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バスの中


子供:お母さ~ん!お母さ~ん、後ろの席空いてるかな?空いてるかな?座席見ていい?

お母さん:待って、ヒロシ、まだ券取ってないから!焦るコジキは?

子供:もらいが少ない!
あ…あれ…ぼくの特等席…

お母さん:な~に、あ…あら、いやだ


後ろの席に座るおじいさん:ぐふ…

お母さん:ざ、ざ~んねん!このおじいさんがヒロシちゃんのために席ゆずってくれたら天国なんだけどね…

おじいさん:げふ


子供:ねぇ、ねぇおじいさん?起きて~!ぼくの特等席~!

おじいさん:ぐふ…お、坊主どうしたぁ

子供:席ゆずってぇ~

お母さん:すみません、わがまま言ってしまって…

おじいさん:坊主、席ゆずってなにやるんだい?

子供:後ろの車を眺めるんだ~

おじいさん:そっかそっか、じゃあ教えてやるよ、あのな?鼻づまりの時な?坊主もハンカチで鼻かむよな、それで、鼻かんだハンカチをおじいさんなら、上着のジャケットのポケットにいれる。坊主なら幼稚園の支給されたカバンにいれるかな?

子供:多分、いれるよ、おじいさん、それがどうしたの?


おじいさん:で、さっきみたいに、ふいに眠くなってうたたねするんだよ、それで、またふいに起きるんだ、あたりを見回したら、飴でも舐めたくなってな、上着のポケットを手で探るんだよ、坊主もなんかカバンから探すのを想像してごらん


子供:うん、想像するよ

おじいさん:それでポケットの中をまさぐってる間にあるものが触れるんだよ

子供:あるもの?

おじいさん:そのあるものが手にヒンヤリとするんだよ、それはさっきのハンカチの、ナ・カ・ミ

子供:わ…

おじいさん:そう!坊主はいま想像したな?おじいさんはさっき坊主に理不尽な理由で起こされたとき、そんな感覚だったよ

子供:わ~ん!

おじいさん:泣くならやるんじゃないよ、おじいさんな、夏の暑い日にな、近所のうじが湧いてる池に行ったのな…

お母さん:ちょっと、すみませんけどヒロシちゃん泣いてるじゃないですか?大人として見識を疑います

おじいさん:まぁ、聞きなさい、そのうじ虫が湧いてる池にな、ペットに餌やる感覚あるだろ、そうさな、公園に鳩に穀物まく人よくみるだろ、そういう感覚で、おじいさんが熟成させた抜群の発酵ウンコを投げ入れた時、

お母さん:ゴクリ…


おじいさん:そんときに、一斉に小動物の死骸に群がってた、うじ虫が、その餌めがけてうごめくんだよ、そんとき確かに、聞いたんだよ、坊主と同じ「わ~ん」ってうじ虫たちの大合唱を

お母さん:な、なんですかグロい…うげ


子供:わ~ん!

おじいさん:あいつら鳴き声なんかないのに、だ。おじいさんな、長いこと生きてきたけど、その大合唱はどんな大合唱より、心にズシンときたぞ、ズシンと来たと言えば、おじいさんな、家でラザニア食べてたんだよ、それで、夜であんまり電気もテレビの灯りだけだったんだけどな、なんか、なんかラザニアが食べても食べても減らねぇんだな?あれ…おっかしいなぁ?なんつって
で、さっきとラザニアの皿の位置が変わってんだよ、ラザニアの皿ってズシンと重いのにな?変だな?おかしいな?ってな

子供:わ~ん!

おじいさん:坊主、わ~ん!の例え話は終わったよ、それで、なんだ、なんだって電灯つけたんだよ…

お母さん:ゴクリ…


おじいさん:知ってっか?火山がある山でかたや森の動物が集まる汚いわき水、かたや動物のいないキレイな透明なわき水、どっちをあんたらなら飲むかい?

お母さん:へ?それなら、キレイな水でしょ、動物の唾液も混じってないし、

おじいさん:ブブー!不正解!正解は動物の集まる汚いわき水が飲めるわき水、キレイな透明なわき水は毒が入ってるんだよ

お母さん:は?なんなのよ、ラザニアの話はどうしたのよ?

おじいさん:慌てなさんな、ラザニアもそれと同じ、我が家の動物、主に昆虫たちにとって「食べれる安全なシロモノ」だったってことよ

お母さん:ウゲ…なんなん

子供:わ~ん!

おじいさん:坊主、違うターンだからな?ターンで思い出したんだが…


お母さん:ひ~!もう結構です!


おじいさん:ひ~!もう結構です!でとっておきのグロい話があってな…


――「たとえがエグイ」完――


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