【書評風】漁業の未来を知る一冊

最近、居酒屋に言っても美味い魚が少ないなぁ。サンマもホッケも小さくなって、その割にはお値段の方は・・・そんなモヤモヤを抱えている我々庶民の疑問に答えてくれる1冊を紹介したい。
 
 政府系の某機関に勤める知人とは、居酒屋での密会がお決まり。
先日も「日本酒に合うおつまみもあるし、財布にも優しい」などと誘われ、下町に繰り出した。
食い意地が張っているためか、駅を降りても約束の時間まではまだ小1時間ほどある。
普段なら「0次会」を始めてしまうところだが、この時はフラッと駅前の書店に立ち寄った。

 雑誌コーナーで、立ち読みでもと思い、経済紙を何冊か斜め読みすると、週刊東京経済の表紙が元漁師の探偵の目に止まった-----

『いつまで魚がくえるのか』

そんな刺激的なコピーに加え、東洋経済らしからぬ(?)サンマやカニのイラストが目を引いた。
6月1日号の特集は、日本の魚ビジネス。
今夜の話のつまみにでもと思い、購入したところ、驚きの統計がずらっと並ぶ。

 例えば、ズワイガニの㌔単価は2009年の2042円から、2022年には6179円に上昇。サンマの㌔単価は、同じ期間に74円から552円と何と8倍近くに跳ね上がっているのだ。これでは最早、「庶民の味方とは言えぬ訳だ」と舌鼓ならぬ膝を打つ探偵。
日本の漁業生産量はこの40年近くずっと右肩下がり、ピークだった1984年の1282万㌧から、22年は391万㌧にまで激減しているのだという。
 ざっくり言えば、その原因は遠洋・沖合漁業が主流だった日本が、各国が排他的経済水域を設けたために、他国の沿岸で好き放題に漁を出来なくなったこと。さらに、中国などの魚食需要の高まりで、輸入の価格競争でも負けているそうだ。
それで、表紙の「いつまで魚を食えるのか」につながるのだが、そこは東洋経済。
大手回転寿司チェーンの収益構造から水産加工会社の養殖産業に、アカエイなど本来は市場に流通しなかった「未利用魚」の商品開発など、斜陽一辺倒ではない日本の魚ビジネスの今をきっちり現地リポートしている。

 政府主導で徹底的な資源管理を実施するノルウェーのような漁業先進国の例を見れば、日本の漁業にはまだまだビジネスチャンスがあるのでは無いか。

待ち合わせまでに一気読みした特集は、そんな希望が持てる好企画だった。なんだか、いつもの刺身や干物が、より美味しく感じた夜だった。

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