されてSalesforceは一気に伸びたと言われています。(経歴としては、ネットスケープのエンタープライズ営業を初めにしていた人です。)
マーク・ベニオフさんは、すでに他の人に営業幹部候補のオファーを出してたのに、ルドニツキーさんの営業の考えに感銘し、その人に内緒でオファーをしたと言われてます。その後の彼の活躍で、THE MODELの更に原型となるSalesforceの営業スタイルを確立させていきました。
世界中の人が読んだ「Salesforceの営業の基盤」
ルドニツキーさんは当時のSalesforceマーケティング責任者ツェン・トゥオさん(現zuora CEO)と同タイミングで入社しており、Salesforce初の大企業クライアントSunGardを1週間で契約させました。
そして、ルドニツキーさんの営業プレイブックはエンタープライズ営業全員に配布、「Salesforceの営業11のルール」としてSalesforceの営業の基盤になったのです。これはルドニツキーPlaybookとして後にビジネスインサイダーで2015年に公開され、この記事は100万pv以上を記録し、世界中に拡散されました。
現在のSalesforceの営業にも、このルドニツキーPlaybookのDNAが強く根付いています。この、ルドニツキーPlaybookを内容を日本語で公開します!
Salesforceの11の営業ルール「ルドニツキーPlaybook」
1.「大きな会社のように振る舞い、大きな取引機会を考える」Think BIG, Have Attitude
ルドニツキーさんの最初の教えは、「大きな会社のように振る舞え。取引も大きく考えろ」です。新興企業であったSalesforceが大手企業と取引をする際に、それに値する自信があるように見せることを説きました。
また、大きなビジョンを掲げることで優秀な営業人材の採用も可能になります。
2.「取引はチームで進めろ」 No deal is won or lost alone.
ルドニツキーさんは、セールスサイクルになるべく多くのチームメンバーを関わらせるよう指導しました。いまのTHE MODELの原型となる分業スタイルの提唱です。取引を1人で進めるのではなく、分業しながらチームで進めることで取引の負担を小さくしたのです。
3.「見込み客の情報や繋がりをたどって、点を繋いで電話をする」Connect the dots. Never cold call — always call with a plan.
これは、インサイドセールスの原型となるアイデアです。顧客に新規のコールドコールをする際に、いたずらに電話をするなとルドニツキーさんは言いました。見込み顧客の情報や、繋がりをだどって、計画的に電話するのです。今もルドニツキーさんはもちろんご存命ですので、下記のようにアドバイスしています。
Facebookを検索する
企業のウェブサイトを見る
役員やアドバイザーをチェックする
アニュアルレポートを読む
有価証券報告書を読む
顧客の声から、その会社の優良顧客を特定する
最大の仕入先を見つける
4.「なぜ取引しないのか?に焦点を当てる」Focus on ‘why not’ — why might this deal not close.
なぜ取引がうまくいくか?ではなく、なぜ取引がうまくいかないか?に焦点を当てて戦略を立てよ、というアドバイスです。下記のような観点で営業の取り組みを細かく振り返り、なぜ出来なかったのかから戦略を考えることが競合に勝つ鍵なんだとルドニツキーさんは説きます。
毎回の商談の失注理由を必ず分析する
セールスサイクルごとの歩留まりをみる
セールスサイクルの時間を計測する
販売サイクルが長い顧客がなぜ長いか考える
5.「取引は早めにクローズさせ、後で拡大させる。」Always take the deal off the table.
商談では追加のプランやオプションを増やせるだけ増やしたいという誘惑に負けることがありますが、もしクロージングが出来そうであれば早めにクローズさせるべきです。仮に少額でも予算が通るならクローズさせる。
そして利用すると決まったあとに、さらに要求する自信を持てとルドニツキーさんは指導しました。つまり、これは実はカスタマーサクセスモデルの原型でもあるのです。
ルドニツキーさんは、取引がクロージングしたその後に、「What about ... ? 」「◯◯はいかがでしょうか?」と質問を繰り返すようです。営業のレポート環境はどうでしょうか?営業メンバーの育成はどうですか?
顧客のニーズを換気する質問で、契約後にさらに取引を拡大させるのです。
6.「大手企業の顧客とは直接会う」:Get your face in the place.
当時のSalesforceの文化はアロハシャツを着て非対面でセールスをするようなスタイルでしたが、対面で信用を築くことが重要だとルドニツキーさんは説きました。そのうえで顧客を知り、顧客の約立つ情報を提供して関係を築きながら、あらゆる利害関係者とコンタクトを取るのです。
BtoBビジネスにおいては、意思決定に影響を与える人物は複数人いるため、目の前の1人の顧客だけではなく、立体的に複数の関係者を理解する動きが重要です。
7.「興味深い事実が信頼を築く」Fun facts build instant credibility.
2のルールにある「取引はチームで進めろ」の延長で、営業の生産性を高めるために、より顧客が興味を示す下記のような情報を集めて渡せ、とルドニツキーさんは唱えます。
→『競合となる企業、なぜ競合に勝ったのか、解決したビジネス課題、ソリューションを導入した後の結果と測定基準』
ルドニツキーさんは頻繁に「情報は力だ」というコメントをします。カスタマーサクセス部門と営業が連携することで、表面的な提案ではない、「具体的で興味深い、取り組みの事実」を伝えるのです。
8.「ドキュメント業務に積極的に備える」Be proactive on all paperwork.
提案書、見積書、契約書、注文書…といった書類対応はつまらない業務のため、営業活動で意識しないと優先度が抜け落ちてしまいます。
しかし、ルドニツキーさんはこの書類対応は「販売サイクルの短縮」のため非常に重要だと唱えます。書類対応の準備の遅れが蓄積していけば、取引停滞に繋がります。不用意に遅らせず、素早く対応できるよう準備しておくべきです。
9.「交渉をするなら必ず見返りを求める」Always get quid pro quo in negotiations.
簡単なお願いは出来る限りすぐ対応し、見返りは最後までとっておく。そして見返りは「事例のマスメディア掲載許可」だとルドニツキーさんは提唱しました。これはマーク・ベニオフさんの書籍『クラウド誕生』にも記載されていた内容です。
10.「ベストプラクティスを共有する」Share best practices: emails, proposals, etc.
プレゼンテーションの内容や、メールの打ち方、案件のベストプラクティスなど、優秀な営業担当の仕事は積極的に共有するべきだ、とルドニツキーさんは教えました。このルールはSalesforceに強烈に根付いており、他社が引いてしまうほどのナレッジベースが社内に蓄積されています。
11.「会社を次のレベルに引き上げる取引を探す」:Go after game changers
超大手企業との大規模な取引、初めての業界/業種での取引は「ゲームを変える」とルドニツキーさんは言いました。
会社の売上や可能性を大きく高める(ゲームチェンジャーとなる)ため、長い時間を有してでも計画的に獲得しにいくべきだと唱えます。
ルドニツキーのルールは、THE MODEL含むモダンな営業スタイルの原型
2のチームで進める営業の分業スタイルから、日本で言うところの「THE MODEL」が生まれ、3の相手との繋がりや情報を探して連絡する電話アプローチから「インサイドセールス」が生まれました。5は「カスタマーサクセス」の原型です。またルドニツキーさんは「営業における情報(データ)活用」を強固にしました。10からSalesforceの驚くべき「ベストプラクティス共有文化」が根付いています。
これに、マーク・ベニオフの、ラリー・エリソンから学んだ自信満々に見せる振る舞い、陽気な性格が混ざってるのがSalesforceの営業スタイルです。
YouTubeのこちらの動画でもSalesforceの営業の強みについて語られています。
動画の中で話に出た「データドリブン、カスタマーサクセス、ナレッジマネジメント」はルドニツキーさんがすべての元祖として、今のSalesforceにも強く影響を与えていることがわかります。
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