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カスタマーサクセス上級者におすすめする本まとめ(対象:SaaS経営者、CRO、カスタマーサクセス責任者)

先日、新卒向けのカスタマーサクセスおすすめ本に関する記事を書きました。

書き終わったあとに、ふと、カスタマーサクセスの上級者であればどんな本をおすすめするべきかな、と考えて、急遽、カスタマーサクセスおすすめ本の上級者編の記事を書くことにしました。
初心者編の記事を見た方は「いつかこういう本も理解できるようになろう…!」と今後の進路のご参考にしてください。
また既に上級者だ!という方は、こんな本もおすすめだよとコメント欄におすすめ頂けるとありがたいです。では紹介に参ります。

カスタマーサクセス上級者おすすめ本①:成功しなきゃ、おかしい 「予測できる売上」をつくる技術

1冊目はTHE MODELでいこうと思ったのですが、いや、THE MODELを読んでいないカスタマーサクセス上級者はいないだろうと、あえての一冊目が「成功しなきゃ、おかしい」です。
こちらは、SalesforceがARR5億円から100億円に至るまで(年でいえば2002年から2006年まで)顧客開発部門におけるディレクターだったロス・アーロン氏の書籍です。共著者のJason Lemkinは海外で有名なSaaSイベント「SaaStr」の立ち上げメンバーであり、電子契約SaaSをAdobe社に売却した経験を持つ方です。

そう。Salesforce、Adobe、SaaStrといったSaaSの経営者であれば誰でもベンチマークしているスーパースター出身者による貴重なSaaSビジネスノウハウ本であり、カスタマーサクセス上級者であれば必読書の一冊です。

しかし、日本ではこの本が人気がありません。
その理由はずばり、552ページの分厚さ。
また営業、マーケティング、カスタマーサクセスすべてに触れているため、「一体誰を対象にした目線の本なんだ??」(CRO、経営者しか読み切れるイメージがない)となり、買っても読み通せない人が多いはずです。
前提とする知識レベルがCRO水準(営業、マーケティング、カスタマーサクセスは実務レベルで理解している)なので、読み解けないのです。

例えばカスタマーサクセスの章でいえば、目標とするべき月次チャーンレート、Gainsightを活用した解約予測、カスタマーサクセスの人数設計などなかなかコアな実務ネタにも触れており、上級者の方であれば唸りたくなる読書体験が出来るでしょう。

カスタマーサクセス上級者おすすめ本②:アクセル デジタル時代の営業 最強の教科書

2冊目はTHE MODELかな、と思いましたが、あえての「アクセル」を紹介します。こちらの書籍もおすすめ①と同様、すごい著書と内容なのに対し、あまり売れなかった本です。
著者のマーク・ロベルジュ氏はhubspotで最初のセールス責任者として、MITで鍛えたデータ分析力を活かし、売上を0から1億ドルまで成長させた人物です。
現在はハーバード・ビジネススクールにてEntrepreneurial Management(起業経営)の講座を受け持っています。

hubspotには2007年から2014年まで在籍し、Chief Revenue Officerとしてご活躍されていました。
マーク・ロベルジュ氏の凄さは、営業経験がない状態で0から営業組織作りに向き合い、データドリブンで高い生産性のセールス組織を築き上げたことです。
例えば、セールスの採用においては、活躍している人材のパーソナリティや能力をデータで可視化し、これに合う人材を見抜くための質問設計や面接の見極めを行い、入社後の活躍状況を見ながら採用要件を調整する、ということをやってのけています。これを行った2010年頃は、日本にはHRtechという言葉すらなかった時代でしょう。

また、バイヤージャーニーマップを作成し、フェーズの転換の計測はもちろんのこと、フェーズ転換するうえでの営業プロセスと研修講座設計を合理的に行いました。各スタッフのバイヤージャーニー別のファネル指標を計測し、研修講座が有効だったかを業績ベースで効果検証していたのです。
これは今で言うところの「セールスイネーブルメント」の先駆けです。

そしてこの書籍に載っていませんが、実はhubspotは世界で最も早くヘルススコアの実装を試みた企業だと言われています。またヘルススコアの統計的運用から、その限界にも早くに気づいていた。データドリブンな組織作りでいえば日本より5~10年は先をいっている企業なのです。
この書籍はセールス中心でカスタマーサクセスに関する記載はありませんが、フレームワークやデータによる業務改善は活用できますため、先駆的なデータドリブン企業がどのような組織を作っていたかの参考となるでしょう。CROはもちろんCSOps職も必読の一冊です。

カスタマーサクセス上級者おすすめ本③:Hacking Growth グロースハック完全読本

この本は、グロースハックの生みの親であるショーン・エリス氏が書き上げた渾身の一冊です。かの有名なDropboxのグロースハックを成し遂げたのがまさにショーンです。
また共著者のモーガン・ブラウンは500 Startupsのグロースハック領域のメンターであり、この書籍の執筆後はFacebookのグロースハッカー、現在はShopifyのグロースハック責任者です。
この本もグロースハック界のスーパースター2人が出した伝説的な一冊なのです。
書籍の構成は、グロースハックの基本やPMF達成についてのノウハウを語ったうえで、「顧客獲得→オンボーディング→顧客維持→マネタイズ」という一連の顧客プロセスに沿ったグロースハック手法について解説しています。

これがシリコンバレー流の仕事なんだな、と思わされるのが、コアバリューの開発、グロース方程式と北極星の設計、ファネル全体の改善、グロースミーティング、チャネル・メッセージ改善、初期顧客体験(NUX)の作り込み、コホート分析など、データドリブンで合理的な仕事の進め方。
恐ろしいのは、海外のSaaSベンダーはおそらくVCや周囲の経営者からこのような仕事術が注入されているということです。海外SaaSの競合する製品を持つ日本SaaSであれば、この働き方をキャッチアップしなければなりません。

カスタマーサクセスにおいての体験改善においても、この書籍に書かれているようなデータドリブンかつ実験的な進め方を見習えばスピーディーに改善していけるでしょうし、していくべきでしょう。
また、本書ではカスタマーサクセスからプロダクトマネージャーに業務を拡張していく際の開発優先度付けやミーティング方法についても学ぶことが出来ます。プロダクトマネジメント入門的な書籍だとも言えます。

カスタマーサクセス上級者おすすめ本④:アッシュ・マウリャ2部作・Running Lean &図解リーン・スタートアップ成長戦略

著者のアッシュ・マウリャ氏は連続起業家で、どうやら彼もハーバードやMITで講義を持ったこともあるようです。
リーン・スタートアップの書籍は複数出ていますが、最もわかりやすく、最も実践的なのが彼の書籍でしょう。

Running Leanではリーンキャンバスに基づいてビジネスのあらゆる側面を仮説検証する取り組みが紹介されています。カスタマーサクセスにおいても、極めて行けば人によるサービスのみがカスタマーサクセスなのではなく、製品・販売チャネル・マーケティングメッセージ・カスタマーサポートなど複数の要因が「カスタマーサクセス」に繋がっていくことが分かってきます。
その意味で、カスタマーサクセスはいわば「経営」であり、Running Leanのような書籍で事業全体のピースの整合性を合わせていくような思考がカスタマーサクセスでも求められます。

図解リーン・スタートアップ成長戦略では、ザ・ゴールの制約理論を応用し、LTVの改善やボトルネックの解消に関するSaaSスタートアップ経営の仕事のコアとなる論理が解説されています。
TOC、アジャイル、デザイン思考、デザインスプリント、継続的インテグレーションといった考え方を実務に応用し、LTVやユニットエコノミクスをどう改善していくかのモデルが記されています。
SaaS経営においてはプロダクト開発だけではなく営業マーケティングやカスタマーサクセスなど業務全般においても、アジャイル的なスプリントを回して実験と学習による継続的な取り組みが有効で、実務の落とし込みもイメージできる一冊です。

おわりに

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