大学受験のために公立高校から行くか、私立中高一貫校から行くか
東京大学の学生は出身校を中学レベルで話題にするそうです。その一方で、地方の公立高校から東大に進学したケースも話題になります。大学受験において、私立の中高一貫校の方が良いのか、公立高校から受験した方が良いのか、興味の尽きないところです。
私立中学の受験率は17%前後と言われています。都市部ではこの率は上がるでしょう。東京都の、文京区あたりでは4割を超えるところもあるそうです(東京都教育教育委員会「令和2年度公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(令和元年度)の進路状況調査編】)。
私立中高一貫校にも理念とポリシーがあり、大学受験のためだけにあるのではないと口を揃えて言います。しかし、実情はどうなのでしょうか。
分かりやすい例が数学です。数学は数式と幾何の二科目に分けて教育することが多く、全く別のカリキュラムで行われています。教材も私立学校専用の業者が納入し、一般に市販されていないもののようです。数式の場合、中学1年で負の計算・文字式・方程式の基本が5月下旬の中間テストの範囲となるようです。
その方程式の文章題、比例、反比例の関数あたりまでの基本が一年生一学期の期末テスト(7月上旬)の対象となります。方程式の計算の後すぐに連立方程式にいきます。公立中学で連立方程式は中学ニ年の範囲です。一年生で学習することはまずありません。
二学期になると連立方程式をやると今度は連立の不等式をやります。公立中学で不等式はやりません。高校に入ってからです。しかし高校の数学Ⅰや数学Aで二次関数の学習をやる時に、不等式は必須です。ですから、連立方程式と連立不等式をほぼ同時にやるのは理解を進める上で一定の合理性があります。
そして一年生の三学期では一次関数を学習し、中学二年の4月から無理数・ルートの計算に入ります。公立中学では中学三年の内容です。中三で高校の数Ⅰ数Aをやり、高校一年で数Ⅱ数Bをやります。高校二年で文理分けがあり、文系の場合、これで数学の学習は終了し、理系は高校2年で数Ⅲをやります。理系の進学を希望する生徒にとってはこのカリキュラムは極めて合理的です。しかし、文系タイプの生徒はどうでしょうか。
私の経験では中学一年の一次方程式の文章題あたりでついていけない生徒が出始めます。食塩水の濃度計算、売買損益算、速さの問題は、小学生が算数で一番苦しむ分野です。方程式で文字式化したからといって、急にできるようになる訳ではありません。むしろ、文字式といった抽象化した記号計算は文系の生徒の最も苦手とするところです。
私立中高一貫校の文理分けの比率は良くて一対一です。学校によっては、七割が理系といった学校もあります。私立中高一貫教育は理系の子には有利と言えますが、理系科目が苦手な文系生徒の場合は、よく考えてからでも良いかもしれません。